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2022.12.05

日常も特別な日も「一生モノ」を:ELMISAのサステナブルな服作り

子育て世代にとって、子どもの成長ほど嬉しいことはないだろう。だが、同時に日々成長する身体に合わせて、衣服の買い替え頻度に頭を抱えている親も多いはずだ。そのため少しでも長く着てもらうために、不格好でも少し大きめの服を買ったり、汚れても良い安い服を選ぶなど工夫をする。
では、「子どものおしゃれは、もう少し大きくなってから」と諦めるしかないのだろうか。「そんなことはない」と語るのが、株式会社MISAの代表取締役であり、「ELMISA」のプロデューサーでもある上村紗也賀さんだ。
娘を育てるという自身の経験から服作りに向き合うことで、子どもの成長と思い出を重ねることができるブランドを立ち上げた。今回、上村さんに「ELMISA」に込めた思いやその服の特徴、環境問題への意識を伺った。

一生モノの子ども服を目指して

株式会社MISAが展開するブランド「ELMISA」は、いずれの商品も「一生モノ」を掲げている。子どもは成長も早く、服のサイズもすぐに変わってしまうため、おさがりや古着などで済ませようと考える親も多いだろう。
だが、それにストップを掛けるのが「ELMISA」だ。子ども服だからこそ、「記憶に残り続けるものを」という思いがあるようだ。
「一生モノの子ども服というのは『実際に一生着る』という意味ではなく、『子どもの記憶に残り続けるお洋服』を意味します。写真を見返したときに、家族の思い出の一部に寄り添う商品にELMISAがなってほしいという願いを込めています」
これを実現するために、長く着用できるデザインに仕上がっている。その特徴は「型」「縫製」「加工」にあり、それぞれに独自の考えがある。とりわけ目を引くのが、「成長に合わせて変化する」点だ。
「袖が取り外しできるようになっているため、冬は長袖として、春秋はレイヤードのインナーとして、夏は袖を外してノースリーブで、といったように、年間を通じて着れるアジャスターで調整できるお洋服などを展開しています。
また、トレーナーやボトムスは最初ロールアップで、翌年はジャストサイズで、再来年は7部丈で、とお子様の成長に合わせて、どのタイミングで着用しても可愛いシルエットや裏地の色にこだわってお作りしています」
このように通年で着用でき、かつ子どもの成長にも対応できる衣服というサステナブルにも特化した特徴を持つ。しかし、何度も洗濯をしたり、わんぱくな子どもの動きに耐えられるのかという不安もあるだろう。
「made in Japanで、縫製にはこだわっています。また長く着るためには、ヨレない生地や裏地をつけることが必要になりますが、そうすると着心地が悪くなってしまう。逆に、着心地を追求すると、洗濯したときに縮みやすくなります。そうした課題を解決しながらの生地選びは大変でした」
さらには、こだわりの生地に特許技術の撥水加工がなされているという。
「知らない方は、撥水加工が施されていることに気づかないと思います。それほどまでに、本来の着心地を保持しています。ウインドブレーカーのような誰が見ても撥水、という技術ではなく、さりげなく汚れに強いという加工ができる工場を探しました」

日本の子ども服にもサステナブルを

ELMISAは、上村さん自身が子育てをしていくなかで、子ども服の課題に気づいたことで立ち上げたブランドだ。
上村さんは、女の子は赤色でスカート、男の子は青色でジーンズといった固定観念に染まったデザインに心がときめかなかったようで、海外から子ども服を個人輸入して着せていた。そうして多くの子ども服を見ていくなかで、あることに注目した。
「ヨーロッパの子ども服は、サステナブルを意識したブランドが多いけれど、海外の子どもと日本の子どもでは体型がまるで違います。子どもにあったサイズを選んでも手足の丈が長かったり、頭が入らなかったり、お腹周りがきつかったりします。
一方、アジアの子ども服(韓国や中国)はデザインが可愛いのですが、ユーザーのほとんどが消耗品として捉えており、縫製や着心地などは保証できないものでした」
質と体型のミスマッチから生じる問題は、深刻なものだった。成長するからといって大きめの洋服を買ったとしても、ジャストサイズで着られるようになるころにはヨレヨレという経験は誰にでもあるだろう。
「せっかくの可愛いお洋服とお子様の大事な成長時期の写真が、このような問題でマッチしていないことを解決したかったのです。どのタイミングでもジャストサイズで着用ができ、かつ長く着れる。日本の子どもたちの体型に合ったお洋服を生み出すことができれば喜んでいただけるのではないかと思い、ELMISAを立ち上げました」
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#Sustainability
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