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2021.10.18

妊婦に起こりうる課題をICTにより解決するIoT胎児モニター

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日本では出産のリスクを低減するため産科医療施設の集約化が進められ、世界一低い周産期死亡率など、高いレベルの医療が提供されている。一方で、産科施設数は急激に減少しており、妊婦の通院が困難となっている地域も増えてきている。加えて、ライフスタイルの変化などから高齢出産やリスク妊娠の割合も増加しているという。
そんななか、メロディ・インターナショナル株式会社では妊婦に起こりうる課題をICTにより解決するため、医師・医療機関とともに様々なサービスを開発・提供。そのひとつがIoT胎児モニター「分娩監視装置iCTG(以下「iCTG」)」だ。国内初となるこのIoT型胎児モニターは、胎児の心拍と妊婦のお腹の張りを病院や自宅などで測ることが出来るデバイス。今回は「iCTG」の概要や開発の経緯について、同社の二ノ宮さんにお話を伺った。

早期の搬送指示・受入準備が実現できる

IoT胎児モニター「iCTG」は、従来の据え置き型分娩監視装置の計測性能はそのままに本体をすべてトランスデューサ内に納め、小型で軽量、ワイヤレスな胎児モニターに開発された。どこでも持ち運び可能で、Wi-Fiや携帯ネットワークを使用し計測データをリアルタイムで医師に届けることができる。また、トランスデューサに心音スピーカーが内蔵されており、医療従事者の指導のもと妊婦が自分自身で胎児の位置を探して装着できる工夫が施されている。
妊婦自身が在宅で「iCTG」を利用し産婦人科医にデータを送信することで、通院負担を軽減したり、切迫早産などでの長期入院を回避できたりすることで、妊婦とその家族の経済的精神的負担をやわらげられるという。
データはクラウド(周産期遠隔医療プラットフォームMelody i)で管理され、医療従事者は手元のPCやスマホからいつでもリアルタイムに患者をモニターすることができる。それにより、早期の搬送指示が可能となり、さらに搬送中も救急車両の中で継続して計測が可能なため、より早い受入準備が実現できるという。
Melody iにつながることで地域の周産期センターとクリニック、助産院などのデータ連係により、リスク妊娠や里帰り出産での転院の際もスムーズな申し送りが可能となり、地域で妊娠出産を支える、周産期の地域連携システムが構築できる。住んでいる場所にかかわらず、遠隔で母子の健康状態を管理してもらえるのは妊婦にとって安心できるポイントだろう。

医療機関や妊婦へのヒアリングを積極的に実施

IoT胎児モニター「iCTG」開発のきっかけは、産婦人科の施設は少ない島々が抱える課題だったと二ノ宮さんは話す。
「香川県瀬戸内海は豊かな島々が多いですが、産婦人科の施設は少なく、妊娠後期は本土側に移住するといった習慣があったそうです。小豆島では通常の分娩以外はすべてヘリコプターや船による搬送を行います。このような環境を改善して、どこに住んでいても安心してお産の準備が出来るシステムが求められていました。」
香川大学の医師らは長年遠隔での胎児モニタリングの研究を重ねており、その成果は日本中の離島へき地や発展途上国で検証されていた。万全を期さなければならない皇室の出産(愛子様や悠仁親王)にも、その技術は応用されてきたという。そのような技術を研究室で終わらせることなく、製品化して広く世界に広げる必要性を感じ、香川大学発ベンチャー企業として起業し展開を始めていった。
開発は2015年7月の起業から2019年の製品化まで、約3年を要した。主に創業メンバーの開発チームと顧問である香川大学の教授の2名で行われたという。
「実証や臨床テストは、香川大学の提携大学であるタイのチェンマイ大学産婦人科に多大な協力を頂きました。その事業はJICAの草の根技術協力支援として約6年間実施されました。量産にあたっては地域のEMS会社と二人三脚となって進めてきました。」
開発にあたり、医療機関や妊婦へのヒアリングなども積極的に実施した。主に小豆島や奄美大島などの離島医療を担う医師たちや、岩手県や石川県のへき地医療の改善を進める医師たちと、多くの妊婦へのヒアリングを実施。なかでも一番のフィードバックは前述したタイのチェンマイ大学の医師たちだった。医療資源の偏在が激しい山間部を抱えるチェンマイの医師達は、この開発を自分たちの課題として捉え、一緒になって考えていったという。
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