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Apple Vision Proが変える未来のショッピング体験「THE SPATIAL STORE」に宿る空間デザインの挑戦【後編】

2025.07.24
Apple社の「Apple Vision Pro」は、私たちがSF映画で見たような未来を、少しずつ現実のものにしている。この新しいデバイスを使って、ファッションの買い物体験そのものを根本から変えようとする挑戦的なプロジェクトが進んでいる。
今回は前編に続き、空間デザインや3D商品モデル制作・開発を支えたプロジェクトチームにお話を聞き、ユーザーが心から楽しめるよう設計された、未来のショッピング体験の魅力とその裏側に迫った。
左から伴 潤、権 美愛、池上 夕貴

PROFILE

伴 潤(ばん じゅん)

株式会社ZOZOにて、iOS領域に専門性をもつテックリードとしてZOZOTOWN iOSアプリの開発をリード。その後株式会社ZOZO NEXTのSkeuomorphic Engineeringチームにて、現実の質感をソフトウェア領域に持ち込むことを目指しつつ、visionOSアプリの開発に従事。

PROFILE

権 美愛(こん みえ)

制作会社にて広告・Web制作を経験後、株式会社VASILYにてファッションアプリのデザインを担当。会社の合併・分割を経て、株式会社ZOZO NEXTに転籍。CIをはじめ、App/WebのUX・UI設計、Vision Proを含むXR領域の空間UI設計、各プロジェクト・プロダクトにおける社内デザイン全般の統括。

PROFILE

池上 夕貴(いけがみ ゆうき)

アパレルブランドにて企画やパタンナーを経験後、2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現:株式会社ZOZO NEXT)に入社。XR/AI部にてデジタルファッションやXR領域を扱うプロジェクトのPMや3Dデータ制作を担当。

コンセプトは「THE SPATIAL STORE」。空間全体でブランドを体験する

「THE SPATIAL STORE」エントランス空間
はじめに、今回のアプリが目指したコンセプトを教えてください。
池上 私たちが目指したアプリのコンセプトは、「THE SPATIAL STORE」という言葉に集約されます 。その名の通り、バーチャル空間のなかに存在する、全く新しい形の店舗です。物理的な制約がないからこそできる表現を追求し、ブランドの世界観を表現する特別な背景や、ブランドのコンセプトを感じてもらえるようなオープニングシーンを用意するなど、空間全体を使ってVision Proでしかできない体験価値を設計しています。
権 デザインのコンセプトをひと言で表すのは難しいのですが、ブランドの世界観を表現しつつ、ユーザーがVision Proを使ってショッピングそのものを楽しめる、そんな理想の形を常に目指していました。前回のプロジェクトでは一つの商品をじっくり見る体験が中心でしたが、今回はユーザー自身が操作できる機能が増えたため、より能動的に関われる体験にしたかったんです。
具体的には、ユーザーはどのような体験ができるのでしょうか。
スタイリングアイテム
池上 今回の中心的な機能である「スタイリング」では、ユーザーがブランドのアイテムを自由に組み合わせて、自分の好きなコーディネートを作って楽しめます。画面右側には自分で組み合わせられるアイテムが並び、左側にはお店のスタッフが作ったスタイリング例が表示され、中央の空間で3Dのスタイリングを様々な角度から見ることができます。ただ商品を選ぶだけでなく、自分でスタイリングを創り出す楽しさが加わったのが大きな違いです。

現実から非日常へ、心をつかむ「体験の経過」のデザイン

ユーザーを新しい世界に引き込むために、デザインで特にこだわった点はどこですか。
権 Vision Proを装着すること自体、人によっては少しストレスに感じるかもしれません。だからこそ、一度その世界に入ったら、現実とは違う非日常的な空間へ自然に溶け込めるような体験の「経過」を大切にしました。現実の世界からアプリのなかの世界へ、いかにスムーズに、そして魅力的に誘うかという点にこだわっています。
前回のプロジェクトでの経験が、デザインに活かされている部分もあるのでしょうか。
権 はい、前回の経験は大きかったです。前回は、ユーザーが目の前の空間から下のフロアへ移動するような、バーチャルな空間移動を体験できるようにしたところ、非常に良い反応をいただけたんです。その経験から、やはりユーザーの想像を超え、最初に心をつかむような演出が必要だと確信し、今回もアプリ起動直後の導入体験にはこだわりました。そういった仕掛けがなければ、現実の世界からバーチャルな世界へと深く入り込むのは難しいと感じています。
空間全体のデザインで意識したことはありますか。
スタッフ呼び出し画面
権 最近のリアルな店舗では木の素材を取り入れた温かみのあるデザインが多いですが、バーチャル空間で木目を表現すると、少しチープに見えてしまう懸念がありました。そのため、今回はあえてモノトーンを基調とし、未来的でありながら落ち着いた、中立的なイメージで空間全体を統一しています。また、操作ボタンなどの細かいUIも、単なる機能ではなく空間を構成するデザイン要素と捉え、標準のものより少しリッチに見えるように細部までこだわって作り込みました。

ふと振り返るとソファが?空間に隠されたデザイナーの遊び心

メイン画面
(ユーザーを囲むように商品が表示され、振り返るとソファも。特別な席で買い物を楽しんでいるような気分を味わえる)
今回のアプリには、作り手の遊び心も隠されているとうかがいました。
権 そうなんです。実は、ちょっとした遊び心もいくつか入れています。スタイリングを考えているだけでも楽しいのですが、それだけだと少し窮屈かもしれません。Vision Proは決して軽いデバイスではないので、長時間でも楽しんでもらえるように、少し余白を残すことを意識しました。例えば、体験中にふと後ろを振り返ると、そこには誰のためでもないソファがひっそりと置いてあったりします。これは「振り返った人だけが気づくオブジェクトを置いてみようか」という話から生まれた、私たちの遊び心です。
池上 背景を変えられる機能も、そうした遊び心の一つですよね。
権 そうですね。背景画像もいくつかパターンがあって、自然の背景を選ぶと、鳥のさえずりのような効果音が流れます。商品を使用するシーンが想像しやすくするために入れた機能ですが、ただ商品を効率よく見るだけではなく、「おお!」と驚いてもらえるような空間になっていれば嬉しいです。

成功の鍵は「全員で並走する」開発プロセス

今回は、プロジェクトの進め方も前回とは少し違ったそうですね
池上 はい。前回は、企画内容を開発チームに伝えた後、実装がある程度進むまでを待つ必要がありました。そのため「完成したものが意図通りでなかったらどうしよう」という不安を抱えながら、最後にまとめて確認するという進め方でした。しかし今回は、企画、デザイン、開発が密に連携し、実装された機能をすぐにチーム全員で確認し、フィードバックするというサイクルを徹底しました。これにより、まさに一歩一歩、全員で並走しながらプロジェクトを進めることができました。
伴 今回のようにアプリのサイズが3GBを超えると、ビルド(生成)や配布作業に膨大な時間がかかり、開発側は1日の大半をその作業に費やすこともあります。そこで今回は開発の効率を上げるため、各担当者が自身でアプリをビルドし、手元のVision Proにインストールする方式を取りました。これにより、開発者は本来の開発業務に集中でき、全体の生産性が大きく向上しました。

「リアルとバーチャルのいいせめぎあい」が生み出す面白さ

アイテム詳細画面
最後に、このアプリを体験した人に、最も感じてほしいことは何ですか。
権 このアプリは、ECでの買い物と、リアル店舗での買い物の、ちょうど中間のような新しい選択肢を提示できたのではないかと感じています。このアプリでは3Dモデルが本当にそこにあるかのような、本物に近い質感で見えるんです。その「リアルとバーチャルのいいせめぎあい」が生み出す面白さを感じてもらえたら嬉しいですね。
伴 やはりショッピング体験アプリなので、できれば商品を見て、気に入ったら購入するっていうところまでの一連の流れを体験をしていただけると一番嬉しいです。
ECでは、注文した商品が後から自宅に届くという2度目の楽しみがあるはずです。今回の体験でも商品を購入し、後日それが届いた時に、「そういえば、これってあのショッピング体験で買ったものだ」と、楽しかった記憶を思い出していただけたら最高です。
この新しいショッピング体験は、作り手たちのこだわりと、未来のショッピングへの期待、そしてほんの少しの遊び心から生まれています。ただ商品を買うだけではない、彼らが作る「THE SPATIAL STORE」にぜひ触れてみてください。

<イベント概要>

ZOZO NEXT "THE SPATIAL STORE" Experience the Future of Shopping with meanswhile

期間 :2025年7月25日(金)~30日(水)

 -7月25日(金) 13:00~20:00(19:00最終受付)

 -7月26日(土)~7月29日(火) 11:00~20:00(19:00最終受付)

 -7月30日(水) 11:00~17:00(16:00最終受付)

場所 :( tefu )lounge shimokitazawa(〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-21-22)

申し込みページURL :https://zozonext.com/project/the-spatial-store 

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