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文化服装学院が「バーチャルファッションコース」を新設した理由と、今後目指すファッション教育とは

特集「ファッションテックと教育」の第2回は、これまでファッション業界に30万人以上の卒業生を輩出し、今年で創立100周年を迎えたファッションスクールである文化服装学院の取り組みを紹介する。
文化服装学院は、1923年に日本で初めて服飾教育の学校として認可されると、業界の成長・発展と連携しながら、日本を代表するファッション専門の教育機関としての地位を築いてきた。
1970年代から現在に至るまで、髙田賢三、コシノジュンコ、山本耀司、高橋盾、NIGO®、皆川明、阿部潤一、落合宏理、熊切秀典、宮前義之、岩井良太、森川拓野など、さまざまなデザイナーが活躍している。
そんなファッションの伝統校が、ファッション工科専門課程のアパレル技術科3年次に学ぶコースとして、2024年に「バーチャルファッションコース」を新設する。最新のデジタルスキルやテクノロジーを専門とした教育で、ファッション業界にとどまることなく活躍する3Dモデリストの育成を目的としているという。
そこで今回、なぜバーチャルファッションコースを開設するに至ったのか、その目的や狙い、今後の展開などについて、文化服装学院 学院長の相原幸子さんと、同コースを立ち上げた文化服装学院 専任講師の徳岡慧さんに話を伺った。

ファッションテックに取り組むことになった経緯

文化服装学院のファッションテック教育は、2019年に文部科学省からの委託を受けて、次世代型のファッション教育を推進する事業「ファッション分野におけるSociety5.0時代を見据えたモデルカリキュラム開発プロジェクト」から始まった。
その関連事業として「Fashion Tech Seminar 2020」を開催するなど、ファッション業界のDX化が高い関心を集めるなか、ファッションテックに着目した新たな教育モデルを開発する取り組みを行ったのだ。
それまでも、学内ではファッション教育においてテクノロジーを活用していきたいと考えていた。そうしたなかで、この事業に若い教員が参加したことから、ファッションテックに対する機運が高まったと、相原さんは明かす。
「今回のコース新設に先立って、2021年にファッション流通科の2年次選択コースとして『ファッションプロモーションコース』を立ち上げました。既存の服飾教育とは異なり、デジタルメディアを活用したプロモーション力を習得するコースとなっています。
事業に参加した教員たち  が『これからのファッション業界においてデジタルメディアが重要になる』と、主張したことが、きっかけです。
その熱意を汲んで、いざ立ち上げると100名近い学生の希望が殺到し、当初は1クラスでスタートしたのですが、2クラスに増やすことになりました。
それを踏まえて、ファッション工科専門課程の徳岡先生も『バーチャルファッションコースが必要である』と私に直訴するとともに、自ら専門性を高めるために学校へ通うなどして準備を重ねておりました」
徳岡さんは、文化服装学院を卒業後、企業でパタンナーとして活躍したのち、母校に戻り教員となって10年。もともとの専門としてはパターンメイキングや洋裁が中心であったが、ファッション業界における3D活用の広がりを目にしたことで、「自分もこのまま洋裁だけをやっていていいのか」という疑問が生まれたという。
「6年ほど前から世の中で3Dを目にするようになり、最初は『3Dってカッコいいな』という程度の印象だったのですが、いざCLOに触れてみると、近い将来にアパレルのプロダクトを作る過程に絶対に必要なツールだと実感しました。そこで、独学で勉強をはじめました。
その後、同期の教員たちと研究グループを作り、学内で研究成果を発表したり、数年前からは学生に単発の講義として伝えたりするようになりました。
そうしたなかで、3Dをめぐるファッション業界の流れが劇的に変わってきたことを背景に、ファッションの変革に対応する3Dモデリストを育成すべきであると学校側も考えるようになりました。そして、2年前の夏、バーチャルファッションコースの設立を相原学院長から直接打診していただきました」
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