

Articles
DCブランドブームにリスペクトを!「1978 MEN'S MELROSE」──キーワードは“Late 80's–Early 90's”
1980年代、日本で大ブームとなった“DCブランド”。その世代ではなくても、このキーワードを耳にしたことがある人は多いのではないだろうか。DCブランドという呼び名の「D」はデザイナーズ、「C」はキャラクターズを意味する。デザイナーの名前がそのままブランド名になったものを「デザイナーズ」、デザイナー名とは別のブランド名が付けられたものを「キャラクターズ」と呼んでいたと言われている。
このDCブランドブームは、その後の日本のファッション史を振り返っても、非常に大きな出来事だったといえる。日本人デザイナーがパリ・コレクション(ファッションウィーク)で活躍しはじめたのも、まさに1980年代という時代だった。
今回ご紹介する「1978 MEN'S MELROSE(イチキュウナナハチ メンズ メルローズ)」は、そんな時代のテイストを色濃く反映しつつ、現代のデザインと絶妙に調和させている。
1978年に誕生し、DCブランドブームの中心的存在だった「MEN'S MELROSE(メンズ メルローズ)」の歴史をたどりながら、ファーストコレクションとなる2025年秋冬シーズンのアイテムについて、デザイナー・松島真さんにお話を伺った。

“1978”が意味する、ブランドの誕生年と時代の空気
「1973年にレディースブランドの『MELROSE』がスタートしました。その5年後、1978年には『MEN'S MELROSE』が誕生します。今回のブランド名、『1978 MEN'S MELROSE』の数字は、その誕生年を表しています。1970年代は、いわゆるDCブランドブームの走りといえる時代。『マンションメーカー』と呼ばれる小規模なアパレルメーカーが、表参道の同潤会アパート(現在の表参道ヒルズ)やその界隈に次々と誕生しました。
当時は海外のファッションを積極的に取り入れながらも、自分たちのスタイルを模索し、独自の世界観を築いていった時代で、そうした動きが加速し、やがて1980年代のDCブランドブームへとつながっていったのだと思います。日本のファッションの価値観が大きく変わり、そのなかでメルローズのブランドも大きなムーブメントを巻き起こしました」

懐かしさと新しさが共存する「1978 MEN'S MELROSE」が紡ぐ、新トラッドスタイル
ここからは、「1978 MEN'S MELROSE」のリリースにあたって着想を得た、1980年代後半から1990年代初頭のMEN'S MELROSEの歴史を振り返っていこう。「1978 MEN'S MELROSEは、2025年10月に立ち上がりました。コンセプトは『原点回帰』というもので、会社には昔のカタログや資料が保管されていますが、これまでそれを見返す機会はほとんどありませんでした。
一昨年のMELROSE50周年をきっかけに、過去のカタログを見返すと、そこにはクリエイティブで自由な空気があって、とてもワクワクしました。改めてブランドの歴史や世界観を再認識し、リスペクトを込めてデザインアーカイブを見直すなかで、ブランドコンセプトが固まっていきました。
ファーストコレクションでは、1987年のコレクションから着想を得たアイテムが多く見られます。懐かしさを感じさせつつも新鮮で、古着屋さんに並んでいそうな雰囲気を大切にしました。
1980年代は経済的にも好景気で、洋服作りが純粋に楽しい時代だったと思います。その空気感をまとわせつつ、現代の気分や流れも織り交ぜていきたいと考えています。
また、1980年代後半~1990年代にかけてMEN'S MELROSEのスタイルを作り上げたデザイナーたちは、それぞれ個性が異なるものの、過去のカタログを見ると、どの時代も『かっこいい』と思わせる熱量が伝わってきます。
各デザイナーの手法は異なっても、根底には一貫してトラッドスタイルがあり、この要素をベースにしながら、1978 MEN'S MELROSEのデザインを再構築していきたいと考えています」


ファーストコレクションのキーアイテム
DCブランドブームの時代背景とブランドのコンセプトを伺ったところで、ファーストコレクションとなる今シーズンのキーアイテムをピックアップして見ていこう。「まず、ダッフルコートからご紹介します。1980年代のコートのシルエットは、ガバッと大きめに着る雰囲気が可愛らしく、そのスタイルを参考に現代風にアップデートしています。パーツには麻ヒモとウッドトグルを組み合わせ、クラシカルな印象に仕上げました。
当時のコートは重くがっしりしたメルトン素材が好まれていましたが、現代では軽さや着やすさも重視しています。そこで、薄手のメルトンにスポンジをボンディングすることで驚くほど軽く、かつスポンジ層が体温で温められた空気をキープしてくれるため、保温性も高くなっています。
さらに、1980年代のアーカイブではチェック柄のアイテムが多く作られていたことに注目し、チェック柄のダッフルコートもリリースしています。こちらはクラシックな英国調チェックにシャギー起毛を施し、キャッチーで存在感のある仕上がりになっています」



トラッドスタイルの代表的なアイテム「シングルブレストジャケット」
さらに、先ほど話題に上がったトラッドスタイルから、代表的なアイテムも見せていただこう。「次に、ブレザータイプの『シングルブレストジャケット』をご紹介します。金ボタンとパッチポケットという基本仕様に、当時のディテールを散りばめています。
たとえば、コインポケットは通常フラップ付きが一般的ですが、あえてフラップは付けていません。また、ラぺル位置(ゴージの位置)は近年では高めが主流ですが、1980年代~1990年代は低い位置にあることが多く、いわゆる背広っぽい雰囲気になります。こちらのモデルも少し低めにデザインしています。
素材にはスーパー100というウールを使用しており、非常に肌触りがよく快適です。同素材を使った『イージーワイドパンツ』とセットアップでの提案も可能です。品がよく上質な雰囲気があります」



1987年のアイコン的な「ジャガードセーター」
今回のコレクションでは、過去のアーカイブデザインを忠実に再現したアイテムもいくつか存在する。もちろん素材は現代版だが、過去のデザインにリスペクトを込めたアイテムもご紹介いただこう。「1987年にリリースされた『ジャガードセーター』をご紹介します。このアイテムは、当時のカタログ写真しか手掛かりがありませんでしたが、その雰囲気や力強さに惹かれ、写真をもとに柄を起こしました。
編み方はジャガードで、当時のニットはやや重めのウール素材でしたが、今回はブークレヤーンというモコモコとした凹凸感のある毛糸をベースに、ストレッチヤーンを組み合わせることで、ふんわりとした着心地に仕上げています。
DCブランドブームの時代には『ニットといえばMELROSE』と言われていたこともあり、このジャガードセーターは今回のキーアイテムのひとつとしてラインナップしています。一目でその時代感を楽しめるアイテムです」



日本のファッション史に確かに存在したDCブランドブーム。それをただ懐古的に伝えるのではなく、そのテイストを現代にもなじむよう掘り起こし、歴代デザイナーへのリスペクトも感じられる、そんなお話を伺うことができた。
トラディショナルスタイルに立ち返り、普遍的なデザインに現代のスパイスを効かせた「1978 MEN'S MELROSE」というブランドは、唯一無二の存在なのではないだろうか。
はじまったばかりのこのブランドから、今後も目が離せない。
PROFILE

松島 真(まつしま まこと)
株式会社メルローズ
企画
文化服装学院卒業後、株式会社メルローズに入社。MEN'S MELROSEのデザイナーとしてトラッドマインドを根幹に、シンプルで洗練された大人のリアルクローズを追求し続ける。 今シーズンより新ライン1978 MENʼS MELROSEを立ち上げる。
















