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日本初のファッションテック専門スクール「東京ファッションテクノロジーラボ」が目指す、アナログとデジタル教育の融合

特集「ファッションテックと教育」の第1回は、日本初のファッションテックを学ぶ養成学校である「東京ファッションテクノロジーラボ(以下、TFL)」の取り組みをお伝えする。
TFLは、「変革期を迎えた国内ファッション産業をICTや最新のデジタルテクノロジーを活用して変えていく人材を育成することを目的」として、2017年の4月に開校された専門スクールだ。
ファッションテックという言葉が世の中に浸透する以前から、ファッションとテクノロジーを掛け合わせた教育に取り組んできた、先駆的な教育機関として知られている。
そこで今回、同校が設立された背景から、現在に至るまでの教育の変遷、課題や成果、今後の展開などについて、TFLの運営企業である株式会社FMB代表の市川雄司さんと、TFLのスクールディレクターの田中順子さん、そしてTFLと「ファッションデジタルツイン研究会」を発足し、日本の縫製技術のデータ化に取り組んでいるアズマ株式会社顧問の稲荷田征さんに話を伺った。

ファッションテック専門スクールを開校した背景

TFLは「ファッション革命〜ファッションテックを携え原宿から世界へ〜」をコンセプトに掲げ、市川さんが2016年8月に東京・原宿に設立し、2017年4月から開校した専門スクールだ。
バーチャルファッションデザイナーコース 時海萌さんの作品
バーチャルファッションデザイナーコース 時海萌さんの作品
もともと、市川さんはいくつものファッション関連企業で企画やデザイン、バイヤーとして活躍した後、母校であるバンタンで、13年にわたってファッション教育に携わっていた。
そうしたなかで、TFLを起業してファッションテック教育の道に進んだ背景には、2015年に東京で開催されたグローバルイベント 「デコーデッド・ファッション」と、自らの問題意識がつながったことにあったと語る。
「私は長年教育に携わってきたなかで、欧米と比較して日本のファッション教育の遅れを感じていました。
特にバブル崩壊以降、デザイナーがなかなか海外で活躍できないことに加え、いわゆるファッションDXも遅れており、それを変革するためには新たな領域に切り込んでいく人材育成が必要だと感じていました。
そのなかで『デコーデッド・ファッション』に参加したことがきっかけで、アメリカなどではさまざまな業界とテクノロジーを掛け合わせたX-Tech(クロステック)の活動が盛んであること、当時日本国内でも徐々にスタートアップが新たな産業を興そうしていること、この両面からの潮流が生まれていることを知りました。
そこで、私自身もテクノロジーでファッション業界を変えたいと思い、TFLを立ち上げました」

教育方針の変化、2つの軸でコースを編成

当初は、テクノロジーを活用したファッション系スタートアップの起業やキャリアアップ、デザイナーの育成を主眼とした教育であったが、3DCGソフトが広がりを見せるなかで、TFLの教育方針に変化が生まれていったという。
「ファッション系で起業することはハードルがそれほど高くない事業であるため、初期はブランドビジネスを立ち上げるデザイナーや、流通ビジネスにおいて、仕入れて売るというプロセス自体を変えていける、サプライチェーンの変革を担える人材の輩出を大きな方向性として考えていました。
ただ、CLOなどファッションにおける3DCGツールに出会ったことから、3DCGを使って産業変革をしていく人材である3Dモデリストが必要であると感じ、デジタル時代の新しい職域・職能に対応するため、2019年に『バーチャルファッション学部』を新設しました。
そのため、現在ではスタートアップ創業と、3DCGモデリストという2つの軸でコースを編成し、教育を実施しています」

TFLにおける教育の特色

TFLは、18歳以上が入学可能だが、一般的な専門学校とは異なり、1年または半年間を中心とした短期集中型の専門スクールとなっている。そのため、基本的には社会人がキャリアアップや転職を目的として入学することが多い。
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