2020年に誕生した、株式会社ヤギが手がける抗ウイルス・テキスタイルブランド「VIBTEX(ビブテックス)」。ヤギと高橋練染株式会社が共同で開発した抗ウイルス加工を施した生地素材を使用し、ジャケットやユニフォーム・ボトムス・帽子など、幅広いラインアップを展開している。
そして2023年3月には、VIBTEXのテクノロジーを詰め込んだ糸で作った靴下「VIBSOX(ビブソックス)」の展開をスタート。VIBSOXには、汗臭・加齢臭を約30分で99%消臭する効果があるとしている。また、メイドイン奈良にこだわり、長さを自由に変えて自分好みの着用を可能にするなど、デザインにも特徴がある。
VIBSOXの開発には、どのような経緯があり、他社にないどんな強みがあるのだろうか。
今回、VIBSOXの生地を開発したヤギの卜部司さん、ブランディングを担当した株式会社博報堂ケトルの皆川壮一郎さん、デザインと開発を手がけた株式会社ならやの前田竜彦さんにお話を伺った。
もともとVIBTEXは、テキスタイルの抗ウイルス・抗菌のスペックの高さを売りにして、『ウイルスと戦う、すべての世界市民を守る服』をコンセプトに2020年にスタートしました。現在、60〜70くらいのブランドに使っていただいています。
2020年以前から、VIBTEXの抗ウイルス・抗菌のテキスタイルに関する技術それ自体はあったのですが、製品化には至っていませんでした。その中で、新型コロナウイルス感染症が急に拡大していった際に用途が広がるだろうと考え、VIBTEXとして立ち上げました。
しかし、現在は人々のコロナに対する意識も変化して『Withコロナ』という『過剰にウイルスに怯える必要はないけれど、気を付けていこう』という流れですよね。当初の抗ウイルス・テキスタイルというブランディングを時代の空気感と合わせたいと思いました。
そのなかで、宅飲みなども増えていたことから『一番気になる臭いは足の臭いであり靴下ではないか』という話になりました。抗ウイルスブランドが靴下を製作し、防臭や消臭ブランドにシフトしていくとストーリー的にも繋がりがありますし、世の中にフィットすると考えました。
そこで、靴下のプロである前田さんに、プロジェクトに加入してもらうことになりました。
私は奈良県出身で、靴下にずっと関わっていた中で、VIBSOXの立ち上げに携わらせていただきました。奈良県は靴下産業の盛んな地域で、日本の商品のおよそ6~7割が奈良で作られています。奈良県の伝統を生かしながらブランドを作れるということで、参加しました。
VIBSOXの糸は、VIBTEXのテクノロジーを詰め込んでソックスのために一から作っています。
VIBTEXを糸として練り込む技術的な問題をクリアするのに、時間がかかりましたね。何回洗っても抗ウイルス・抗菌の機能が落ちないように、糸を染めて色を固着させる温度を調整しました。綿100%でここまで性能を出すのは難しいのですが、それを可能にしたのがVIBSOXの大きな特徴ですね。
そのうえで、糸の手触りと靴下のデザインがどうマッチしていくかは前田さんに考えていただきました。
どんな靴下が好きかは、十人十色です。そこで、たるませて履く、長く伸ばして履くという『2WAY』で楽しんでいただけるようにしました。
履く方によってアレンジしやすいように、通常よりわざと3cmほど短くして、リブの部分をかなり緩めに作ってあります。
VIBSOXはアイテムとして清潔であることにフィーチャーしているのですが、僕はあえて清潔は付属的なものと位置付けました。靴下の『かっこいい』部分にプラス『清潔』が乗っていたらより良い、という思いで作らせて頂いています。
卜部さんチームに機能面、皆川さんチームにブランディング、本日ご不在ですが、alpha PRさんにPRをお任せする。それぞれの役割であくまでもかっこいい靴下、多くの方が履きたい靴下を作ろうという思いが合体してできたブランドになります。
また、靴下の製造工程はすべて奈良の一部の地域で行っています。奈良県で製造することで普通は見落としがちな細かい部分まで目が行き届くとともに、長年の伝統的な技術も生かされています。
VIBSOXは消臭効果が非常に強いというデータが取れています。
消臭機能がある商品は一般的に2時間で99%の臭いがなくなります。VIBSOXはVIBTEXのテクノロジーを生かした糸を用いていますので約30分で99%臭いがなくなります。
そして消臭機能を実現しながら、手触りやデザインを犠牲にしていない部分がVIBSOXの強みだと思います。
前田さんがいることで、どんなパターンの靴下も形にできますし、やはり他ブランドとのコラボレーションの可能性がすごく高いと思います。実際に企画が進んでいるものもありますし、いろいろ挑戦していけると良いですね。
コラボ商品の構想にはVIBSOXを基に作っているものもあれば、VIBSOX用の糸を使ってゼロからアレンジするパターンもあります。ブランドによって靴下で出したい厚みや長さ、仕様も含めて好みがたくさんあるので、大きな枠組みの中でコラボしていけたら良いと思っています。
もともとVIBSOXのようなブランドはプラットフォームのような側面があると思います。靴下は、メンズだけではなくレディースもありますし、スニーカーやブーツなどアイテムも多い。受け皿として靴下は幅広い可能性があるなと思っています。
靴下は、一見カテゴリーとして小さいように思えますが、よく考えるとスポーツから日常生活まで靴下を履かないタイミングは少ないんですよね。コートなどアウターより靴下を履いている時間の方が長いので、コラボ含めて、多くの方に受け入れてもらえるアイテムになると思っています。
皆さんがおっしゃるように、VIBSOXを一つのプラットフォームとして、いろいろなブランドなどとコラボしていければ良いですね。そして、コロナが落ち着きつつある中で、清潔感があり、履くと臭いがしないという安心感を提供していきたいと思っています。
株式会社ヤギ
株式会社博報堂ケトル
株式会社ならや 代表取締役
Text by Asami Tanaka