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2023.06.30

「Z世代」から、ファッションと社会の関係を考える(竹田ダニエル)

アメリカに在住するZ世代の当事者という立場で、アメリカのZ世代と現代社会を描いて注目を集めたエッセイ『世界と私のAtоZ』(講談社)。今回、その著者であるライターの竹田ダニエルさんに、同書の第10章「私にとってのファッショントレンド」をベースに、そもそも世代論をどう考えるべきか、Z世代においてファッションはどのような意味を持っているのか、さらにファッションと社会の関係性まで伺った。

日本における「Z世代」という用語の問題点

はじめに、竹田さんは現在もアメリカに在住していますが、アメリカと日本における「世代論」や「Z世代」に対して、どのような印象を持っていますか。
「世代論」に関して言うと、アメリカの世代論では、ブーマー世代(1946年~1964年の間に生まれた人)、X世代(1965~1979、あるいは1980年の間に生まれた人)、ミレニアル世代(1981年~1994あるいは1996年の間に生まれた人)、そしてZ世代(1990年代中頃から2000年代の間に生まれた人)と、それぞれの世代が、親世代からどういう影響を受けたのか、その世代がどういう社会で育ったのかが分析されてきた上で、「Z世代」についてもさまざまな議論がされています[1]
しかし、日本の「Z世代」という用語は、ミレニアル世代やX世代、ブーマー世代といった世代の連続性や相互への影響を考慮しないまま、単体のものとして急に出てきた印象があります。
つまり、マーケターや広告代理店の人たちが、若者に物を売るために「Z世代ってこうだよ」「マーケティング的にこうだよ」と説明する際のバズワードとして、唐突に出現したように感じてしまう人も多いと思います。そのため日本における「Z世代」は、歪んだ形でくくられてしまっていると思います。
私は、世代を一つの言葉でくくることの意義は、「ある年代に生まれた人たちは、こういう社会の変化を受けているから、こういう新たな価値観を持ちうる」という形で、あくまで特定の世代の「傾向」を考える際の手助けになるからだと考えています。
しかし、日本では「Z世代」という言葉は「真空から出てきた言葉」であり、単に若者という言葉の「代理ワード」として使われてしまっていると感じます。
そのなかで、竹田さんは「Z世代はこういう人だ」と、ステレオタイプな印象を与えないように、丁寧な議論をされていると思います。それを踏まえて「Z世代」という世代論を通して、どのようなことを考えたいと思ったのでしょうか。
私が本来興味を持っていたのは、Z世代単体についてではなく「Z世代のトレンドから見える社会」、つまりZ世代を取り巻く政治や経済の問題から、今の世の中について考えることでした。
その意味で、日本の「Z世代論」の多くは、「社会の観点」がかなり抜けているように思います。「今の大人が、今の若者を知るための本」として書かれている傾向が強いです。
だからこそ、Z世代当事者は「おじさんたちにレッテルを貼られている」と思ってしまうし、「そんな軽率なくくられ方をされたくない」と考えています。
社会の変化の話ではなくて、「今このSNSがあるからこういう行動をしている」とか「今こういうインフルエンサーが流行っているから、こういうものが次に流行る」というように、「今の部分」しか語られていません。
そもそも日本では、日本のZ世代とアメリカのZ世代を、同じ年代に生まれた人として扱っています。しかし、アメリカと日本では、それ以外の世代のくくり方や用語は異なる部分が多く、用語が同じでも時期が異なるケースもあります。
たとえばアメリカの「ブーマー世代」は日本の「ベビーブーマー世代」と違う年代でくくられますし、そもそもグローバル化が進んでいるとはいえ別の国なので、そこから受ける社会の影響も日本とアメリカではかなり違いますよね。
それにもかかわらず、なぜかZ世代という用語だけが、アメリカと同じ定義で使用されていることには違和感があります。
本書では、基本的にアメリカのZ世代の話しかしていません。それを踏まえて、読んでくれた方がそれぞれの視点で、Z世代や今の社会について考えてもらえればいいなと思っています。
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