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2023.04.14

はくだけで歩きたくなる! 「MoveSox(ムーブソックス)」の独自技術とは?

スポーツでも日常でも、ウェアでいちばん重要なのはベースレイヤー(肌着)の機能だ。ならば足元も、シューズ以上にソックスの機能が重要なのではないだろうか。そう思わせてくれる「MoveSox(ムーブソックス)」はすごい機能を備えたソックスだ。独特の縫製がもたらすアーチスパイラルの効果について、デサントジャパン株式会社で「ムーブソックス」開発に携わる菱川啓太さんに話を聞いた。

スパイラル状のラインで歩く動作をサポートしつつ、締めつけ感を軽減

サポート効果が特徴のソックスというと窮屈そうに思えるが、実際「ムーブソックス」に足を入れると心地よく、自然に歩き出したくなる。スポーツにも役立ちそうだが、それ以前に日常生活の動作が軽快になるのを感じる。これは一体どういうことなのか?
 
「元々、弊社は多くのブランドでソックスを開発していまして、競技特性に応じた機能性ソックスが各ブランドにあります。フィット感がいいもの、グリップ力に着目したものなどブランドごとに多彩なバリエーションがあるので、それらのテクノロジーを集約して『サポート機能と日常の快適さ』を両立させることを目指しました。なので、心地いいと言っていただけて嬉しいです」

MoveSox アンクル丈 DOAVJB01 ホワイトイエロー 1,980円(税込) 他8色あり
MoveSox アンクル丈 DOAVJB01 ホワイトイエロー 1,980円(税込) 他8色あり

つまり、「伸縮性に優れてフィットする」「コンプレッション機能がしっかりしている」「吸汗速乾性に優れている」といった共通するニーズに応えるテクノロジーを集約し、日常で快適にはけて、動く喜びを得られるソックスを生み出した?
 
「そうですね、デサントとして競技に特化しない『定番』の機能性ソックスを開発しようという考えから生まれました。締めつけが強すぎると、はくのが大変になるので、日常生活でいつでも身に着けることができて、なおかつ適切な動作のサポートが得られるソックスの構造を研究することから始めました」

足を動かしたときにアーチをサポートするスパイラル構造に着目
足を動かしたときにアーチをサポートするスパイラル構造に着目

ソックス全体に圧をかけると窮屈になって、競技中の使用には適していても、日常いつも着用するわけにいかなくなる。必要な箇所に圧をかけてサポート力を高めながら、サポートよりも動きやすさが大切な部分には余計な圧をかけない。そのために考案された構造がアーチスパイラルだと菱川さんは語る。
 
「大阪にあります弊社の研究開発拠点『DISC OSAKA』の先行研究に基づき、スパイラル状のラインにより足底のアーチをサポートしつつ、不快な締めつけ感のないサポートソックスの開発に取り組みました。研究をベースにサンプル品を作り、着用テストを行って得られたデータや感覚を次のサンプル品に反映する。その繰り返しで改良を行った結果が現在のアーチスパイラルです。
 
例えて言えば輪ゴムのように足の周囲を筒状に締めつけるのではなく、スパイラル状のサポートにすることで窮屈になりすぎず、動きに応じたサポート力がより適切にかかります。スパイラル構造が優れているとわかったら、今度はどのラインにどんな幅でスパイラルを通すのが最適なのか『DISC OSAKA』で検証を重ねて開発しました」

デサントの研究開発拠点、DISC OSAKAで研究・開発・検証が繰り返された
デサントの研究開発拠点、DISC OSAKAで研究・開発・検証が繰り返された

足の本来の働きを引き出すためのテクノロジー、それがアーチスパイラル

現代人は足のアーチがつぶれがちで、靴の中で足指を上げた状態で歩くケースが多い。それだと疲れやすく、疲れると運動量が下がり、やがて体力が減退していく。自然な状態だと、足には指先からかかとに至るアーチがあり、アーチの弾力を利用して足全体で地面をつかむようにして歩く。そのほうが疲れない。
 
「新機軸のアーチスパイラルによって、サポートラインをらせん状に巻きつけることで、足の周囲の締めつけを軽減しながらアーチのバネ効果をサポートします。指球部にはサポートラインがかからないようにして、足指の動きやすさを確保しています。これにより、指先とかかとの接地面積を損なうことがないので、足趾把持力(そくしはじりょく)[1]が得られて安定性につながります。その結果が、快適に歩行になるわけです」

らせん状のサポートが歩く動作に応じて働くので、足取りが軽くなる
らせん状のサポートが歩く動作に応じて働くので、足取りが軽くなる

「アーチスパイラルの他に、もう1つ重要な点があります。スパイラルを通さない箇所に用いた『高摩擦グリップ糸』による、グリップ力の向上です。具体的にはかかと部と指先部に『高摩擦グリップ糸』を採用していて、着地と踏み込み、蹴り出しの際のグリップ力を高めています。スパイラル部分のサポート力と、接地部分のグリップ力。この2つの力こそ、『ムーブソックス』の機能の要です」
 
どうしてもスパイラル部分に目が行きがちになるが、指先とかかとのグリップ力があるからこそアーチのサポート力が十分に発揮される。足全体で地面をつかむ、本来の歩き方を取り戻す手助けになる。『ムーブソックス』の心地よさの秘密は、そのあたりにあるようだ。
 
「スパイラルアーチは左足用、右足用で向きを変えてあるので、ソックスのはき口の内側にある「L」「R」の表示を参考に正しく身に着けていただきたいです。そうすればアーチに適切な圧がかかると共に、接地部のグリップ力が効いて歩きやくなります。足を動かしたときに感じる適度なフィット感とサポート感で、歩くのが少しでも楽しくなれば幸いです」

はけばわかる、ちょっとした動作を積み重ねるきっかけとなる1足

非運動性熱産生(Non-Exercise Activity Thermogenesis=NEAT)という言葉がある。ことさらにスポーツやトレーニングを行う以外の、何げない日常の活動(歩行など)によるエネルギー消費が健康面にメリットがあると注目されて久しい。

たとえば地下鉄のホームから改札フロアへのエスカレーターが渋滞しているとき、すぐ脇にある階段を上れば身体のためにいいことはわかっていても、つい億劫でエスカレーターの順番を待ってしまう……そんなとき「ムーブソックス」をはいていたら、自然に階段へ足が向くかもしれない。
 
「定番のソックスになることを目指して開発した『ムーブソックス』ですが、将来的には各種の競技に特化したアスリート仕様の製品も開発していきたいと考えていて、すでにいろいろなアイデアを取り入れたサンプル品を作って試すプロセスに入っています。ランニングだったらどんなサポートを加えるべきか、ゴルフだったらどうか等、可能性を模索しています」
 
これからの進化が楽しみだが、現在の「ムーブソックス」はそれらすべてのベースになる汎用性の高い機能性ソックスだ。日常生活から軽度のアクティビティまで、快適に動きたいときに試してみたら、変化を実感できるかもしれない。

[1]足指で地面をつかむ力 

PROFILE|プロフィール
菱川啓太(ひしかわけいた)
菱川啓太(ひしかわけいた)

デサントジャパン株式会社 エキップメント・フットウェア部門 エキップメントマーケティング部
NESTA JAPAN認定スポーツサイエンススペシャリスト。自らジムでトレーニングする際にも「ムーブソックス」を着用している。最近、トレイルランニングの魅力に目覚めてビギナーとしてアウトドアを楽しむ日々。

Text by Naoki Sakata

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