アメリカのHEALBE(ヒールビー)社が開発したスマートバンド、「GoBe3」。生体インピーダンスセンサーを用いて、体液の移動を測定することで、摂取カロリーを計測できるという。血液検査や食事内容の入力も不要で、「GoBe3」を着けていればそれだけでOKという画期的な仕組みだ。
また、消費カロリーについても自動計測されるので、1日あたりのエネルギー収支が一目瞭然となる。ダイエットや健康管理をサポートするのに非常に便利なプロダクトだといえるだろう。「GoBe3」はどのように開発され、どのようなテクノロジーが秘められているのだろうか。
ダイエットや健康管理のために、摂取カロリーをアプリやスマートデバイスで管理しようとした場合、基本的には手入力で食べたものを記録していく必要がある。3度の食事を記録するだけでもそれなりの労力になるが、間食、晩酌時の飲酒量、休憩時につまんだおやつ、運動後の補給食などを余さず記録するのは、大変な作業。着用しているだけで摂取カロリーや体内水分量を自動追跡してくれる「GoBe3」なら、食事内容の記録やカロリー計算が不要。そう、かなり革新的なプロダクトなのだ。
当然、気になるのは摂取カロリーを自動算出する仕組み。手首に装着するコンパクトサイズのスマートバンドで、どうしてそんなことができるのだろうか。
「GoBe3は生体インピーダンスセンサーを用いて、皮膚を通して高周波数と低周波数の信号を送り細胞内外への体液の移動を測定し、独自のアルゴリズムによって摂取カロリーを算出しています」と、HEALBE JAPANのポタポワ・ダリアさん。
食べたものが消化吸収されると、血糖濃度が上昇し、細胞はグルコースを吸収して内液を排出する。この動きを計測しているということなのだ。
さらに、PFCバランス(摂取カロリーに対するタンパク質・脂質・炭水化物の割合)も知ることができる。炭水化物は体に速やかに吸収されるために血糖濃度の上昇スピードが速く、タンパク質や脂質は消化吸収により時間がかかることから血糖濃度の上昇は緩やかになる。それゆえ、グルコースの吸収スピードを解析することで、それぞれの摂取量が計算できるのだという。
そんなセンサーがあるのなら、心拍センサーや加速度センサーと同じように、もっと多くのスマートデバイスに採用されてもよいのではないかという疑問がわく。それとも他社が搭載できないような特殊なものなのだろうか。
「インピーダンスセンサー自体は自社で開発したものではありませんし、それほど特殊なものでもありません。たとえば、みなさんが家庭やスポーツジムなどで使っている体組成計にも採用されているものです。特別なのは取得したデータの解析技術です。10年以上にわたってヒトの代謝モデルを研究し、グルコース曲線に基づいてカロリー摂取を計算するためのアルゴリズムを開発しました」
FLOW テクノロジーと名付けられた解析技術は、世界中で特許を取得している。そして、計測・解析データについては独立した第三者機関である、カリフォルニア大学デービス校(アメリカ)と広州赤十字病院(中国)で、検証実験を実施している。実験は「GoBe3」の前モデルである「GoBe2」を使って行われており、カロリー摂取の正確性は89.6%の精度でできるという評価を得ている。これは十分に精度が高いと言えるだろう。
「GoBe3」の摂取カロリー計測の魅力は、それが“口に入った食べ物のカロリー”ではなく“吸収したカロリー”を計測している点。食品のパッケージや、レストランのメニューに表示されているカロリーはあくまでも理論上の数値である。
当たり前のことながら食べ物の消化・吸収力は人それぞれで、同じ食品を食べたとしても、体内に吸収されるカロリーは異なる。当然、体調によっても変動する。カロリーの収支を管理するのであれば、理論上の数値よりも“吸収したカロリー”をもとにしたほうが好ましいのは間違いないだろう。
そしてもちろん、摂取カロリーだけでなく消費カロリーも自動計測される。9軸加速度計と光学センサーを活用し、運動時や作業時などは、安静時と比較してどの程度の強度の活動を行ったかを分析。安静時や睡眠時、食事のときなどに消費される基礎代謝量と合わせ、1日の消費カロリーが算出される。
計測されたエネルギーバランスは、スマホのアプリでも確認可能。時系列でグラフ化されるため、自身の行動との関係性がわかりやすい。
「たとえば食物繊維が豊富な食品や脂質の多い食品など消化に時間がかかるものは、摂取カロリーとして表示されるまでに数時間以上かかる場合があります。また、GoBe3は、体内の水分レベルを計測し、水分補給を促す機能も搭載しています。着用し続けていると自分の体への理解も深まりますし、コンディション維持、パフォーマンス維持に役立ってくれるはずです」
GoBe3のサイズは縦45×横35×厚さ13.5mm、長さ230mm(バンド込み)。質量は本体35g(バンド込み50g)。心拍測定ができる一般的なスマートウォッチ、ランニングウォッチと同等のサイズ感。普段それらを利用している方なら違和感なく装着できるはずだ。個人差はあるが、計測開始から1週間ほどは、デバイスが利用者の体にアジャストするための期間で、それ以降、より精度が高まるとのこと。
筆者の場合、装着初日は摂取カロリーが少なく、消費カロリーが多く算出されるような感覚があったが(あくまで感覚値なのだが)、3日目からかなり精度が高まった印象。体重に変化があっ た場合は、プロフィールを更新すると(Appleヘルスケアと同期しておくという手段もある)高い精度が保てるそうだ。
カロリーについて、デバイスの画面上で常に確認できるのは、その日のトータルの収支なのだが、食事をしてしばらくするとプラスに傾き、ランニングをしたり、移動で歩いたりすると収支は減少していく。この変化をチェックするだけでも面白いが、アプリ上で詳細を確認すると、想像していたより運動量が少ない、間食が多いといった発見があるはずだ。また、食品に表示されているカロリーと、実際に自分の体に吸収されるカロリーの違いにも気がつく。
筆者は日頃、ダイエットや健康管理のためにカロリー計算をしていたわけではないが、タンパク質についてはある程度摂取しようと心掛けていた。PFCバランスについてもアプリでチェックでき(現状はベータ版とのことだが)、想像に近い量のタンパク質摂取を確認することができた。個人的にかなり魅力的だったのは、このPFCバランスチェック機能と、体内の水分レベルを表示してくれる機能。水分レベルが低いとアラートも出してくれるので、コンディション維持に非常に役立ってくれそうだ。
GoBe3はダイエットを目指す人にはもちろん、自分の体のことをもっと知りたい、QOL(生活の質)を高めたいという人にも適していそうだ。
HEALBE JAPAN
地域統括マネージャー
Text by Fumihito Kouzu