ドレス、ス ポーツ、ミリタリーと並び、近代メンズファションにおいて欠くことのできないキーワードとして台頭してきたワークウェア。過酷な現場で仕事を支えてきた堅牢性と機能美は、歴史の流れとともに機能を高めながら変貌を遂げてきた。そうしたワークウェアの歴史のなかで、長年大きな変革を遂げずにきたカテゴリがある。それが、メディカルウェアだ。
「白衣や手術着は毎日着るものなのに、デザインで選ぶという選択肢がそもそも無かった。B to B向けの一般的なメディカルウェアも、袖口のデザインや素材感に対して給食の割烹着のようなデザインが一般的。ユーザーが求めるデザインとは長年の間乖離していたんですね。それは海外も日本も同じで、海外にもファッション性を意識したデザインの白衣はこれまで存在していませんでした」
そう語るのは、医療従事者のための衣類などを手がける、
クラシコ株式会社のチーフデザイナー・大豆生田 伸夫さん。長い間変わらなかったメディカルウェアシーンに一石を投じた企業のキーマンである大豆生田氏に、同社のものづくりに対するこだわりや、新たに誕生したライン「
MyWear/マイウェア」についてうかがった。
過去の当たり前を変える。クラシコがメディカルウェア界に起こした小さな革命
2008年に創業したクラシコの原点は、代表取締役社長である大和 新氏と、その友人である医師との「オシャレな白衣があってもいいのでは?」という何気ないやりとりに起因する。良くも悪くも変わらないメディカルウェアのスタイルや変わらないデザインの白衣は人々の中にイメージとして長く固着しており、誰も疑問を抱かなくなっていた。そこに同社はファッションの観点からメスを入れることに。「過去のメディカルウェアは当たり前の道具のような向き合い方をされてきましたが、私たちは機能やデザインとともに“気分を高める仕事着であることの大切さ”に着目しました。毎日着るからこそモチベーションが上がるものを着たいという思いは、ドクターや医療従事者にとっても同じことです」