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2022.12.22

医療従事者の声に耳を傾け誕生した、新たなカテゴリーのファッション

ドレス、スポーツ、ミリタリーと並び、近代メンズファションにおいて欠くことのできないキーワードとして台頭してきたワークウェア。過酷な現場で仕事を支えてきた堅牢性と機能美は、歴史の流れとともに機能を高めながら変貌を遂げてきた。そうしたワークウェアの歴史のなかで、長年大きな変革を遂げずにきたカテゴリがある。それが、メディカルウェアだ。
「白衣や手術着は毎日着るものなのに、デザインで選ぶという選択肢がそもそも無かった。B to B向けの一般的なメディカルウェアも、袖口のデザインや素材感に対して給食の割烹着のようなデザインが一般的。ユーザーが求めるデザインとは長年の間乖離していたんですね。それは海外も日本も同じで、海外にもファッション性を意識したデザインの白衣はこれまで存在していませんでした」
そう語るのは、医療従事者のための衣類などを手がける、クラシコ株式会社のチーフデザイナー・大豆生田 伸夫さん。長い間変わらなかったメディカルウェアシーンに一石を投じた企業のキーマンである大豆生田氏に、同社のものづくりに対するこだわりや、新たに誕生したライン「MyWear/マイウェア」についてうかがった。

過去の当たり前を変える。クラシコがメディカルウェア界に起こした小さな革命

2008年に創業したクラシコの原点は、代表取締役社長である大和 新氏と、その友人である医師との「オシャレな白衣があってもいいのでは?」という何気ないやりとりに起因する。良くも悪くも変わらないメディカルウェアのスタイルや変わらないデザインの白衣は人々の中にイメージとして長く固着しており、誰も疑問を抱かなくなっていた。そこに同社はファッションの観点からメスを入れることに。
「過去のメディカルウェアは当たり前の道具のような向き合い方をされてきましたが、私たちは機能やデザインとともに“気分を高める仕事着であることの大切さ”に着目しました。毎日着るからこそモチベーションが上がるものを着たいという思いは、ドクターや医療従事者にとっても同じことです」
白衣やスクラブ(手術着)、ナース服など、医療従事者のためのワークウェアにファッション性と機能性という新たな息吹をもたらしたクラシコ。糸一本からこだわった素材選びや色設定、カッティングにいたるまで、メゾンブランド顔負けのこだわりを持って製品開発を行っている
白衣やスクラブ(手術着)、ナース服など、医療従事者のためのワークウェアにファッション性と機能性という新たな息吹をもたらしたクラシコ。糸一本からこだわった素材選びや色設定、カッティングにいたるまで、メゾンブランド顔負けのこだわりを持って製品開発を行っている
ウェアの機能という観点でも、過去のメディカルウェアの作りは繰り返し洗って使ってもへたらないという耐久性だけに振り切って作られていることが多く、着心地や肌触りといった快適性が置き去りになっていたと、大豆生田さん。
「医療現場にリサーチを行ったところ、従来の耐久性に加え、着心地や肌触りといった快適性に対する需要が浮き彫りになりました。そうした声をもとに、弊社ではものづくりにおいて、医療従事者のための『耐久性』『機能性』『ファッション性』の3軸を追求するというコンセプトを定めました。それは現在も変わらず、常に現場の声に耳を傾けながら、本質的なものづくりを大切にするという姿勢を貫いています」
こうしたクラシコの考え方、そして製品に対する潜在的な需要は数字にも表れており、主な販路であるECサイトは国内ドクターの30〜40%が利用したことがあると回答するなど、認知度は現在も拡大中。実際にドクターや受付の方まで、多くの医療従事者から支持されている。
また、現在では人気ブランドやセレクトショップとのコラボレーション企画を展開するなど、よりファッション的な観点での選択肢も拡充し、まさに待望のカテゴリとして現在もファンを増やし続けているという。
「以前は銀座のテーラーに勤めていたのですが、そのとき綿100%のロロピアーナの生地を使った白衣を10万円で作られるドクターもいらっしゃいました。当時のものづくりの経験を振り返って思うのは、白衣や医療用のユニフォームもスーツと同様で、オーダー時にその方のライフスタイルをヒアリングし、着方やシーンにあわせて一緒に作っていくべきだと思うんです。その考え方は今も私たちのものづくりの根底にあります」
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