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街でも山でも、MERRELL(メレル)の“個性派”サンダル「ハイドロモック」がバズる理由

2025.08.01
アウトドアを想定して開発されながらも、街履きとしても広く使われているシューズは数多い。
アメリカのフットウエアブランド、MERRELL(メレル)が2019年に発売した「HYDRO MOC(ハイドロモック)」は、そんな“アーバンアウトドア”を代表するサンダルのひとつだ。
川でのアクティビティを想定して開発されたサンダルは、街なかでもコンフォート性を発揮し、インパクトのあるデザインが着こなしのスパイスとなる。機能性とデザイン性を両立する水陸両用サンダルはどのように誕生し、何をきっかけに世界的な人気モデルとなったのか。
メレルの日本総代理店である丸紅コンシューマーブランズ株式会社で、マーケティングを手がける田中祐介さんにお話を伺った。

PROFILE

田中 祐介(たなか ゆうすけ)

丸紅コンシューマーブランズ株式会社

メレル事業部・ マーケティングマネージャー

川を歩くアクティビティのために誕生した高機能サンダル

「ハイドロモックの誕生には、アメリカでさかんなハイドロハイクというアクティビティが深く関わっています」
ハイドロハイクとは、Hydro(水)+Hike(ハイキング)の造語であり、川や湿地、ぬかるんだ山道など、水のある地形を歩くアクティビティ全般を指す。
「メレルは数十年にわたって、ハイドロハイクに対応できる水陸両用のフットウエアの開発に取り組んできました。このモデルは、川の中に入って浅瀬を歩いたり、石を飛び越えたりしながら進むリバーハイクを想定して開発されたサンダルです」
一目で記憶に残るのは、その独創的なデザインだ。岩礁を思わせるフォルムや、アッパーにランダムに開けられた孔が、強い存在感を放っている。
「メレルのものづくりのコンセプトは、どんな環境でどのような機能が求められるかを第一に考える目的主義。リバーハイクを目的として開発されたこのモデルのフォルムは、岩肌を流れていく水の動きをモチーフにしたもので、水の流れの抵抗を抑える効果が期待できます」
アッパーの孔にも意味があるという。
「サンダル内に水が入っても、足を踏み込むたびに、この孔からシューズ内に溜まった水がはき出されます」
「ハイドロ モック」7,700円(税込)

完成度の高い木型が生むシューズばりのフィット感

実際に履いてみると、サンダルというよりシューズのようなフィット感が印象的だ。
「リバーハイク用のサンダルは、水に流されにくくするために、足と甲を固定するストラップを付けるデザインが主流です。ただ、それだと着脱に手間がかかるというデメリットも生まれます。
そこでこのモデルには、ストラップを使わないスリップオンデザインを採用しました。こうすることで着脱が容易になるだけでなく、アッパーと足のフィット感が高まることで、水に流されにくくなります」
かかとに付けられた可動式のストラップと足のアーチに合わせた立体的なインソールも、フィット感の向上をサポートする。
「ジャングルモック」15,400円(税込)
「メレルのスリップオンシューズといえば、1998年に発売されたベストセラーモデル、ジャングルモックが有名です。このモデルが今も支持され続けているのは、“走れるモック”といわれるほどフィット感に優れているからです。そのフィット感の秘密は、完成度の高い独自の木型にあります。
アウトドアサンダルにおいても、ジャングルモックで培われた木型の開発力が生かされています」
ハイドロモックはシューズのようにかかとを包み込む構造になっているが、脱ぎ履きの妨げにはならないという。
「履く際にかかと部分を踏みつけても、足がサンダル内に入りきったら、かかと部分が立ち上がるように設計されています」

歩きやすさとサステナビリティを高次元で両立

2022年には、素材がサステナブルなものにリニューアルされた。本体には、BLOOM™(ブルーム)と呼ばれる植物由来のバイオマス素材が採用されている。
「近年の地球温暖化によって、世界各地の湖の藻が増えすぎ、水中の生物の生態バランスが崩れています。そこで藻を資源として再利用する技術が開発されました。このモデルの本体には、細かいチップ状にした藻を混ぜた特殊なEVAフォームを使用しています」
この素材には藻の過剰繁殖を抑えることによる水質の浄化や、製造過程におけるCO₂排出量を抑えられるカーボンニュートラルなど環境面で数々のメリットがあるという。
「EVAの一体成型ですので、水が入り込む隙間はなく、また、素材の特性上、水をほとんど吸収しません。ぬれても汚れても、乾拭きして日陰に干す程度でOKです」
試し履きするなかで、クッション性も確認してみた。十分な弾力がありながら、フカフカしすぎることはなく、ほどよい硬さがあるのが印象的だった。
「ミッドソールの素材はトレイルランニングシューズの開発途上で生まれたメレル独自のFloat Pro™(フロートプロ)フォームです。
原料や成型方法自体は一般的なEVA素材とほとんど同じですが、メレルは原料となる樹脂や成型の段階で熱や圧力を調整することで、軽量性、反発性、耐久性に優れた独自のEVAフォームを製造しています」
実際に歩いてみると、足が前にスイスイと進んでいく感覚があった。
「優れた反発性によって、歩行時のエネルギーリターンが大きくなるため、スムーズな足運びが可能になります。ヘタりにくく、クッション性が長持ちする点も特長です」
Float Pro™フォームは廃材を出さない製造工程や、再利用しやすいTPE(サーモプラスチックエラストマー)を原料とするなど環境にも配慮している。
オーバルラグで覆われたアウトソール
さらに地面を掴むようなグリップ力があり、もはやサンダルのレベルを超えていると感じた。
「リバーハイクではぬれた岩場を歩くこともあります。そのため、アウトソールには前後・側面にまで立体的なオーバルラグパターンを採用しています」
2024年には、ハイドロモックの派生モデル「HYDRO NEXT GEN MOC(ハイドロ ネクスト ジェン モック)」が加わった。12,100円(税込)

世界的なブレイクのきっかけは、ファッションのムーブメントから

素材からディテールに至るまで、目的が追求された一足だが、ブレイクしたきっかけはファッションだった。
「2021年にヨーロッパの有名なインフルエンサーが、全身ブラックのテック系のウエアの足元にブラックのハイドロモックを合わせたスタイリングをSNSで配信し、話題を呼びました。
当時は、前年にグローバルプレミアムコレクションのMERRELL 1TRL(ワンティーアールエル)が発表されたこともあり、メレルが脚光を浴びていたこともブレイクの要因のひとつと考えられます」
また、当時はコロナ禍による混沌とした世界情勢の影響か、奇抜なデザインの“Weird Sandal(ウィアード・サンダル)”が注目を集めており、ハイドロモックもたびたびファッションカルチャー誌に取り上げられた。
秋冬シーズンはソックスとコーディネートする人が多いという
通常、サンダルは夏に売れるシーズンアイテムだが、ハイドロモックはサンダルの“夏限定”という常識をくつがえしたのです。
「あるファッション誌で、秋冬シーズンに提案していただいたんです。ソックスとコーディネートしたその記事がきっかけとなり、一年を通して売れ続けるサンダルとなりました」
現行のカラーは一番人気のブラックのほか、7色がラインナップされる。新色は左から、「ラッシュ」、「インディゴ」、「ビビッド」
活用シーンも幅広く、さまざまな場面で重宝されている。
「テント泊を伴う登山などでは、セカンドシューズやリカバリーシューズとしてよく使われているようです。インスタでもバックパックに吊るされたハイドロモックの写真をよく目にします。
あとはやはり、街でスニーカーがわりに履いている方。軽くて通気性にも優れているため、夏場に素足で履く方が多いです」
雨の多いフェス会場でも、水陸両用サンダルとしてその機能性が高く評価されている。

“秋冬ブランド”というイメージを塗り替えた一足

「ハイドロモックが登場するまで、数十年にわたってメレルは“秋冬”のイメージが強いブランドでした。ですが、シーズンを問わず履けるこのモデルの登場によって、春夏シーズンでも存在感を示すことができました」
近年、メレルはシーズンごとに販売記録を更新しているが、このモデルがその立役者になっているという。
川から野山、コンクリートジャングルまで。ハイドロモックはあらゆる道を踏破する次世代のアーバンアウトドアサンダルだ。

Text by Ryota Osujo

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