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2023.04.06

染め直し屋の福井プレスが仕掛ける産業廃棄物の循環サイクル

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これまで多くのファッション業界に携わる企業が、環境汚染の対策を講じてきた。そのなかでも、おもな取り組みがリサイクルだろう。いかに製造や廃棄のロスを少なくするかが鍵だった。
だが、リサイクルに関心を寄せるのは、何もアパレル企業や繊維業者だけではない。今回注目した株式会社福井プレスは、なんとクリーニングや染め直しを専門とする会社なのだ。そんな会社が提供する珈琲染めが産業廃棄物の循環につながるというのには、どんな仕組みがあるのだろうか。同社代表の福井伸さんに、その取り組みと理念について伺った。
PROFILE|プロフィール
福井 伸
福井 伸

1974年1月8日生まれ。全国チェーンのクリーニング店、染料ディーラーでのサラリーマン勤務を経て実家の家業を継ぐ、クリーニング工場と染工場を融合させた独自のスタイルで業界では稀なポジションを築いた。現在は新たな領域へ会社を変化させるべく奮闘中。

クリーニング屋から染色へ

どのような事業をされているのでしょうか。
当社はクリーニング屋を営んでおり、私が3代目になります。現在は染め直し屋としての事業も展開しています。
もともと私はサラリーマン時代に染色関連の会社に勤めておりまして、営業で工場を回っていました。そのときに、染色工場の機械と実家のクリーニング工場の機械が同じであることに気づいたのです。
当時は大きな染色工場がどんどん潰れていく時代でした。クリーニング業界も斜陽だったこともあり、2つの事業を同じ機械で展開できれば生き残れるのではないかと考えました。蓋を開けてみれば、これが大正解でした。
クリーニング屋を営んでいたことで、個人のお客さまに対応することには長けていましたし、染めた後もプレス仕上げまで社内で行うことができました。これは染め直し屋にとって大きなアドバンテージになっていると思います。

「ゼロエミッション」にむけた取り組み

珈琲染め」に取り組まれたきっかけを教えてください。
コロナ前に私の妹が東京で珈琲の焙煎を始めました。興味があって見に行くと、チャフという豆の薄皮が透明な容器にたまっていることに気づきました。直感的に、それを染料として煮出したら色素が出るのではないかと思いました。
当時は「本当に染められるかな」と軽い気持ちで持ち帰ったのですが、実際に煮出してみると、うまく染めることができました。それが珈琲染めの始まりです。
そこで当社のある大阪でチャフが手に入らないかと思い、周囲の珈琲屋さんを訪ねてみたところ、廃棄するだけだからということで簡単に譲っていただくことができました。
コロナの影響もあって、アパレル業界は従来の事業のあり方を見直しています。そこで、僕たちから何か手伝えることがないかと考え、積極的にアパレルさんにこうした廃棄物を使った染色を提案しています。
「ゼロエミッション」の全体の活動について教えてください。
「ゼロエミッション」という名前のとおり、産業廃棄物を資源として再利用して、廃棄をゼロにする取り組みになります。
当社では染料の原料としておもに珈琲のチャフを回収、再資源化していますが、ありがたいことにクラフトビール屋さんやワイナリーからも声をかけていただき、いまでは麦芽粕やブドウの木なども扱っています。
流れとしては、まず回収した廃棄物を煮出して、染料として使います。その後、煮出した残りかすを培土にしてキノコ栽培に利用し、キノコの収穫が終わったらそれらを「バイオコークス」という燃料にしていきます。
しかも、その「バイオコークス」を今度は珈琲の焙煎に使うということになれば、それは完全な資源の循環といえるでしょう。
一切の無駄がない循環が出来上がりますね。
これらは設計上の話でして、現在は単発でお話を頂いたときに染めからキノコ栽培まで作業をしている段階です。これを持続可能な事業として展開できるのかが、今後の課題になってきます。
ちょうどいま、自社ラボでのキノコ栽培実験が終わり、今月に正式なラボを設置する予定です。4年前に珈琲染めを始めたのですが、ようやく理想となる資源の循環が実現できるところまできました。
おそらく地域密着型の事業展開になるでしょう。すでに近所の珈琲屋さんからもお声をかけていただいているので、廃棄物をご提供いただいたお店にはキノコ栽培キットやバイオコークス、さらにはノベルティーなどでお返しができればと考えています。
その一環で、僕たちは「染食還」という自社ブランドを立ち上げました。上記の循環による製品を実際に自分たちでも作ったほうが、アパレルさんやお客様にも考えを伝えやすいのではないかと思ったのです。
コロナ禍で業界全体に閉塞感があったのですが、そこを打破できないかと思い、できることは全部やろうと社員一丸となって取り組んでいます。
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