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2023.02.02

世代を問わず愛される名機 カシオG-SHOCK「MT-G」が遂げた進化の軌跡

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“落としても壊れない丈夫な時計”と謳われた「G-SHOCK(Gショック)」から、大人のG-SHOCK「MT-G」シリーズが生まれたのは1999年のこと。メタルと樹脂の融合モデル「MT-G」シリーズはなぜ開発されたのか、そして「MT-G」はどう進化していったのか、その誕生と進化の軌跡を、カシオ・デザイン開発統轄部 第一デザイン部、Gデザイン室の室長である赤城貴康さんに、最新作の紹介を交えながらお話を伺った。

「MT-G」のはじまりは新たな耐衝撃構造のアイデアから

タフネス時計の代名詞である「G-SHOCK」。90年代には爆発的人気を誇ったが、メタルモデルの登場がその革新性をさらに際立たせるものとなった。メタルと樹脂という2つの素材を融合させた大人のG—SHOCKとして誕生したのが「MT-G」シリーズだ。その誕生のきっかけを、初代のMT-Gである「GC-2000」からデザインに携わる赤城さんはこう語ってくれた。
MT-Gシリーズの初代モデル「GC-2000」。赤城さんが考案した“フローティングガード構造”がベースとなっている。当時はウレタン樹脂とメタルの融合が革新的だった
MT-Gシリーズの初代モデル「GC-2000」。赤城さんが考案した“フローティングガード構造”がベースとなっている。当時はウレタン樹脂とメタルの融合が革新的だった
1998年に、自由な発想でデザインから生まれる新企画を発案する過程で、定番の『5600シリーズ』の耐衝撃構造とは異なるアプローチをしたいと考えていました。いろいろとアイデアを出した中から『GC-2000』に採用された、ビスで固定せずベゼルを浮かせてバンドで挟み込むような、新発想の耐衝撃構造である“フローティングガード構造”を考案しました。
当時はBaby-G(ベイビージー)を担当していたのですが、女性モデルで出すのではなく、しっかりとG-SHOCKのシリーズとしてブラッシュアップしていこうということで、シリーズ化したのがMT-G誕生のきっかけとなりました。
G-SHOCKの定番スクエアタイプDW-5600C。初代DW-5000CのDNAを引き継いだ5600シリーズの基本モデルだ
G-SHOCKの定番スクエアタイプDW-5600C。初代DW-5000CのDNAを引き継いだ5600シリーズの基本モデルだ
女性用として誕生したが頑丈なスペックはもちろんお墨付き。こちらのSTG-100は赤城さんがデザインを担当していたモデル(参考商品)
女性用として誕生したが頑丈なスペックはもちろんお墨付き。こちらのSTG-100は赤城さんがデザインを担当していたモデル(参考商品)
山形県東根市にある山形カシオ。トップクラスの作業者が組み立てを行うので、世界有数の時計組み立てラインといわれる。こういった熟練工の技術力があるからこそ「MT-G」シリーズも進化を遂げてきた
山形県東根市にある山形カシオ。トップクラスの作業者が組み立てを行うので、世界有数の時計組み立てラインといわれる。こういった熟練工の技術力があるからこそ「MT-G」シリーズも進化を遂げてきた
当時は入社2年目で、右も左もわからない状態でしたが、上司や設計担当の方にアドバイスをもらいながら企画を進めました。“こんな風にして時計ができるんだな”ということがそのタイミングで味わえました」
こうして赤城さんが考案した新たな耐衝撃構造とともに、メタルのスタイリッシュな造形の美しさと樹脂によるタフさを掛け合わせた、革新的な機能美を備えるG-SHOCKの新シリーズ「MT-G」が誕生した。

耐衝撃構造の変遷こそが「MT-G」進化の歴史

「MT-G」の進化の歴史は、新たな耐衝撃構造への追求にほかならない。生みの苦しみではないが、デザインを担当する赤城さんだけでは解決できない問題もたくさんあり、設計とのバランスが重要になってくる。
「産声を上げた『MT-G』シリーズとともに、新たなデザインと耐衝撃構造の追求に奔走する日々がはじまります。無知ながらも“こうやったら衝撃が緩和されるのではないか”というアイデアを出すなど、外装設計の担当と議論を交わしていきました。基本的に『MT-G』シリーズは、設計者と連携しないと完成しないモデル。そこに関しては、今も時間をかけています」
と赤城さんは笑う。そんな耐衝撃構造の進化の変遷についてこう続ける。
「そこから2007年発売の『MTG-1000』の開発時に“ハイブリッドタフネス構造”を考案します。ウレタンとメタルの2体ベゼル構造で、内側はウレタンでやわらかく、外側に硬いメタルを重ねるという仕組みです。外部からの衝撃はメタルでカバーして、内部はウレタンで守るのがポイントです。
ベゼルをウレタンとメタルの2つの素材で構成。内側のウレタンがモジュールを保護する構造だ
ベゼルをウレタンとメタルの2つの素材で構成。内側のウレタンがモジュールを保護する構造だ
さらに、2013年の『MTG-S1000』では“コアガード構造”を発案します。モジュールを樹脂製のインナーケースで覆い、ベゼルと裏蓋を4本のパイプで連結したメタルフレームにあたかも浮かせるように収めることで、衝撃からモジュールを守るという構造です。
これにより“TRIPLE G RESIST(トリプル G レジスト)”=衝撃・遠心重力・振動の3つの重力加速度に耐えうる強化構造を実現しました。
 
そして、2018年の『MTG-B1000』ではコアガード構造を進化させる“新コアガード構造”を考案。ベゼルと裏蓋を4本のメタルパイプで連結する従来の構造から、ベゼルと裏蓋を面状のパーツで連結して箱型のフレームを形成することで、耐衝撃性を高めたのです。
コアガード構造をさらに進化させた構造は、4本のパイプよりも強固な箱型のフレームで耐衝撃性を高めた
コアガード構造をさらに進化させた構造は、4本のパイプよりも強固な箱型のフレームで耐衝撃性を高めた
2020年には最新モデルの基礎ともなっている“デュアルコアガード構造”を考案しました。メタルによるコアガード構造を進化させ、軽量かつ剛性の高いカーボン繊維強化樹脂のケースを組み合わせた構造で、これにより、腕に馴染みやすいミドルサイズと軽量化を実現しています」
軽量かつタフなカーボン繊維強化樹脂のケースを内側に取り入れたことで、大幅な軽量化が実現したデュアルコアガード構造
軽量かつタフなカーボン繊維強化樹脂のケースを内側に取り入れたことで、大幅な軽量化が実現したデュアルコアガード構造
このように見ていくと、構造の変遷が「MT-G」シリーズの進化の軌跡でもあることがわかる。もちろん、ソーラー充電やGPSの搭載、Bluetoothとの連動などの機能もアップデートされているが、カーボンなどの先端素材も取り入れながら、メタルと異素材の融合で内部のモジュールをしっかり守る、という軸は一切ブレていないのがわかる。これが耐衝撃性を誇る「MT-G」たる所以なのだ。
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