2022.03.16

日本の伝統技術を織り込んだテキスタイルを世界へ:ZOZO NEXTによるSXSWへの挑戦

2022年3月にアメリカ・テキサス州で開催される世界最大級のテクノロジーの祭典「SXSW 2020」。今回、ZOZOグループにて新規事業創出やテクノロジーの研究開発を担う組織ZOZO NEXTがグループ初の試みとしてSXSWクリエイティブ・インダストリーズ・エキスポに出展する。「UNVEIL THE FUTURE OF FASHION TECHNOLOGY」をコンセプトに、テクノロジーが導くファッションの未来を紐解く本展示。そこで投げかけられるファッションをめぐる新たな体験や価値とは?

今回は、そのなかからテキスタイルブースを紹介。ZOZOグループ初のテキスタイル開発に挑む“Project Foil”で生み出された様々な作品は、2021年春に京都で開催された「Ambient Weaving ── 環境と織物」で展示されたが、今回は新たな作品を加えての海外初披露。その概要や期待について、このプロジェクトを率いる東京大学大学院 情報学環の筧 康明准教授、ZOZO NEXT・MATRIXの中丸 啓の両名にインタビューを行った。(2022年2月24日オンラインにて収録)

PROFILE|プロフィール
筧 康明

インタラクティブメディア研究者、アーティスト。東京大学大学院情報学環准教授。博士(学際情報学)。 物理素材特性を活かすインタラクティブメディアの研究を軸に、Ars Electronica等国内外で作品展示を展開する。科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞、第23回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞等を受賞。 https://xlab.iii.u-tokyo.ac.jp/

PROFILE|プロフィール
中丸 啓

研究者、ZOZOテクノロジーズ新規技術開発とその事業化を行うMATRIX部門に所属。博士(政策・メディア)。柔らかな機能性素材やデバイスの開発と、それらを活用したインタラクション・UX設計を専門とする。論文や特許など技術領域を軸に、Ars Electronica Festival等での作品展示も展開する。ACM DIS 2019 Best Paperなどを受賞。

新たなEL作品を含むテキスタイルを展示

まず、SXSWのテキスタイルブースでの出展作品について教えてください。特に「Ambient Weaving ── 環境と織物」からアップデートした初披露となる作品があると聞いています。

今回は大きく3点の作品を展示します。2021年にHOSOO GALLERYで行った共同成果展示「Ambient Weaving ── 環境と織物」から、ひとつは「Wave of Warmth」というロイコ染料を用いた色が変わる生地の作品です。ふたつめが「Drifting Colors」という、布の中を色素の入った水が染み込んでいくことによって、常に色が変わるという作品です。今回は展示方法が異なり、HOSOO GALLERYでは大きな池のようなものをつくって、そこから布に色水を吸い上げましたが、今回は天井から大きな布を吊って、上から下へと布の中に色が伝って常に動的に変化し続ける柄を生成する新作インタレーションを用意しています。

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もうひとつが、「Woven Glow」というELが折り込まれた作品です。前回は150cmぐらいの大きさでしたが、今回は4.8mと大きなものとなり、3色のELスリットが織り込まれたフルカラーになっています。点灯パターンも音に連動する形で新しくプログラムしなおしたインスタレーションとなっています。

中丸

まさに今、こちらを制作中です。この作品には制作パートナーとして、前回と同様に日本触媒様に協力いただいています。前回は赤単色での発光だったのですが、今回は赤・青・緑の3色での発光となることに加えて、ELスリットの本数も増やしています。織りは細尾チームと協力し、回路はIMG SRC様が前回よりもスケールが大きいものを動かすということで、新たに回路基盤から起こして制作しています。

また、今回は3色が混ざっているため、見せ方によって単なる3色というよりは、混ざって多様な色合いに見えたりと表現の幅が広がっています。そこは筧先生たちの力をお借りして、調整を進めているところです。

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日本の伝統技術への反応を期待

初の国外披露となりますが、その狙いや期待する反応を教えてください。
中丸

まずZOZO NEXTとしては、昨年国内で開催された「Ambient Weaving ── 環境と織物」がテクノロジーだけではなく、空間の設計やコンテクストの伝え方を含めて非常に評判が良かったので、さらなる展開に期待しています。昨年の展示にも多くの方にご来場いただきましたが、特に織り物が好きな方々が見に来るパターンが多く、「こういうところに使ってみたい」といった声があったり、実際にサンプルのお問い合わせがあったりと、次に繋がっていくような反応をいただきました。

ただ、海外の方々のリアクションは正直未知数なところもあります。特に、今回は日本の織りの文化を持ち込んだプロジェクトですので、日本よりも反応が大きい可能性もあるかもしれないと、非常に期待しています。国内外を問わず、たくさんの方々に新たに見ていただきたいというのが今の最大のモチベーションです。

SXSWというイベントの半分の軸は音楽ですよね、あとはアートに新たなテクノロジーがあると。通常はスマートスタイルというと、何かデバイスを添えて、何かをセンシングします、光りますという機能性に着目したものが一般的ですが、「Ambient Weaving ── 環境と織物」では全く異なるアプローチをしていますので、日本の伝統文化の美が素材レベルから先端技術と絡まり、どのようにアップデート可能かという我々の取り組みがSXSWのコミュニティにどのように届くのかという点がチャレンジの一つになると感じています。

一方で、いわゆるファッションテックの領域のプレイヤーも集まる機会だと思うので、そういう方々にも、糸からつくっていくようなストイックなアプローチに対して技術的な側面からの反応も期待しています。

展示の見せ方、表現方法として意識して変更したところはありますか?

基本的な展示の見せ方は、昨年の「Ambient Weaving ── 環境と織物」を踏襲して展示に始まりと終わりがなく、環境との接続、循環といったコンセプトを意識したものとなっています。なので、SXSWの企業ブースとしては異色なものだとは思います。

一方で、HOSOO GALLERYの展示ではあまり見せなかった、プロトタイプや制作過程も今回は見せていきたいと考えています。材料やつくるプロセスなども含めて、うまく伝える工夫をしています。

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世の中に広めていく機会として

特に、どういった点を見てほしいと思いますか?
中丸

パッとみて“光る布”みたいな形で受け取られがちですが、今回の「Woven Glow」でも筧先生がライトを工夫して、本来の西陣織の良さを覆い隠すことのないように、環境のなかでの織物が振る舞いに気を付けながら、見せ方を設計しています。なので、テキスタイルそのものだけではなくて、世界観自体がメッセージとして伝わると嬉しいなと思います。

まず、こんな世界の状況の中でSXSWに多くの人と集まれることを楽しみにしています。僕らにとっても、すごく久しぶりに海外で発表する、物理的に展示をする機会ですので、まずそれを成功させたいですね。その上で、色々なパートナーやコラボレーターとこの挑戦を継続できたらいいなと思うので、新たなコネクションが築ければなと。

では最後に、SXSW出展を契機に、このプロジェクトの展開として期待していること、今後の展望をお聞きしたいと思います。
中丸

東京大学と株式会社 細尾と行っているプロジェクトは今も継続しており、新たな作品の研究開発はもちろん、これまでに制作した作品のアップデートも行っています。今回は「Woven Glow」がその成果のひとつとして公開されますが、それ以外にもまだ表には出していないアイデアもありますし、まだ踏み入れていない表現を新しくシーズベースから積み上げて試作するということを続けています。
一方で、プロジェクトとしてはどのように社会に出していくかも重要ですので、こういった展示会を通じて多くの方にリーチし、そこから自分たちが拾えていないアイデアをいただいたり、実際に使うこととなるユーザーの反応や要望を聞いたりといった、より商品に近いところのやり取りも開発のラインとして進めています。

現在はお客様の多様なリクエストに応えられるようにする技術開発と、それを安定供給できるための開発も研究と並行して進めております。今後も、こういったプロトタイプを見せる機会と、それを実装するための技術開発を両輪で進めていくプロジェクトになると思っています。

共同研究として新しい可能性を探る作業は、専門性を超えたチームとして引き続きやっていきたいと思っています。これまでの布の可能性を疑う試み、それをアップデートするような活動は今も継続しています。
一方で、世の中にどういう風に普及させていくかは大学だけで取り組みが難しいところがあり、そういう意味では細尾さんが手がけているようなホテルの内装や服、着物というような実際のプロダクトに落とし込んでいくこと、実際につくり込んでいくことを、このプロジェクトでもやっていきたいと思います。

それが大量生産になるのか、ある種の1点ものとして世の中に出ていくのかは色々な判断があるかと思いますが、いずれにせよ社会や生活の文脈に繋がるプロダクトという形に持っていきたいという意味での完成度を求めていきたいと思っています。そのためには、安定した供給ができる体制作りや、自動生産体制の構築など色々な要件はありますが、そういった製造要件を詰めつつも、アウトプットとしてはラディカルなものを引き続き出したい。そのために今も、試行錯誤を続けています。

#Smart Textile
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