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2022.07.06

先行予約販売でハイブランドを手頃な価格で提供:d.code

パリやミラノ、ニューヨークなどのファッションウィークで初披露される海外ハイブランドの新作を、国内販売前に先行予約(PRE-ORDER)にて販売している「d.code」。2015年に韓国で創業、2018年よりハイブランドの先行予約販売を開始し、PRADA、SAINT LAURENT、BOTTEGA VENETA、BALENCIAGA、Maison Margielaなど800以上のハイブランドと160,000以上の商品を提供している。日本では2022年3月28日よりサービスを開始した。
どのような仕組みで、ハイブランドの新作を手頃な価格で提供できているのだろうか。今回は日本法人であるd.code株式会社の代表、金 根佑さんにd.codeのビジネスモデルについて話を聞いていく。

新作をアウトレット価格で

d.codeの大きな特徴は、ハイブランドのシーズン新作をアウトレット価格で販売していることだろう。ECサイトで先行予約を行っており、簡単に購入することができる。
「d.codeでは正式販売時期の2〜3か月前に注文して、正式販売時期に合わせて商品が届くのが大きな特徴です。従来のファッション購入体験とは異なる部分としてまだ慣れてないお客様も多いかと思いますが、KickstarterやMakuakeのような購入型のクラウドファンディングや海外旅行など、価値や商品が届く前に支払いをする行為は、私たちの生活のなかでかなり浸透しています。その概念が、ファッションまでには認識として結びついていないのですが、『遠くない未来に主流になる。主流になるべきである。』と考えてこの事業を進めております。」
ファッション業界には在庫問題がある。過剰生産は売れ残り在庫として、生産者に負担を加重させるだけではなく、生産や在庫廃棄の工程で環境にも大きな負担をかける原因となる。本来は、生産者や環境にとって「ニーズがある分だけを生産する」ことが理想だ。金さんは、それを実現できる買い物のあり方が先行予約であると話す。
「無駄な生産と在庫を減らすことができる分、より手頃な価格で商品をお客様へ提供でき、お客様は価格的なメリットに加え、自身の消費行為がより持続的な社会を作って行くことに貢献できます。『消費者、生産者、そして地球に優しい消費文化の定着』、これが弊社のミッションであり、事業を行う上で社会における我々の役割と考えています。」

アウトレット価格で提供できる理由

もともと先行予約は商品の生産前に注文を行う仕組みだが、ハイブランドにおける先行予約は昔から 「企業間の取引」 として存在してきた。一部の大手バイヤーなどが来シーズンの商品を大量に注文し、生産が終わった時点で国内に輸入され、消費者が購入できるように全国の百貨店や店舗へ流通させるというイメージだ。
それに比較しd.codeでは、来シーズンの商品をユーザーが生産前に直接購入できるように商品を公開し、生産された時点で直接届けてくれるサービスとなっている。いわば、「一般消費者向けの先行予約サービス」で、これまでファッション業界の裏舞台に存在してきた 「企業対企業」 の先行予約を消費者に開放したサービスである。
シーズン新作にも関わらずアウトレット価格で販売できる理由については、主に二つの要素が含まれているという。
一つ目は、国内の定価と海外現地の定価の差分だ。これはブランドによって異なる部分だが、国内の定価は海外現地の定価より平均2〜3割高く価格が設定されている。割高である理由は、販売するために必要な輸入・流通の費用や店舗の賃貸、従業員の人件費などが上乗せされている構造になっているからだ。
「これは『海外より高い=悪い』という話ではなく、ビジネスの構造的に割高に販売せざるを得ないということを、ご理解頂ければと思います。一方、弊社は直接商品を仕入れ、店舗などを持たず、インターネットを通じて直接お客様に販売するため、海外現地の定価で販売できる仕組みとなっているんです。」
二つ目は、新作の初セールを前倒しに行うこと。通常、新商品が発売され2〜3か月後には必ず初セール(2〜3割)が行われるが、d.codeではこの初セールを前倒して先行予約時に適用することで、新作にも関わらずディスカウントができる仕組みを作った。この仕組みが実現可能な背景は、売上予測が難しい生産前の段階に、d.codeが大量の商品注文を担保することで、確実な利益の担保と過剰生産を減らす価値を生産者に提供し、その代わりに、新発売の2〜3か月後に行うセールを新発売の同時に行う事に了承を貰っているとのこと。総合的には、海外と国内の定価の差分と先行予約の追加ディスカウントを加えることで、国内の定価より3〜5割の手頃価格での提供を実現している。
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#Sustainability
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