2022.10.06

シューズの未来はここにある!? アディダスが挑戦し続ける 3Dプリント技術を用いたソール開発

アディダスが蓄積してきたアスリートのデータと、独自かつ最新の3Dプリント技術を融合し、ランナーに新しいランニング体験を提供する「4DFWD(4Dフォワード)」。その最新コレクション「4Dフォワード2」が発売された。アディダスは何故、シューズのミッドソール作りに3Dプリント技術を活用しているのか、そして「4Dフォワード2」は前作からどのようなアップデートを遂げたのか。アディダス マーケティング事業本部 カテゴリープランニング シニアマネージャーの山口智久さんに話を聞いた。
 
少しアディダスと3Dプリント技術の歴史をおさらいしておこう。アディダスの3Dプリント技術を用いたシューズが初めて披露されたのは、2015年のこと。3Dプリントのランニングシューズ用ミッドソール「Futurecraft 3D(フューチャークラフト スリーディー)」が試作品として発表された。翌2016年には、「3D RUNNNER(スリーディー ランナー)」が商品化。ロンドン、ニューヨーク、東京の3都市にて足数限定で発売され、話題となった。

2017年アメリカの3Dプリンターメーカーのカーボン社とパートナーシップを締結したことで、3Dプリントを用いたシューズ開発が本格化していく。日本国内で初めて本格的に販売されたのが、2018年11月に登場した「ALPHAEDGE 4D(アルファエッジ フォーディー)」。「4Dフォワード」と同じく、Digital Light Synthesis(デジタルライト合成)テクノロジーを活用して開発されたもので、UV硬化ポリウレタン混合樹脂を光と酸素で固めて作り上げられている。

画像: 2018年に発売された「アルファエッジ 4D」。筆者私物
2018年に発売された「アルファエッジ 4D」。筆者私物

500万パターン以上の格子構造から選び抜かれた

そして前作「4DFWD」が登場したのが2021年6月だ。「4Dフォワード」と新作「4Dフォワード2」に採用されている4Dミッドソールは、共通のもので変更点はないそうだ。さまざまなテストと、アスリートから得られたデータをもとにしたチューニングを繰り返し、500万パターン以上の格子構造の中から選び抜かれたのが、ボウタイの形をした“FWD CELL(フォワード セル)”と呼ばれる格子。これが「4Dフォワード」の大きな特長である高い前方推進性を生むカギとなっている。

「3Dプリントで作るミッドソールは、部分によって硬度や密度が調整でき、前進することに最適なカタチにすることができます。一般的なフォーム素材では、垂直方向の衝撃に対して同方向に反発しますが、フォワード セルの場合、垂直方向の衝撃に対して前方に押し出すような反発を生み、それが自然な推進性に繋がっています。

テストでは、4Dミッドソールの推進性によってランニング時のステップを1分あたり6歩セーブできるというデータがあります。フルマラソンを4時間で走ったとすると、1440歩セーブできることになるので、省エネに貢献するテクノロジーだと言えると思います」

画像: 3Dプリント技術を駆使した革新的なシューズ。4Dフォワード2 29,700円
3Dプリント技術を駆使した革新的なシューズ。4Dフォワード2 29,700円
画像: ボウタイの形をした格子を組み合わせた4Dミッドソール
ボウタイの形をした格子を組み合わせた4Dミッドソール

前作からアッパーとアウトソールがアップデート

 「4Dフォワード2」の前作からのアップデートポイントは大きく2点。アウトソールがコンチネンタル アウトソールに変更され、アッパーはプライムニット+製だったものが、プライムニット+とエンジニアードメッシュを組み合わせたものになった。
 
「コンチネンタル アウトソールになったことでグリップ力が向上しています。特に雨で路面が濡れているときには、従来のものとの違いが感じられると思います。アッパーについてはプライムニット+のソックスのようにソフトに足を包むフィット感を残しながら、エンジニアードメッシュを使うことでサポート性を高めています。より走行性能が高くなったと言えると思います」

画像: 「4Dフォワード2」はグリップ力の高いコンチネンタル アウトソールを採用
「4Dフォワード2」はグリップ力の高いコンチネンタル アウトソールを採用
画像: アッパーはプライムニット+とエンンジニアードメッシュの組み合わせ
アッパーはプライムニット+とエンンジニアードメッシュの組み合わせ
画像: 「4Dフォワード2」(手前)と前作「4Dフォワード」(奥 ※筆者私物)
「4Dフォワード2」(手前)と前作「4Dフォワード」(奥 ※筆者私物)

アディダスにはライトストライク プロ、ブーストといった優れたフォーム素材があるが、並行して3Dプリント技術を活かした開発を続けている。そこにはどんな狙いがあるのだろうか。
 
「ランニングはとてもメジャーなスポーツで、競技人口が多く、そしてレベルに幅があります。レースでの自己記録更新を狙うランナーもいれば、ダイエットや健康維持のために走るランナーもいますし、趣味として楽しく走ることに重きを置くファンランナーもいます。それだけシューズに求める機能に多様性があることにもなります。

最先端の技術を活用し、着地衝撃を前進することにフォーカスしたミッドソールは、シューズにナチュラルな前進力を求めるランナーや、新しいギアやテクノロジーが好きなランナーのニーズに応えられるものだと思います。もちろん、さらに研究・開発が進めば、トップランナーがレースに履くシューズに応用される日が来るかもしれません」

3Dプリント技術が生むユニークな走り心地

 実際に「4Dフォワード2」に足を通すと、前作よりもアッパー全体のホールド感、サポート力が増しているのがわかる。コンチネンタル アウトソールのグリップ力も確かに高く、アッパーとアウトソールの相乗効果か、ミッドソールに変更がないにも関わらず、安定性が向上している印象で、前作よりも走りやすい。

そして、ぜひ読者の方にも一度体感してもらいたいのが、4Dミッドソールが生む独特の履き味。フォーム系のミッドソールを備えたシューズとは足裏の感覚が異なり、自分の走りに合わせて、ミッドソールが適切な形に姿を変えているような不思議な感覚がある。“ギア感”が強く、最先端のものを履いているという高揚感も出てくる。

画像: 前作よりもアッパーのサポート性が増し走りやすくなった
前作よりもアッパーのサポート性が増し走りやすくなった

日々のランを楽しいものにしてくれるだろうし、タウンユースしたくなる機能美も4Dフォワード2」の魅力だろう。
 
3Dプリント技術を活かしたミッドソール開発で、アディダスは抜きん出ている存在。データに基づいて構造をチューニングすることが容易で、通常のシューズよりも短いサイクルでテストシューズを作ることができるというから、今後の進化にも期待したい。

PROFILE|プロフィール
山口智久(やまぐち ともひさ)
山口智久(やまぐち ともひさ)

アディダス ジャパン株式会社 アディダス マーケティング事業本部 
カテゴリープランニング シニアマネージャー

2006年アディダス ジャパン株式会社入社。入社以来マーケティング本部プロダクト部門に在籍、10年以上にわたりスパイクやサッカー日本代表ユニフォームの企画開発に携わった後、2020年より現職にてランニングを中心とする全競技カテゴリーのプロダクト・プランニングを担当。ランニング中長期戦略プロジェクトチームリーダーも兼務。

Text by Fumihito Kouzu

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