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「GEL-KAYANO(ゲルカヤノ)」シリーズでも 屈指の人気を誇る「GEL-KAYANO 14」は、なぜ今も支持されるのか?
「ゲルカヤノ」は、1993年に発売された「アシックス スポーツスタイル」のランニングシューズライン。オリンピック出場選手のトレーニングシューズに選ばれるなど、多くのランナーから支持されてきた人気シリーズだ。中でも特にファッションシーンで支持されているのが14作目となる「ゲルカヤノ14」だ。
今回はミタスニーカーズを牽引する国井栄之さんに、同モデルの歴史となぜ現代に至るまで支持されているのかを伺ってきた。
現在も最新作が出続けている「ゲルカヤノ」シリーズ
現在、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気の「アシックス スポーツスタイル」。その中でも高い支持を集めているのが「ゲルカヤノ14」だ。まず、「ゲルカヤノ」シリーズがどのようにして生まれたかについて、国井さんはこう答えてくれた。「『ゲルカヤノ』シリーズは北米市場を中心に1993年から展開されている長距離ランニングシリーズで、第1弾だけは『ゲルカヤノ トレーナー』というモデル名で発売され、その後「2」、「3」とナンバリングされるようになりました。
デザイナーは榧野俊一(かやのとしかず)さん。自分も何度かご本人とお話ししたことがありますが、モデル名の『ゲルカヤノ』はアメリカ法人の担当者が開発中のコードネームとして呼び始め、そのままのモデル名で発売に至ったそうです。
このシリーズのインスピレーションの源は“クワガタ”で、アウトソールには稲妻を思わせるようなモチーフが両足揃うとクワガタのハサミのように見えるデザインをあしらっているのが大きな特徴です。ライフスタイルとスポーツの境界線を行き来できるような、カテゴリーをクロスするモデルとして登場したのが『ゲルカヤノ』シリーズでした」

2018年には『ゲルカヤノ』シリーズの25周年を記念し、ミタスニーカーズとのコラボモデルを発売している。そこに関しても国井さんはこう続ける。
「当時は、『ゲルライト』シリーズが市場を席巻していました。2018年に、発売から4半世紀を迎えた『ゲルカヤノ』シリーズの最新作が展開されるということで、『ゲルカヤノ トレーナー』を復刻させました。両シリーズの大きな違いとして挙げられるのは、『ゲルカヤノ』については最新作がいまだに出続けていることです。

復刻を担う立場としては、いまだに進化し続けているパフォーマンスシューズのシリーズにおいて、いきなりライフスタイル向けとしての復刻となるとユーザーを惑わせはしないかと心配していましたが、この復刻を機に、『ゲルカヤノ』シリーズが注目されることになったのです」
つまり、「ゲルカヤノ」シリーズの人気に火が点いたのは、ミタスニーカーズが25周年を機にフィーチャーした復刻モデルがきっかけだったのだ。
“Y2K”のトレンドが「ゲルカヤノ14」の人気を牽引
「ゲルカヤノ」シリーズでも、多くの世代から支持を集めているのが「ゲルカヤノ14」だ。その誕生秘話についても国井さんはこう語る。「『ゲルカヤノ14』は2008年に発売されたシリーズの第14弾ですが、デザインはシリーズを初代から手掛けてきた榧野さんに代わり、山下 秀則(やました ひでのり)さんがはじめて設計しています。歴代の優れた機能やデザイン性を受け継ぎながら、山下さん独自の感性が吹き込まれているのが魅力です。

山下さんは『ゲルカヤノ14』のデザインにあたり、インスピレーションとして“閃光”という言葉をテーマにしました。ランナーが繰り返す、かかとで着地してつま先で蹴り出す一連の動きを“閃光”の連続に見立て、色や線、素材、シルエット、質感などデザイン要素のすべてに投影したそうです」

そんな「ゲルカヤノ14」がストリートで注目を集めることになったのは2020年頃。その人気が出た経緯についても国井さんはこう続けてくれた。
「やはり2020年ぐらいに注目された“Y2K”というキーワードの影響が大きいですね。同時に“ノームコア”やテック系が好きな“ゴープコア”の足元にもハマって、ブルガリア人デザイナーのKiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)がキュレーターとして参画したことで人気に火が点き、『JJJJOUND(ジョウンド)』や『KITH(キス)』とのコラボで、その人気が世界的に広がっていきました。

ただ、やはり一番中心にあったのが世の中の“Y2K”の流れで、『ゲルカヤノ14』がその代表格としてフォーカスされ、グローバルな『アシックス スポーツスタイル』の流れへとつながっているのです」
その当時、ラグジュアリーブランドがこぞって「ゲルカヤノ14」のようなテッキーなシルエットのシューズをサンプリングしてシューズを展開していったのは、周知のとおりだ。
ブランドの定番として定着していく「ゲルカヤノ14」
「ゲルカヤノ14」の人気の秘訣は、コラボモデルだけにとどまらないという国井さん。本モデルの本当の魅力をこう語ってくれた。「2020年代初頭に『ゲルカヤノ14』が復刻で出てきて、単純に履いたとき、一昔前のテクノロジーなのにもかかわらず快適で、タウンユースとしてもバッチリハマったのが大きかったと思います。
現在発売されているパフォーマンス向けのハイエンドなランニングモデルは、重心が前にきて足が回るように設計されているため、垂直に立っているのも辛くて逆に街履きはできません。その点『ゲルカヤノ14』は生活の中にランニングを取り込んでいるモデルなので、走るために履かなかったとしてもその機能性の高さを実感できるモデルなのです。
現に『ゲルカヤノ14』は、2008年にアメリカのランニング専門誌『ランナーズ ワールド』の“インターナショナル エディターズ チョイス賞”を受賞しているので、そういった裏付けも大きいのかもしれないですね」
現在は「ゲルカヤノ14」の人気に牽引されるように「ゲルカヤノ12.1」も発売され、シーンを盛り上げている。そのことに関しても国井さんはこう続ける。

「『KITH』との共同開発により誕生した『ゲルカヤノ12.1』は『ゲルカヤノ12』と『ゲルニンバス17』のハイブリッドモデルなのですが、『ゲルニンバス』シリーズも『GT-2000』も『ゲルカヤノ』の生みの親である榧野さんが携わっているシリーズ。
最近復刻されている“Y2K”のデザインランゲージで語られるモデルは榧野さんが手掛けているので、この2つのモデルがハイブリッドされるのも納得ですよね。
現在、“Y2K”の流れも落ち着いてきて、市場もかなりトゥーマッチな状況にはなっているが、今後「ゲルカヤノ」シリーズがどうなっていくかを伺ってみると国井さんはこう答えてくれた。

「確かに今は難しい状況ですが、『ゲルカヤノ14』や『ゲルカヤノ12.1』が売れていないかといえばそうではありません。『ゲルカヤノ14』に関しては、“Y2K”の括りでフィーチャーされる以前からコアなスニーカーヘッズには認知されていましたし、実はとても息が長いモデルなんです。ゆえに『ゲルカヤノ14』に関してはトレンドというよりも定番になりつつあると思います。
大きくフィーチャーされ始めたのは“Y2K”の流れもありましたが、“ノームコア”や“ゴープコア”の流れにハマったところも大きかったし、スニーカーのジェンダーレス化を推し進めたモデルのひとつでもあります。
『ゲルカヤノ14』はランニングシューズとしては珍しく、スニーカーヘッズからファッションコンシャスに至るまで多様な層に受け入れられたからこそ、これからも『アシックス スポーツスタイル』の顔として定着していくと思います」
国井さん曰く、榧野さんがシューズをデザインするときに必ず入れるのが“情緒”とのこと。現在のモノづくりは緻密な計算のもと数値を追い求めて作られているが、履いた人を高揚させる“情緒”といった、人々の琴線に触れるものがデザインに込められているからこそ、「ゲルカヤノ」シリーズはこれからもブランドの定番として君臨し続けることは間違いない。
PROFILE

国井 栄之(くにい しげゆき)
mita sneakers ディレクター
東京の下町である上野から世界へ向けて独自のスニーカースタイルを提案するmita sneakersでクリエイティブ ディレクターを務める。数多くのブランドとのコラボモデルや別注モデルを手掛けるが、ニューバランス関連でのコラボや別注でもその手腕を発揮。現在は虎ノ門ヒルズにオープンしたショップ「Herringbone Footwear(ヘリンボーン フットウェア)」の外部ディレクターも務める。世界的プロジェクトから国内インラインのディレクションまで多岐にわたり、スニーカープロジェクトに携わるスニーカー業界の最重要人物。

mita sneakers
東京都台東区上野4-7-8 アメ横センタービル1F路面店TEL:03-3832-8346 営業時間(平日)11:00~19:30、(土日・祝日)10:00~19:30 https://www.mita-sneakers.co.jp/
Photo by Hiroyuki“Lily”Suzuki(StudioLog)
Text by Yasuyuki Ushijima(NO-TECH)












