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2021.12.03

日本繊維業界の活性化を目指す:KIZIARAI

織物(生地)に特化したオンラインマッチングプラットフォーム「KIZIARAI」。Bird fab studio株式会社が展開したこのサービスは、新しいITコンバーティングとしてトレーサビリティの視点・時間と経費の効率化を実現するもの。日本独特で複雑な商慣習をITにて最適化することで、既存流通に影響がなくすべてのステークホルダーが利用できるサービスだという。
コロナ禍の影響により経営環境は大きく変化し、会社の発展には新しい仕事様式に向けての変革が求められている。織物の生産を行う企業も例外ではない。そんななか「KIZIARAI」はどのような役目を担ってくれるのだろうか。Bird fab studio株式会社の代表取締役である上羽英行さんに話を聞いていく。

目的は繊維業界の活性化

「KIZIARAI」はグローバル展開可能なテキスタイルのマッチングプラットフォームだ。全国に分散する各産地の織物が集約・掲載されており、都心部に集中するアパレルに出張に行かなくても、探されている織物を瞬時に配信でき、かつネット上での打ち合わせが可能となっているサービスとなっている。
ここではサプライヤーには世界に販路を提供し、バイヤーには時間・距離を問わず見本依頼を可能にしている。

テキスタイルメーカーと日本・海外バイヤーとのマッチング機能では、サプライヤーの特徴を最大限に引き出し、ショールームを通じてサプライヤーのファン、新規顧客を増やすことを大きな目的としている。サービスを通じ交流が増えることで、今まで入手するのが、難しかった生きた情報が行き交い、活性化へと繋げることができるからだ。

一方、バイヤーはリストからサプライヤーを検索し、サプライヤーショールームから直接の問い合わせ、非対面商談、生地スワッチ依頼、文章・写真で合い見積りが可能なOMOTENASHI機能を無料で発信できる。生地全体からの検索も可能だが、同社ではサプライヤーの特徴・強みなどのブランディング化を意識した構成を行なっているという。
そもそも日本繊維業界は分業体制が主流のため、各サプライヤーが有する織機・技術などが情報として共有しにくい環境がある。実例として、北陸ではキャパシティが少ないイタリー撚糸機が貴重になっているのに対し、丹後産地では稼働することなく数多くのイタリー撚糸機が存在している。産地によって工賃の差はあるものの、丹後産地で撚糸機を集約し管理体制を整えることで、たとえ低価格な工賃商売であったとしても撚糸機を処分することなく、雇用を生み出し、他産地の情報・ネットワークが共有できることは大きなメリットを享受できる。
このようなメリットを最大限引き出すため、新たにサプライヤー同士とのマッチング機能が2021年11月末に展開される。このサービスでは、生地メーカー・原料メーカー・染工所・加工所は、新しい染め技術・加工技術・設備投資の情報を瞬時に写真・動画とともに情報伝達が可能になるため、大きな課題であった異産地協業の促進による繊維業界の活性化に繋げられるという。

こだわりの検索機能

織物は服となる中間素材のため肉感・光沢感・落ち感などの感覚的な要素がネット上では伝わりにくいのが課題である。そんな課題を解決するため、KIZIARAIは検索の開発にもこだわっている。そこにはテキスタイルならではの、表現をカバーするための開発や設計の工夫があるという。
「たとえばよく生地の探し物で使用される言葉『サーマル』はもともと生地の用語ではありませんが、よくキーワードとして使われます。ほかにも用語としては不適切ですが、現場では生地を表す言葉として一般化されているさまざまな言い方があります。このような言葉については、実際に現場でデザイナーと商談しないと得られない情報ですので、対面商談も常に行い現場重視で構成を組み立てています。ただ、現状でも検索具合は納得できていませんので、来年早々にはUI変更を行う予定です。」
検索機能には、信州大学との共同研究としてAIを使った類似検索機能なども搭載も予定している。これらのAI技術による画像・動画からの検索技術は同社専願で出願しており、この特許技術は数万種類の生地が登録されているなかでコレクション写真やInstagramなどの写真・動画・3Dを取り込むだけで瞬時に検索され適切な生地が検索が可能となっている。ただし、高額なシステム開発費用を要するための資金調達が障壁になっており、AI特許技術はシステムには搭載されていないが、今後は検索だけでなく3Dシミュレーションも含めたさまざまな用途に応用できるようになっていくとのこと。
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