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2022.03.21

アパレルから広がりを見せるRFIDとこれからのサプライチェーン

技術が進歩し、インターネットが普及したことによって、商品はかつてないほどの速さで流通するようになった。しかし、それにともなってECサイトとリアル店舗の連携や商品の過剰な在庫、また廃棄などの環境汚染の対策など、課題は増え続けている。
それらを解決する技術として、無線電波でICチップを読み取るRFID(Radio Frequency Identification)がある。このRFIDを用いたソリューションを提供しているのがAvery Dennisonという会社だ。今回、Avery Dennison Smartrac マーケットディベロップメントディレクターの三井さんに、RFIDの技術とそれがもたらす未来について伺った。

RFIDによるサプライチェーンの改革

Avery Dennisonは、累計600億枚以上のRFIDを出荷してきた世界最大のUHF帯RFIDのソリューションプロバイダーである。
RFIDとは、電波でICチップの情報を非接触で読み書きする自動認識技術のことを指す。そのため、アイテムに取り付けるタグ、タグを読み取るリーダー、読み取ったデータを蓄積、管理するソフトウェアが揃ってはじめて機能する。それぞれの仕様や組み合わせは多岐にわたり、1つでもオペレーションを間違えるとシステムがうまく作動しないという事態が起こってしまう。そこでAvery Dennisonは、現状の課題や目指す姿を理解し、それを解決・実現するためのビジネスケース、プロセスやソリューションを、顧客とともに作っていくサービスを提供している。
最近では、フランスのランジェリーブランドEtam Groupや世界的なアパレル企業のKOOKAÏへのRFIDの導入を行ったが、それは在庫管理の最適化やサプライチェーンにおける透明性を実現するためであった。この背景には、コロナによってオムニチャネルの重要性が一層高まったことへの対応、サステナビリティへの関心の高まり、そしてそれらを踏まえて、新しい顧客体験を生み出していくことがブランドに求められていたことがあるようだ。
商品にデジタルIDを付与することには、様々な可能性が秘められている。サプライチェーンの各所でデータを取得することが可能になり、何がどれだけどこにあるのか、どういう状態にあるのかを正確に把握することができるようになる。それにより、サプライチェーン全体で欠品をなくすことができるだけでなく、事前に納入される物量がわかるので倉庫リソースを最適化することも可能になる。
この恩恵は、日本でも言われるようになってきたBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)で見ることができる。BOPISとは、オンラインというチャネルで購入し、リアル店舗という別のチャネルで受け取る方法を指す。
たとえば、店舗で購入された商品を自社や外部のEC倉庫から発送したり、ECサイトで購入された商品をユーザーに近い店舗から発送するということができる。そうすることで一箇所で過剰に在庫を抱える必要がなくなり、また廃棄の抑制や不要な調達・生産・輸送を削減することに繋がる。さらに、物流企業では、荷物にデジタルIDをつけて物量を予め把握した上で輸配送を計画することで、トラックの積載率を向上させる取り組みも行っている。そういった蓄積されたデータの活用こそが、高い精度の計画や運用、またサステナビリティの実現を可能にする。
こうした取り組みは日本だけでなく、海外でも展開されている。三井さんは「今年世界最大のスーパーマーケットチェーンが在庫精度、店頭での購買体験、オンラインや店舗での受け取りサービスの向上を推進するため、アパレル用品に加えて、家庭用品メーカーのほか、一部のハードライン(金物や自動車用品)やエンターテイメントやおもちゃなどにもRFIDの活用範囲を拡大することを発表し、私達の業界ではちょっとした話題になっている」と語ってくださったように、いま改めて注目すべき技術であることには違いない。
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#RetailTech
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