Apple社の「Apple Vision Pro」は、私たちがSF映画で見たような未来を、少しずつ現実のものにしている。この新しいデバイスを使って、ファッションの買い物体験そのものを根本から変えようとする挑戦的なプロジェクトが進んでいる。
今回は前編に続き、空間デザインや3D商品モデル制作・開発を支えたプロジェクトチームにお話を聞き、ユーザーが心から楽しめるよう設計された、未来のショッピング体験の魅力とその裏側に迫った。
左から伴 潤、権 美愛、池上 夕貴PROFILE|プロフィール
伴 潤(ばん じゅん)
株式会社ZOZOにて、iOS領域に専門性をもつテックリードとしてZOZOTOWN iOSアプリの開発をリード。その後株式会社ZOZO NEXTのSkeuomorphic Engineeringチームにて、現実の質感をソフトウェア領域に持ち込むことを目指しつつ、visionOSアプリの開発に従事。
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権 美愛(こん みえ)
制作会社にて広告・Web制作を経験後、株式会社VASILYにてファッションアプリのデザインを担当。会社の合併・分割を経て、株式会社ZOZO NEXTに転籍。CIをはじめ、App/WebのUX・UI設計、Vision Proを含むXR領域の空間UI設計、各プロジェクト・プロダクトにおける社内デザイン全般の統括。
PROFILE|プロフィール
池上 夕貴(いけがみ ゆうき)
アパレルブランドにて企画やパタンナーを経験後、2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現:株式会社ZOZO NEXT)に入社。XR/AI部にてデジタルファッションやXR領域を扱うプロジェクトのPMや3Dデータ制作を担当。
コンセプトは「THE SPATIAL STORE」。空間全体でブランドを体験する
「THE SPATIAL STORE」エントランス空間はじめに、今回のアプリが目指したコンセプトを教えてください。
池上 私たちが目指したアプリのコンセプトは、「THE SPATIAL STORE」という言葉に集約されます 。その名の通り、バーチャル空間のなかに存在する、全く新しい形の店舗です。物理的な 制約がないからこそできる表現を追求し、ブランドの世界観を表現する特別な背景や、ブランドのコンセプトを感じてもらえるようなオープニングシーンを用意するなど、空間全体を使ってVision Proでしかできない体験価値を設計しています。権 デザインのコンセプトをひと言で表すのは難しいのですが、ブランドの世界観を表現しつつ、ユーザーがVision Proを使ってショッピングそのものを楽しめる、そんな理想の形を常に目指していました。
前回のプロジェクトでは一つの商品をじっくり見る体験が中心でしたが、今回はユーザー自身が操作できる機能が増えたため、より能動的に関われる体験にしたかったんです。