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2021.10.25

日本の大手靴メーカーを3Dに一挙で体験できるVRモール

コロナ禍が長期化するにつれて、さまざまな専門業界がオンライン展示会に乗り出すようになった。そのなかで靴業界では、日本靴工業会主導で2021年9月に5社合同で靴に関するWeb VRモールを制作した。
日本靴工業会は1950年に発足され、革靴による消費者の利益増進及び国革靴製造業の発展に寄与することを目的とした歴史ある団体だ。なぜ靴業界が、VR展示に挑戦することとなったのだろうか。今回は、VRモールの制作に携わったクレヨンピクチャーズ株式会社ディレクターの松原さんに、業界のVR参入のきっかけや、狙いについてお話を伺った。

BtoBビジネスの販売促進として

VRモールは、各社の最新トレンド情報や季節の新アイテム、社史や自社の取り組みなどを紹介するホームページ、ECサイト、コンテンツサイトへ簡単に遷移するポータルサイトだ。BtoBのビジネスユースをメインに見込んでおり、バイヤー、小売店様に向け新たな商品価値を提示し、販売促進につなげることを目的として開催されている。
今回の試みは、既存のVR展示会の試みなどを踏まえて、日本靴工業会からクレヨンピクチャーズに対してVR活用についての問い合わせがあったことから始まったそうだ。そして制作についての議論を経て、販売ツールとしてデジタル活用に注力したい日本靴工業会から正式な依頼を踏まえ開催が決定したという。

フォトグラメトリによる3Dモデリング

出店会社については、日本靴工業会のホームページにて靴工業会の会員企業も含め公募をし、公募要領に基づいて選定を行った。その結果、大塚製靴株式会社、東立製靴株式会社、株式会社ハルタ、マドラス株式会社、株式会社リーガルコーポレーションなどの企業が集まった。これらの企業は、それぞれでデジタル活用の方法を模索していたという。
出店が決まった店舗のプロダクトを3Dモデルにする際には、フォトグラメトリ(対象をさまざまな角度から写真撮影を行ったデータを解析し3Dを作成する)という手法が用いられた。フォトグラメトリを用いることで、3DCGモデリングコストを抑えることができるだけでなく、靴独自の特徴を再現する際にも良い方法であるそうだ。
革靴は各々の製靴メーカーが独自の木型を使用して革靴を制作するため、木型に忠実に3DCGを作成して、会社のアイデンティティを反映する必要がある。そのため、一般的な3DCGにするだけではなく、実際に各社から靴を借りたうえで、あえてフォトグラメトリという手法のもとで3Dを制作したのだという。
松原さんによれば、withコロナの時代のなかで、今まで通りのリアル店舗での接客に加え、今回のようなVRを展開していくことで、さらなる販売促進や新規顧客の獲得へと繋がることを期待しているという。またそこから、少しずつVR技術や普及していくことを考えているという。ファッション業界は特に、低価格志向と高級志向の2極化の上でどちらかがデジタル化していくと見ているようだ。
クレヨンピクチャーズ社全体としては、プロジェクションマッピングやインタラクティブ、イルミネーションなど、得意としている分野をさらに伸ばしつつ、今回のようなVRやARのようなデジタルコンテンツにも力を入れていきたいとのことだ。なかでも特に、アバターコミュニケーションやお買い物ができる空間の開発なども検討している。
今後も靴業界の更なるデジタル化と、クレヨンピクチャーズのアバターを用いた試みの発展に注目していきたい。
#Virtual Reality
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