Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo
2024.05.10

木更津から発信する、ヤンキーファッションの軌跡とファンクな魅力

「木更津」と聞くと、どのようなイメージが湧くだろう。
今では、アウトレットといった商業施設などの印象が強いが、木更津は人気アーティスト・氣志團が結成された街でもあり、2002年に放送された人気ドラマ『木更津キャッツアイ』の舞台でもある街だ。
千葉県出身ではなくても、どこか「木更津」という街に親しみが湧いてしまうのは、きっと筆者だけはないだろう。
そんな木更津市に、老舗メンズ洋服店「あさひや木更津(以下、あさひや)」は店を構える。デパートや大型チェーンストアがメインの現在では、路面店のメンズ洋品店というのは、かなり珍しい。
潮風と太陽とヤンキーの街・木更津からワクワクするような商品を届けたいと謳っている「あさひや」はどのような店舗なのか。今回、直接店舗でお話を伺った。

奥が深い、木更津と 「あさひや」の歴史

知る人ぞ知る、ヤンキーショップ「あさひや」。創業は明治39年と古く、100年以上の歴史を持つ。
   
当初は、国鉄工事の関係で、主に作業服や足袋などを中心に販売していたという。
創業当時の「あさひや」は古地図にも載っており、店舗の場所に朝日がよく照ることから「あさひや」という屋号になったという。
戦後からは、時代の移り変わりとともに輸入デニムやスカジャン、スーツなどのアイテムを取り扱うようになり、徐々にメンズ洋品店にシフトしていった。   
一体いつ頃から、「あさひや」はご当地密着のヤンキーショップと認知されるようになっていったのだろうか。
「ちょうど70年代後半〜80年代頃になりますね。今みたいに各学校で制服が違うということもなかったので、『あさひや』もドカン、ボンタンなどといった変形学生服を取り扱っていました。学ランはやっていなくて、ズボンだけメーカーに頼んでオリジナルで作っていました。
また同時に、メンズのカジュアルウエアも取り扱うようになって。その頃から、やんちゃなイメージがお店についたのかもしれません」
現在では取り扱っていないが、当時の「あさひや」では、既製品をS・M・Lとサイズ展開することで、多くの学生からの支持を得ていたという。
もともと木更津市は学校が多いが、少子化になる前は1つの学年に現在の倍の学生が在籍していたということを考えると、「あさひや」の変形学生服が一気に広まったのは頷ける。
当時は近隣の学生たちにとって、木更津が唯一の遊びに来る場所だったというのも理由のひとつにあるだろう。
また、「あさひや」は氣志團・綾小路 翔も常連のお店でもあり、度々メディアで紹介されたこともフックになったという。
「あさひやとしては、ヤンキーショップという認識は、今まで特に感じたことはなく(笑)。テレビなどの紹介で、次第に世間に広まっていった感じですね」
店内を見渡すと、壁にかけてある「鯉口」が一際存在感を放っている。
鯉口は、作業などをするとき、着物が汚れるのを防ぐために上に着る、袖口の小さい筒袖の上っ張りと言われている服だ。袖(そで)が鯉の口のようにすぼまっていることから、「鯉口」と呼ばれている。一般的に馴染みがなくても、お祭りや屋台などで鯉口を着ている人を一度は見かけたことはあるだろう。
「鯉口は、俳優の寺島進さんが着ているような『漢』のイメージがあるかもしれないですが、4、5年前くらいから氣志團万博のフェスに鯉口を着ていくと目立つといった理由で、最近では女の子も買ってくれるようになりました。
コロナ明けでお祭りが去年から再開して、鯉口もかなり品が動いたので、今年は早々に揃えています」

意外なイメージだった90年代のガルフィーと華々しいメンズアイテム

現在では、ストリートファッションとして若者に人気のガルフィーだが、ひと昔前ではアウトローなイメージが強かった。しかし、あさひやが抱くガルフィーのイメージというと、世間一般のそれとは少し違う。
1 / 2 ページ
この記事をシェアする