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ファッション教育は「実践」がすべてーー最新のAI活用だけではなく、教養との融合を目指すPIIF

特集「ファッションテックと教育」の第3回は、日本で唯一の「ファッション」と「ビジネス」に特化した専門職大学である、「国際ファッション専門職大学(以下、PIIF)」の取り組みをお伝えする。
2019年、55 年ぶりに国が作る新しい大学制度として「専門職大学/専門職短期大学」が誕生した。これらは従来の大学とは異なり、ある職業のプロフェッショナルになるために必要となる「実践的スキル」と「知識・理論」を身につける、職業教育に特化した大学のことだ。
PIIFも同年に開校し、「従来のファッションデザイナーではなく『クリエイション』と『ビジネス』で世界に変革をもたらす人」を育てるとしている。
これまでの大学や専門学校とは異なるポジションから教育を実践しているPIIFは、ファッション教育においてテクノロジーをどのように位置付けているのだろうか。
そこで今回、PIIF国際ファッション学部の学部長である永澤陽一教授と、株式会社ニューロープ代表でもある同学部の酒井聡准教授に、教育の方針から具体的な授業内容、今後育成したい人材についてまで、話を伺った。

コロナ禍をきっかけに教育方針を転換

PIIFは開校以来、学生に対してテクノロジー活用に関する基礎的な講義や、ツールの使用に関する学習の機会を積極的に提供していた。
しかし、コロナ禍をきっかけに、すぐに教育の見直しを図ることになったと永澤教授は語る。
「それまでは、ファッションとテクノロジーについて考えてみると、ECに関する講義であったり、Photoshopやillustratorの使い方を学んで画像を制作したり、プレゼン資料を制作したりする程度にとどまっていました。
しかし、コロナ禍における、ファッション業界にとどまらない日本社会全体の変化を踏まえて、今後はAIをはじめとするテクノロジーを積極的に取り入れて、使いこなせる人材を生み出すことを目指していこうと考えました。
AIを使いこなしている大学は、全国で十数%にすぎないとも言われています。そのなかで、私たちは専門職に特化していることに加え、実務家教員による教育を重視していることから、ファッションAIの開発・販売などに取り組んでいる酒井先生を招聘して、今年度から授業に取り組んでいただいています」
酒井准教授は、ニューロープの代表として、ファッションAIに特化した事業を展開している。「3月先、6月先、1年先のファッショントレンドを予測するAIトレンドブック」や「ファッションに特化したレコメンドエンジン」、「ファッションアイテムの画像解析技術」などを手掛けており、注目を集めている。

AIを活用した実践的な授業を展開

そんな酒井准教授は、具体的にどんな授業を行っているのだろうか。
「授業では、主にChatGPT、画像生成AIなどの活用方法や、データ分析、既存技術を組み合わせたマッシュアップ的なサービス企画、MVPに基づく仮説検証などを指導しています。
また、企業と連携した実践的な授業もあります。たとえば、企業から直接課題をいただいて、それに対する解決策を学生がプランニングして、プレゼンテーションをするという取り組みです。
そこでは、学生が画像生成AIを使ってプレゼンに必要なビジュアル要素を制作したり、ChatGPTを使ってコピーライティングを考えたりしています。
AIを活用するにあたって、どういうプロンプト(AIとの対話において、ユーザーが入力する質問や指示のこと)を入力すればよいのか、さらに、どんな法的なリスクを伴うのかも含めて学んでもらっています。
これらを踏まえて、最近では生成AIを中心とした最新サービスを開発しているOpenFashion社と協力して学内でコンペを開催しました。
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