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2024.07.02

“裸足に近い”ソールで怪我を軽減 アメリカのランシューブランド「ALTRA(アルトラ)」

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2009年にアメリカ・ユタ州で誕生した「ALTRA(アルトラ)」。つま先とかかとの高低差をなくした「ゼロドロップ」シューズの先駆者として知られるブランドだ。
現在はアメリカのトレイルランニング市場の27%を占め、ブランド売り上げの60%をランニングシューズが占めるなど、群雄割拠のランニング市場で急成長を続けている。
数多のスポーツブランドがしのぎを削るなか、なぜALTRAはここまで成長を遂げたのか。
創業者のひとり、ブライアン・ベックステッド氏に、これまでのランニングシューズとの違いや、そのメカニズムを語ってもらった。
PROFILE|プロフィール
ブライアン・ベックステッド(Brian Beckstead)
ブライアン・ベックステッド(Brian Beckstead)

ALTRA創業者
2009年に、ゴールデン・ハーパー氏と共に「ALTRA」を立ち上げる。

“裸足に近い”シューズが生まれた理由

元々、ご自身も陸上競技をされていたんですよね。
はい、12歳で陸上競技を始めて、高校まで続けていました。高校に入って初めてのクロスカントリー練習のときに出会ったのが、共同創設者のゴールデン・ハーパーです。
結局、私は疲労骨折など怪我が続き、大学では競技を続けることができませんでしたが、健康維持のために始めたトレイルランニングやウルトラマラソンにハマっていきました。
そして、私もゴールデンも、大学でランニングフォームと怪我に関する研究を行っていました。
トレイルランニングが趣味というブライアン氏
トレイルランニングが趣味というブライアン氏
お2人がブランドを創設したきっかけを教えてください。
私たちは卒業後、ゴールデンの父親の経営するランニングショップで働き始めたのですが、多くのお客様が足にトラブルを抱えていることが分かりました。話を聞くと、彼らのトラブルの多くは誤ったランニングフォームが原因だということが判明したのです。
そこで私たちは正しいランニングフォームを身につけてもらおうとレッスンを行いました。彼らには、分かりやすいように芝生の上を裸足で走ってもらって、正しいフォームを体感してもらいました。ところが芝の上では正しく走れていたのに、シューズを履いてアスファルトの上に立つと同じように走れない人がとても多かったんです。それを見て私たちは、フォームが崩れるのはシューズの構造に原因があるのではと考えました。
とはいえ、アスファルトやトレイルを裸足で走ることは現実的ではありません。裸足とシューズを履いた状態との違いを探るなか、ゴールデンが既存のランニングシューズのかかとをナイフで切り取って、つま先からかかとまでフラットなランニングシューズを自作して、試しに知人に履いてもらいました。すると、この靴がとても評判を呼び、多くの人が求めるようになったのです。
そこで私たちは、「このようなシューズを作れないか」といろいろなメーカーに提案をしました。ただ、これまでのシューズの常識からかけ離れていたのでしょう。どこからも良い返事をもらうことができなかったんです。「誰も作ってくれないのであれば、自分たちで作ろう」とブランドを立ち上げることにしました。製品ができるまでに約2年、プロトタイプを作るまでに5万ドル近くかかりました。

「ゼロドロップ」ソールのメリット

かかとが高いことによるデメリットを教えていただけますか?
こう考えてもらうと分かりやすいかもしれません。女性がハイヒールを履くと、重心を保とうとして、膝や腰、首などに負荷がかかりますよね。履き心地こそ違いますが、かかとの高いランニングシューズでも、同じような体勢になっていたり、負荷がかかっていたりするということです。
この負荷をどのように軽減するのか、私たちはランニングフォームと運動生理学に重点を置いて研究し、生まれたのが「ゼロドロップ」ソールです。
「ゼロドロップ」とはどういうソールでしょうか?
「かかとと前足部との高低差=ドロップ差」をゼロにしたソールのことです。既存のランニングシューズのようなクッション性はありながらも、裸足で走っているような体勢をキープできる、これまでのシューズと裸足との中間の靴だと思ってください。この靴を履くと体に負荷をかけない正しい走り方をすることができます。
ゼロドロップのソールはつま先とかかとの地面からの高さの比率が1:1になっている
ゼロドロップのソールはつま先とかかとの地面からの高さの比率が1:1になっている
なぜゼロドロップだと正しい走り方ができるのでしょうか?
かかとが高い靴の場合、かかとが地面に最初に接地しやすくなります。つまり「かかと着地=ヒールストライク」になりやすい。ところがゼロドロップシューズであれば、かかとが地面に引っかかることなく、足裏全体で着地をすることができるため、体に伝わる衝撃と圧力が軽減されるのです。
たとえば、かかと着地でジャンプをしてみてください。次に足裏全体着地でジャンプをしてみてください。どちらが体に衝撃があるか体感できるでしょう。足裏全体で着地をするというのは、体に負荷をかけない自然な走り方ということです。
ゼロドロップのソールは、足への負荷を軽減できるという
ゼロドロップのソールは、足への負荷を軽減できるという
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