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2024.05.14

20年以上の研究開発でたどり着いたメガネの「掛け心地の良さ」とは?:株式会社シャルマン

福井県鯖江市で、リベット鋲というメガネの部品製造から始まった株式会社シャルマン。現在はメガネフレームの製造工程の全般を一貫生産で行い、世界約100ヶ国に販売網を持つなど、その高い技術力が注目されている。なかでも、シャルマンを代表する理念が「掛け心地」の追求だ。
メガネを掛けている人なら、掛けている間にずれ落ちたり、耳当てが痛くなったりした経験があるだろう。だが、シャルマンのメガネはそうした不快感を抱かせないフレーム設計になっているという。そこには、長年の掛け心地の研究によって得られた素材や技術が隠されているようだ。
同社R&D室の方々にお話を伺い、シャルマンの掛け心地を実現する秘密を語っていただいた。
PROFILE|プロフィール
(右から)中村 浩(なかむら ひろし)/多田 弘幸(ただ ひろゆき)/井上 史朗(いのうえ しろう)/藤井 太一(ふじい たいち)
(右から)中村 浩(なかむら ひろし)/多田 弘幸(ただ ひろゆき)/井上 史朗(いのうえ しろう)/藤井 太一(ふじい たいち)

中村 浩(なかむら ひろし)
R&D室 技術開発課 マネージャー
レーザ微細接合開発担当

多田 弘幸(ただ ひろゆき)
R&D室 技術開発課 エキスパート
エクセレンスチタン開発担当

井上 史朗(いのうえ しろう)
R&D室 ゼネラルマネージャー

藤井 太一(ふじい たいち)
R&D室 商品開発課 リーダー
頭部形状研究開発担当

掛け心地が良い状態とは?

掛け心地の研究を始めた背景を教えてください。
藤井 1990年代にメガネの製造方針を議論する機会があったので、ユーザーからのアンケートを集めてみました。すると、「頭が圧迫されて痛い」「鼻や耳が痛い」というメガネのフィット性に関する意見が多くあったのです。そこを改善していけば、よりお客様に喜ばれるメガネができると考え、掛け心地の研究を始めることになりました。
素材や構造の見直しを行い、さまざまな形を作っては検討することを繰り返していたのですが、結局は実際に掛けたときの感覚であるため、頭部の形状を研究し、しっかりとしたデータに基づかなければならないという判断にいたりました。
当時、産業技術総合研究所が手や足といった人体の形状研究をしていたのを知っていましたので、頭部形状について相談したところ、世界的にも十分に研究がされていない分野だとわかり、共同研究を進めることになりました。
頭部研究を通してどんなことが判明しましたか?
藤井 従来のメガネフレームの形状は日本人の頭部に合っていなかったことです。メガネを掛ける際、まっすぐなメガネのテンプルで横から頭を挟み、締め付けてメガネを保持していたため、どうしても痛みを感じてしまいます。また、メガネ購入時にお顔に合わせた状態から、掛け外しをしていくうちにフレームが曲がってしまって、不快な思いをする人もいます。
3D計測で立体的なデータを得たことによって、頭部形状に沿って包み込むようにフィットさせるという、新しい発想のテンプルのアイデアが生まれました。またそうすることで、従来のように締め付けなくてもズレないこともわかりました。
つまり、掛け心地の良さには、フレームの耐久性を保ちながら、最小限の力で頭を圧迫することなく、頭部形状に沿って包み込むようにフィットさせることが大事だとわかったのです。
驚くべきフィット感とその軽さに、初めてシャルマンのメガネを掛ける方は感動すると思います。

開発に8年をかけたメガネのための素材

最高の掛け心地を実現するために、「エクセレンスチタン」を開発したようですね。
多田 「エクセレンスチタン」は、東北大学金属材料研究所の協力を得て、メガネのために作られた素材です。元々は、高い機能を持ちつつも、いろいろなデザインのメガネを作りたいという思いから開発が始まりました。例えば、純チタンだと柔らかく、強度を出すためには厚めのフレームになってしまうのです。
チタンを合金化すると、素晴らしい耐久性とバネ性を得ることができます。元素や配合比率によっては、形状記憶性を持たせることもできます。大きく曲げても型崩れしませんし、曲がってもレンズやユーザーの顔に対する負担は最小限に抑えられます。
また、チタン本来の特徴も引き継いでいますので、比重は軽く、耐蝕性が高いです。常に身につけるものですから、錆びてしまっては元も子もありませんからね。
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