機能的かつ洗練されたデザインが国内外で称賛されるブランド「
meanswhile(ミーンズワイル)」。昨年9月、ブランド10周年を迎えるシーズンのために行われた2024SSランウェイショーでも多くの評判を呼んだ。
今回は創業者にしてデザイナーの藤崎尚大さんに、ブランドスタートから今シーズンのアイテムのことまでお話を伺った。
日常着である以上、服は衣装ではなく道具である
「アパレル会社2社で生産管理などの仕事をしていて、会社勤めをしながら自分が使いたいバックパックを作ろうと思い、ずっとデザインをしていました。3年ほどかけて、それが完成したときに自分の中で『いいものができた、これならブランドとして挑戦できる』と思ったのが立ち上げのきっかけです。そのアイテムは『Outside(アウトサイド)』という名前で、いまでもmeanswhileにとって重要なアイテムになっています。
このOutsideを作った理由を言語化したものが、『日常着である以上、服は衣装ではなく道具である』というブランドコンセプトへつながっていくのですが、アウトドアのプロダクトを見るとアクティビティや内容によってその都度バッグを使い分けるので、いくつもの種類を持たなくてはならない。
『それがいい姿なのか!?』ということをずっと考えていて、ひとつベースとなるバッグに用途に応じた他のパーツを足していけるものがあるといいのかなと考え、デザインに取り組みました」
ブランドのアイデンティティOutsideを徹底解剖
このOutsideのギミックを一つひとつ詳しく見ていこう。「バックパックの外に後付けで足していけるという意味でネーミングしました。素材などを変えたり、新しいアイディアを入れたり、アップデートしながら有りあけているアイテムなのですが、アップデートにまた3年ほど費やしたので、途中リリースしていない時期もありました。
今シーズンリリースするコーデュラナイ ロンと超高強度のポリエチレン『UltraWeave™(ウルトラウィーブ)』という素材を組み合わせたモデルを紹介させてもらいます。
Outsideは容量を拡張できるというというのが最大の特徴で、ベースのバックパックにウエストバッグ、ヒップバッグが後付けできるようになっています。
バックパックのディテールは登山用のものがモチーフになっています。バッグ下部がシェイプされているのですが、従来のバックパックは、荷物を入れたときに重いものが下にたまって重心が落ちてしまうので、それを防ぐためのディテールになっています。
その削れた部分にウエストバッグを取り付けて容量を拡張できて、さらにウエスト部分を拡張するヒップバッグも取り付けられるようになっています。ウエストバッグもヒップバッグも、それ単体でも使えるようになっています」
「本体上部の縦型のポケット部分は使わないときはコンプレッション(圧縮)できるようになっており、メインポケットの他に、上部からPCポケットにダイレクトにアクセスできる仕様になっています。
パーツ類もあまり見ないようなジグザグ型のものを使うなどしているのですが、これは圧迫しすぎないようにバンパーのような役目を果たすものです。日本では手に入らないので、こういった付属品は海外で探してきたりしています」
バックパックから始まり、服作りに取り組むにあたり、デザインワークで大切にしていることを藤崎さんに引き続き伺っていこう。
「デザインに取り掛かるときに最初に意識するのは、目標設定というか、ゴール設定をすることです。そこに向かうための道筋がデザインだと思っています。
たとえば機能のゴールを決めて直線的な道筋を辿ると、スポーツやアウトドアブランド同様のディテールになっていくと思います。速く走るための靴ならスポーツブランドがテクノロジーを使って同じ目標のものを出していると思うのですが、デザインアプローチを迂回する道を辿ることで見え方が変わってくると考えていて、辿る道筋が変わることで、素材や縫製で機能は担保された状態でデザインとして違うものになっていくというものを意識して取り組んでいます。
また、デザインの手法について、足し算、引き算という言葉をよく聞くと思うのですが、ものとして要素を引いていってシンプルにしていく引き算のデザインというのが良いものとされていると思います。meanswhileでは掛け算のデザインというものを意識しています。もともとは2つの要素を1つのディテールに収めることで、1×1=1、ディテールは増やさずに2つの機能をデザインするということを意識しています」