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2022.08.12

デジタルファッションの可能性: カーボンニュートラルを目指すUNDERLINEの取り組み

メタバースやNFTが広まりを見せるなか、デジタル空間におけるファッションアイテムが登場するようになった。自分たちのアバターに好きな洋服を着せて、現実さながらにファッションを楽しむというものだ。
そのなかで、現実世界の私たちが身につけられる「物理的な商品が存在しないデジタルオンリーのスニーカー」を開発した会社がある。それがCarbon Sink Sneakerを発表したUNDERLINEだ。しかも、このシューズを購入すると、地球上のCO2の「吸収」にも貢献できるという。
今回、同社の代表である尾形拓海さんに、会社のコンセプトや製品の狙いだけでなく、デジタルファッションの展望についても伺った。

カーボンニュートラルにむけて

尾形さんは元々ファッション産業の環境問題に強い関心があり、近年のメタバースが盛り上がりを見せているなかで「デジタルファッション」に出会った。メタバースでは自分のアバターを自由に着せ替えすることができるが、「物理的なアイテムが存在しないデジタルオンリーのファッションという概念自体が非常に新鮮で、衝撃的でした」と当時を振り返る。
そのとき、デジタルファッションとCO2削減を両立させることで、新たなサステナビリティの常識を作り上げることができるのではないかと考えて、同社を設立した。
ファッション産業が環境に与える影響は深刻なものとなっている。よく言われているように、環境破壊の第2位にファッション産業が位置する。年間21億トンのCO2が排出されており1、そのうち93%が生地の製造過程で排出される2。2050年までに衣服の消費量が現在の3倍になるとの試算もあり、早急な対策が課題となっている。
もちろん、環境への配慮はファッション産業に限ったことではない。世界でもすでにさまざまな取り組みがなされており、2015年のパリ協定では世界の平均気温の上昇を抑えること、日本では2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを実現すること」が宣言されている。
では、私たちはこのカーボンニュートラルを達成するために、何ができるだろうか。衣服を身に纏う以上、どれだけサステナブルな製品を選んだとしても、その生産と流通過程で一定のCO2排出を避けることはできない。とはいえ、下図が示すように、さまざまなブランドがサステナブルを前面に出していけば、CO2の排出量は減少する。
それでも残ってしまうCO2の排出を相殺するために、尾形さんはCO2の吸収量を増加させることに注目した(左図:白の点線部)。そこで購入代金をカメルーンのカカオ植林の共同出資金とすることで、1足につき11kgのCO2の吸収に貢献できる仕組みを作った。購入者には出資の証明として、植林した木の写真と位置情報を記録したレポートが送られる。

デジタルオンリーのファッション

デジタルアイテムは生地の製造が不要なため、課題であったCO2排出を抑えることができる。くわえて興味深いことに、アメリカの消費者データではクローゼットの3分の1は1度も着ていないか、1年以上着ていない服に占領されている3。それゆえ「服を着ないのであれば、デジタルアイテムのフィッティング写真で代替可能ではないか」と尾形さんは語る。サステナビリティの意識が高い消費者ならば、デジタルオンリーのアイテムでも価値を感じることができると考えたのだ。
「ファッションがデジタルオンリーになると、服の製造や輸送は不要になるため環境に優しく、かつファッションの楽しさをそのまま味わうことができます。他方で、物理的な服を買うときは、高価でも上質で長く着ることができ、サプライチェーンも環境に優しいものだけを買うということができるはずです。」
こうした考えから、Carbon Sink Sneakerは誕生した。
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#Virtual Fitting
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