2022.07.29

ルール破りの極厚スニーカー「FuelCell SuperComp TRAINER」が生み出す、今までにないスピード体験

カーボンプレートを搭載した厚底のランニングシューズが登場し、マラソンのさまざまな記録が打ち立てられていく中、2020年に世界陸連がシューズに関するルールを策定。以降は基本的にそのルールに則ったシューズの開発競争が行われてきたが、ニューバランスからルールブレーカーが登場した。
 
ロード用のランニングシューズ(トラック用のルールとは異なる)には、ソールの厚さは40mm以下、プレートの搭載は1枚までといった規制が設けられている。しかし、今年6月に発表されたニューバランスの「FuelCell SuperComp TRAINER(フューエルセル スーパーコンプ トレーナー)」のソールは40mmオーバー。つまりエリート選手競技用シューズのルールに従っていないということになる。ルールを無視し、速さを追求することで生まれたランニングシューズには、どんなテクノロジーが詰まっているのだろうか。ニューバランス ランニング担当の間宮葵さんに話を聞いた。
 
間宮さんによれば「トレーニングやレースにおける自分の壁、記録の壁、常識を超えていく」ことを目的とし、ルールの制限を超えてスピードを追求して誕生したのが「フューエルセル スーパーコンプ トレーナー」なのだという。

そもそも世界陸連の設けたルールは、エリート選手たちが競技会で公平に記録を競い合うためのもの。トレーニングの道具を制限するものではないし、市民ランナーが日々のランニングを楽しむためには関係がない。世の中のランニングシューズ全体に課せられた制限ではないのだ。

エネルギーリターンを追求して作られたシューズ

 ニューバランスが今作で求めたのは、エネルギーリターンの最大化。つまり、着地時に地面から得られるエネルギーをいかに高めて推進力に繋げるかをルールに縛られずに追求した。

「エネルギーリターンを得るために、プレートを大きくしならせることができる構造を採用しました。「フューエルセル スーパーコンプ トレーナー」のカーボンプレートは弓形状に湾曲しているので、その分だけ踏み込み時にしなります。またカーボンファイバーだけでなく、グラスファイバーを混ぜることでよりしなりが生まれやすくもなっています。さらに、そのプレートを40mmオーバーの2層のフューエルセルで挟みながら、ミッドソールに空洞を設けることで、プレートのしなりをさらに拡大しています」

「フューエルセル」とは反発性と軽量性に優れたミッドソール素材。弓形状のカーボンプレートと空洞を設けたミッドソールの組み合わせには、「エナジーアーク」という名が付けられている。

画像: 2層のミッドソールで湾曲したプレートを挟み、プレートの下には空洞が設けられている
2層のミッドソールで湾曲したプレートを挟み、プレートの下には空洞が設けられている

空洞とプレートのしなり、エネルギーリターンの関係性は、トランポリンをイメージするとわかりやすいかもしれない。踏み込んだ際に、プレートの下に空洞があれば、しなりの幅は拡大し、より大きなエネルギーリターンが得られるというわけだ。そしてエネルギーリターンの最大化を目指した結果、優れた反発性を備えたミッドソールの厚さは40mmを超えることになった。

画像: ソール中央に空洞があることでプレートがしなりやすく、大きなエネルギーリターンが得られる
ソール中央に空洞があることでプレートがしなりやすく、大きなエネルギーリターンが得られる

着用することで未知のスピードを体験できる

 細かな数値は公表されていないが、ニューバランスのエリート用レーシングシューズである「フューエルセル RC エリート v2」と比べても、大きなエネルギーリターンが得られるというテスト結果が出ているという。ルールブレーカーは、規格外のエネルギーリターンを実現しているということだ。

では、「フューエルセル スーパーコンプ トレーナー」を着用することで、ランナーはどんな恩恵が得られるのだろうか。
 
「未知のスピードを体験することで、ランニングへのモチベーションや新しいインスピレーションを得ることができると思います。単純に気持ちの良いスピード感を味わうことができますし、フルマラソンに限らず5kmや10kmといった距離の自己ベストを狙うためにも活用できると思います。またレースで目標タイムを狙うためにどの程度のスピードが必要なのかを、トレーニング中に体感するといった使い方もできるでしょう」
 
スピードを体験するために、水泳選手が腰につけたロープで引っ張ってもらう、自転車の選手がバイクに引っ張ってもらうといったトレーニングをすることがある。目標とするスピードを体感するというのは、競技力の向上に繋がる。「フューエルセル スーパーコンプ トレーナー」は、未知のスピードを体験しながら、地面からエネルギーリターンをしっかりともらい、それを推進力に変えていく感覚を養うのに活用できるというわけだ。

フィット性が高くシューズとの一体感が感じられる

 実際に足を通してみると、まずソールの厚さ(明らかに視線が高くなっているのがわかる)と、アッパーのフィット感の良さを感じる。シュータンが袋状になったガセットタンという構造を採用しているため、特に中足部のフィット感が高く、足とシューズの一体感が感じられる。走り出すと感じられるのはバウンド感。ポンポンと跳ねて、いつもよりストライドが伸び、テンポも良くなっている感覚がある。あまりにソールが厚いので、着地のグラつきやシューズの扱いにくさがあるのではないかと不安だったが、それもない。幅広いレベルのランナーが楽しめるシューズに仕上がっている。

画像: 40mmを超える極厚のミッドソールにより優れたクッション性と反発性を実現。跳びはねるような走行感、スピード感が得られる
40mmを超える極厚のミッドソールにより優れたクッション性と反発性を実現。跳びはねるような走行感、スピード感が得られる

「フルマラソンでサブ2.5(2時間半)[1]やサブ3を目指す方はもちろん、サブ4レベルのランナーも扱いやすいシューズになっています。エリート用のレーシングモデルよりも履きこなしやすいはずです」
 
「フューエルセル スーパーコンプ トレーナー」の開発で培った技術や発想は、今後、世界陸連のルール内のシューズを作る際にも活かされていくとのこと。ルールブレイカーのスピードを楽しみながら、新たなシューズの登場を楽しみに待ちたい。

[1]サブ2.5=フルマラソンを2時間半以内で完走すること。3時間以内ならサブ3、4時間以内ならサブ4となる。

PROFILE|プロフィール
間宮 葵(まみや あおい)
間宮 葵(まみや あおい)

ニューバランス ジャパンFTW企画部でランニングカテゴリーを担当。高校まで陸上部に所属して1500mを中心に競技をしていた。社会人から再び走り始め、フルマラソンのPBは3:12:00。 街ラン~トレイルまで幅広く楽しんでいる。

Text by Fumihito Kouzu

LINEでシェアする