近年、ますます注目を集めるバーチャルYouTuber(VTuber)。その存在は今やインターネットの世界にとどまらず、様々な企業とのコラボやメディア展開などを通して、私たちの生活に浸透しつつある。
そんなVTuberを哲学的に捉え、「VTuberの哲学」という新たな学問分野を立ち上げようとしているのが、東京大学の山野弘樹さんだ。果たして、VTuberを哲学するとはどういうことなのか、そこから見える世界とは一体どのようなものなのか。
今回、山野さん自身の“VTuber体験”も色濃く反映された「『VTuberの哲学』序論」をお届けする。
PROFILE|プロフィール
山野弘樹(やまの ひろき)
1994年、東京都生まれ。2017年、上智大学文学部史学科卒業。2019年、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(比較文学比較文化)修士課程修了。同年より日本学術振興会特別研究員DC1(2022年3月にて任期終了)。現在、同大学院博士課程。専門は哲学(特にポール・リクールの思想)。2022年より「VTuberの哲学」の研究を始める。主著に『独学の思考法』(講談社現代新書、2022年)。2019年、日本哲学会優秀論文賞受賞。2021年、日仏哲学会若手研究者奨励賞受賞。「哲学の知と実社会を繋ぐ」という理念のもと、哲学の〈意義〉と〈魅力〉を世に幅広く発信することをライフワークとしている。
(Twitter:https://twitter.com/Ricoeur1913)
(プロフィール写真:嶋田礼奈)
白銀ノエルさんの故郷、大分県の旅館の一室で、私は歴史的な瞬間を目撃していた。それは兎田ぺこらさんのチャンネル登録者数が200万人を突破する瞬間であった。いつも空気を盛り上げてくれるムードメーカーで、誰よりも明るく振る舞っている兎田ぺこらさんがリスナーに「本音」を吐露する瞬間に、私は居合わせていた。
本稿の目的は、「VTuberの哲学」という最新の学術領域について解説を行うことである。「VTuber」のことをよく知らない方でも読めるように書いているので、「哲学研究」そのものに興味のある方は、ぜひ本稿を読んでみていただきたい。