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2022.01.17

AIを利用したOMO店舗「PiCaZo Pop!」

OMO店舗の登場が相次ぐなか、AIをOMO施策に掛け合わせた新しい店舗「PiCaZo Pop!」が登場した。「PiCaZo Pop!」は、ブランドのオンラインショップ用のコンテンツを実店舗に適用するよう改良し、消費者の入店から購買のデータなどのテータの収集・分析を行うことで、消費者とブランドをよりダイレクトにつなげるためのOMO店舗だ。
このOMOストアを展開するのはbestat株式会社だ。bestat株式会社は2018年に創業された東京大学発のベンチャー企業で、工場や店舗に向けたソフトウェアの提供や、画像AIとIoTを用いたサービスの開発・提供を行っている。今回は、bestat株式会社・代表取締役を勤める松田尚子さんに、サービスの概要やOMO店舗の狙いについてお話を伺った。

店舗内の細かい動きを分析するための工夫

「PiCaZo Pop!」では一度オンラインショップ用にコンテンツを預かり、実店舗用に加工したり、データの分析・改善を行うことで、オンラインショップが実店舗で伝えたいことを狙い通りに消費者に届けることができるという。
松田さんによると、実店舗では、オフラインならではのマーケティング施策と店舗運営・管理のノウハウが属人的に蓄積されているが、データは不足しており、オンラインショップではデータを用いたマーケティングは出来るが、深いタッチポイントが生まれづらいという違いがあるとのことだ。この違いに対応するために、「PiCaZo Pop!」ではカメラによる消費者情報の取得を行っている。
このカメラは消費者1人ずつに入店時にIDを振り、その人が店内のどの地点からどの地点に移動し、何秒間滞在したか、どの商品を手に取ったか、購入したかを追跡する。そしてこうしたデータを集計、分析できる。
この分析によって実店舗でもオンラインと同様な定量化されたマーケティングファネルが獲得でき、データ取得前に比べ実店舗でのマーケティング施策、新商品開発、接客方法の改善をより短いサイクルで回すことが出来るようになるそうだ。
たとえば、店舗に来られた顧客から十分なインプレッションを得られている(商品棚の前を通って、一瞬でも商品を見て貰えている)のに、その後のアテンション(商品棚の前で一定時間滞在し、商品を吟味する)が理想的な値から外れている場合がある。この場合、商品カテゴリーや遠くから見た商品配置は良いが、1つ1つの商品の魅力や機能等の情報が足りないために、訴求力が下がっている、といったことが考えられる。こういったデータの分析から、理想的な数値の達成のために、実店舗の配置や表示、お声がけ内容等を改善することが可能となる。また、実店舗はオンラインショップと異なり、通りがかりの顧客の来店が期待出来るため、取得したデータから新規顧客層の開拓につなぐことも出来るのだ。
プライバシーへの不安についても対策がなされている。来店客には店舗の入り口で個人情報の取り扱いについての説明を表示し、開発元の問い合わせ先も公表、画像は分析終了時にサーバーから削除される。

改めて見えてきた実店舗とオンラインの違い

このような顧客の動きがリアルタイムで分かるデータは珍しく、データを提供するだけでは使い道が分かりづらい問題があったと松田さんは語る。そのため「PiCaZo Pop!」では、 ブランド立ち上げ支援等の経験のある社員がコンサルタントとしてデータ分析のサポートを行い、今後の顧客満足度向上に繋がるように支援を行うという。
今回の出店では4つのブランドが参加しているが、共通して「PiCaZo Pop!」におけるデータ取得により、オンライン/オンライン両方での顧客満足度を向上させることに関心を持っていたという。 特に消費者の方とのタッチポイントを増やし、新しい接点を作ることが目的の「PiCaZo Pop!」にとっては、伝えたいコンテンツや世界観が充実しているショップと相性が良いと考え、そのようなショップに声をかけて今回の出店に至ったのだという。
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