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2022.02.28

オートクチュールの魅力を伝える「昭和ビンテージ洋品店 異次元店」

昭和の令嬢たちが着用した衣服を扱う昭和ビンテージ洋品店 スミックス。後世に職人の技術と持ち主の思いを伝えるという考えのもと、商品の販売だけでなくテレビドラマなどの衣装協力も行っている。
これまでリアルイベントを中心に活動を行っていたが、コロナ禍の影響を受けてバーチャルショッピングを可能にした「昭和ビンテージ洋品店 異次元店」をオープンした。昭和の魅力を伝えるために、DX化に際してどのような課題や工夫があったのか。今回、ダブルエスワールド代表の大西さんにお話を伺った。

バーチャル店舗「昭和ビンテージ洋品店 異次元店」

昭和ビンテージ洋品店 スミックスは、昭和20年代から40年代に当時の令嬢たちが着用した洋服を紹介するお店である。彼女たちが着用していた昭和ビンテージ®︎は、当時の職人が技術を余すことなく込めた国産の高級仕立服(オートクチュール)であり、ひとつひとつに物語がある。元の持ち主が大切にしてきた想いを受け継ぎ、当時の日本の高度な職人技術を芸術作品として取り扱い、次の担い手に繋ぐ役目を担うという目的があるそうだ。
その昭和ビンテージ洋品店 スミックスが、今回バーチャル空間に出店をした。それが「昭和ビンテージ洋品店 異次元店」である。最新の3D技術を用いることで、あらゆる角度から忠実に再現した質感や手触りを楽しめるバーチャルショッピングが可能となっている。
実際にサイトにアクセスすると、博物館のような高級感のある店内を自由に歩き回ることができる仕様になっている。リアル店舗と同じように、洋服を手にとって見ることができるだけでなく、町子というCGキャラクターが店員として対応をしてくれる。
このような取り組みの背景には、コロナ禍の影響によるビジネスモデルの転換が必要だったことがあるという。当初はリアルイベントによって収益を上げるモデルであったが、コロナ禍もありリアルでの販売が難しくなっていた。そこで代表の大西さんは、今回取り組まれたバーチャル店舗の出店を思いついたが、初めは誰も取り合ってくれなかったという。しかし、専門家と根気強く話を進めていく中で、福岡市が「福岡市中小企業等デジタルトランスフォーメーション促進モデル事業」としてサポートをしてくれる機会を手にした。

昭和ビンテージ博物館を実現するデジタル技術

大西さんは「昭和ビンテージ洋品店 異次元店」を、昭和ビンテージ博物館を実現したようなデザインとなっていると語ってくださった。その細部には様々なこだわりがあり、また最新の3D技術がふんだんに用いられている。博物館に例えられるバーチャル空間は、新宿伊勢丹のバーチャルショップを手掛けたCGworks社に空間制作を依頼し、こだわりを見事デザインに反映したとのこと。そこに展示される商品は一味違ったものが置かれている。
「元々の持ち主の物語がしっかりとあり、当店が保有しているお品の中でも特に昭和職人の高度な技術が詰まっている作品、また、今ではなかなか見ることのできない希少性の高い生地やデザインのものを厳選しております。」
こうしたプロダクトは1点物であるため、従来のようにCGによる商品デザインを用いることはできなかった。そこで、課題であったCGや一般的な画像では伝えづらい部分をよりリアルに伝えるために、展示される商品を1点1点をスキャンすることで対応した。
実際に行うスキャン技術も、通常のフォトグラメトリよりも簡単・低コストでかつ、iPhoneで手軽に行う事ができ、商品の生地を細部にわたり3Dスキャン可能なSTEAMPUNK DIGITAL社(所在地:福岡県福岡市/代表:Aaron Hilton)のMonocle Primeを採用したとのこと。それにより、スキャン作業の内製化も可能となった。
昨今、多くの企業が対人の接触機会を減らすような経営への転換を迫られているが、バーチャル技術やAIによる接客などの先端技術が浸透したことで、今後、効率的に顧客に価値を提供することができるようになるだろう、という期待を大西さんは語ってくださった。確かに、今回、昭和ビンテージ洋品店 スミックスがDX化を実現させたことで、他の企業にとって1つのモデルになりうるものだろう。

ビンテージプロダクトの未来

昭和ビンテージ洋品店 スミックスは、いま無くなろうとしている昭和の高度な縫製技術を守り、皆様に知っていただくというミッションがあるという。実際に、POPUPイベントに来場されるお客さまからも「こんな素晴らしいものを見せてくれてありがとう」というポジティブな反応が多くあるそうだ。
「将来、昭和ビンテージ博物館を建てることで、昭和の日本経済を支えてきた職人へオマージュを捧げたい。そして、今もたくさんのお問い合わせをいただいている持ち主の、思い出と気持ちをこれからもずっと救っていきます」という思いが、今後どのようなサービスとなって実現していくのか、楽しみである。
#Virtual Reality
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