2023.01.04

ほうれい線をシワ(溝)の深さと頬のふくらみで判別:花王メイクアップ研究所

年齢とともに気になる“ほうれい線”。より目立たなくさせるにはどうしたらいいのか、気になっている人も多いだろう。花王メイクアップ研究所では、そんなほうれい線を様々な角度から観察・研究している。

そんななか、同研究所はトワニーとともに「そもそも人の目から見て、ほうれい線が目立つとはどういうことか?」についての研究を進めてきた。その結果、ほうれい線にはシワ(溝)のほか、頬のふくらみも関係していることがわかったという。

その研究内容を反映させた『トワニー ドラマティックメモリー』を2022年9月に発売、さらに「ほうれい線の見え方タイプ」を簡単にチェックできるデジタルツール「ほうれい線 AI FINDER」を開発した。

今回はドラマティックメモリーやほうれい線 AI FINDERの誕生のきっかけとなった、ほうれい線に関する研究内容について、花王メイクアップ研究所より研究員の池田さん、西野さん、飯田さんに話を聞いた。

PROFILE|プロフィール
池田 直子
池田 直子

メイクアップ研究所研究員、主にメイクアップ品の機能評価に従事。

PROFILE|プロフィール
西野 顕
西野 顕

メイクアップ研究所研究員、DX戦略推進センターカスタマーサクセス部兼務。博士(工学)。主にメイク仕上がりの画像解析、UX開発に従事。

PROFILE|プロフィール
飯田 将行
飯田 将行

メイクアップ研究所研究員、主にメイクアップ品の研究開発に従事。

花王メイクアップ研究所

はじめに、貴研究所の目的について教えてください
池田

現在のメイクアップ研究所は、花王グループ内の研究資産を最大活用して研究・開発力を強化するとともに、部門間での相互理解を深めて個々のブランドの独自性を深化させていくことを目指しています。

画像: null
飯田

そこで一人ひとりその人ならではの美しさを提供するため、様々なメイクアップ化粧品を通じて、望み通りの色や質感や形を、またそれが一日変わらず続くための化粧持続性能を、心地よい使用感とともにお届けできるように研究を行っております。

また、消費者研究や、メイク品ならではの意匠性向上のための研究、最近ではデジタル技術の導入も行っています。

研究所での取り組みは、どのように応用されているのでしょうか。
西野

得られた研究成果応用の一例ですが、様々な環境での肌の光学特性を再現して、気になる場所はカバーしつつ美しい肌の質感を反映したファンデーション、化粧崩れの要因である皮脂をはじく・固めることで、一日美しい仕上がりが持続する化粧下地、唇からの水分を利用してより塗膜が密着し、つけたての色が続きマスクでもとれにくい口紅の開発などに応用しております。

デジタル技術の応用では、目視評価の訓練を積んだ「専門判定者」の感性を学習したAIを構築し、ファンデーションの仕上がりを評価できるようになっています。ドラマティックメモリーのUX開発においても、消費者研究をベースに、ほうれい線を分類・スコア化した画像からAIを構築し「ほうれい線 AI FINDER」の開発につながっているのです。

2つの要因でほうれい線を評価

ほうれい線の見え方研究をスタートしたきっかけは何だったのでしょうか。
池田

もともと「どうすればほうれい線を目立たなくさせられるのか」というのは理解していたつもりでした。しかし、実際にほうれい線はどんな形状をしているのか、はっきりとしたデータを知らないまま、「コンシーラーなどを塗ったら目立たなくなる」というポイントだけをおさえていたのです。そこで、いろいろな顔立ちの方がいるなか、ほうれい線の形状はどんな状態なのかを調べておく必要があると思い、研究をスタートさせました。

ほうれい線の研究内容について教えてください。
池田

まず、ほうれい線の定義付けをするためにグレードを設定し、シワの見た目の深さを8段階で評価しました。

画像: null
池田

2019年に20代~70代の女性270人のほうれい線のシワグレードと年齢の関係を調査しました。グラフは、年齢とほうれい線グレードの散布図となっています。213人にほうれい線が存在し、25歳ごろからほうれい線のシワ(溝)を認識できる『グレード1』の方が少しづつ増えていくことがわかりました。

この散布図から、20代はグレードが0または1に集中しており、シワ(溝)の深さの個人差があまりないことが分かります。50代以降になると様々なグレードを示す方が増え、個人差が大きくなることがわかります。

ここまでは、ほうれい線はシワの深さを評価するものだと説明しましたが、以下の画像のように、グレード1と評価された画像の中でも、ほうれい線の見た目が異なる場合もありました。

画像: null
池田

これら2つの画像の違いは、ほうれい線外側の膨らんだ部分にあると気づき、シワの溝の深さとは別にグレード評価することにしたのです。それが、「ふくらみグレード」です。

画像: null
池田

上図で示されるように、「ふくらみ」がどのような状態を指すのかを定義し、その程度を8段階のグレードで評価しました。

グラフは、年齢と頬のふくらみグレードの散布図となっています。 ほうれい線と同じく、加齢に伴って頬のふくらみグレードも高くなる傾向がありました。一方で、20代であっても、高グレードの方も観察されました。ほうれい線のシワグレードの評価結果では、20代はほとんどシワの溝が認識できないのに対し、頬のふくらみグレードに関しては20代でも、グレードが2〜5の方も約3割確認されたのです。つまり、頬のふくらみの状態は、加齢による影響だけでなく、個人差も大きいと考えられました。

そこでほうれい線のシワグレードと、頬のふくらみグレードの2つを参考に、「シワ(溝)の目立ち」と「頬のふくらみ感」の2つの要素を掛け合わせ、「ほうれい線の見え方のタイプ」として整理し、9つに分類しました。

画像: null
池田

このタイプ分類によって、シワ(溝)の目立ち方が同じであっても、ふくらみ感が強ければ、その影によって、より「ほうれい線が目立つ」ようになることが分かりました。つまり、ほうれい線の見た目の印象には、シワ(溝)と頬のふくらみの2要因による「影」が重要な因子となることがわかったのです。

なお、若い子のほっぺの丸みみたいなものは、加齢とは少し違うふくらみだと考えています。

飯田

ドラマティックメモリーは、塗膜収縮によって肌を引っ張り、ほうれい線を目立ちにくくする商品です。ほうれい線を目立たなくさせるには肌を引っ張ってしわを目立ちにくくするだけでなく、頬の膨らみも抑えることが効果的で、ドラマティックメモリーを使うことで2つの効果を期待できることもわかってきました。

池田

ドラマティックメモリーは、シワを薄く目立たなくさせる効果があることはわかっていました。ほうれい線の実態研究を進めていく中で気づいたほうれい線の目立ちに影響するふくらみの要素に注目して改めて実験してみると、ふくらみ自体を抑える効果があることもわかり、きちんと見た目の変化にもつながる点が私自身も驚いたところではあります。

ドラマティックメモリーはアンチエイジングというよりは、今の状態を改善するための商品になっていますが、ほうれい線が気になる方は年齢問わず使っていただけると良いかなと思っています。

研究所内での気づきを体験してもらいたい

貴研究所が開発したほうれい線の見え方解析AI技術と、トワニーの知見を組み合わせ「ほうれい線 AI FINDER」を開発したとのことですが、こちらの開発背景についても教えてください。
画像: null
西野

ほうれい線 AI FINDERには、ほうれい線を評価する技術が搭載されていますが、その技術自体は塗膜伸縮技術の開発プロジェクトと並んで開発が進んでいました。当時は、ほうれい線のシワの影を画像処理で検出するというところに取り組んでいました。

そこからほうれい線 AI FINDERの開発に着手した理由は2つあります。1つは研究目的で、塗膜伸縮製剤をどの部分に塗ったらどれだけ効果的にしわを引っ張り上げられるのかを研究目的で検討するために数値データが欲しかったのです

もう1つは、ドラマティックメモリーは使用することで数十秒〜1分程度で、スッと引き上げられ、ほうれい線が解消されるというユニークな製剤ですので、お客様にもその変化を実感して欲しかったんです。アプリなどで撮影した時に、しっかり効果が出た瞬間をお客様自身にも体験してもらう、というのを夢見て着手しておりました。

加えて、池田のほうれい線の発見もありまして、ドラマティックメモリーでもデジタル施策をしたいというお話があり、これまで研究してきた画像解析技術を拡張してほうれい線 AI FINDERを開発することになりました。

ほうれい線 AI FINDERのエンジンには、ふくらみ型なのか/ほうれい線型なのかを内部でリアルタイムの速度で解析できるAI技術が搭載されています。これまで取り組んできた影を検出する技術では実現が難しかったので、ディープラーニングというAI技術を利用しまして、池田の方で目視評価したグレードをAIに学習させ、ほうれい線と頬のふくらみの2つのグレードを出力できるものに仕上げました。

開発で苦労されたところはありましたか。
西野

多少粗い画像でも解析できるように、というのは気を使う必要がありました。今のスマートフォンは高い技術が搭載されており、写真の画質も非常に良いですが、我々のAIを使ったデジタルツールを実現するためには、むしろサーバー側の我々のAI技術をいかに荒れた画像に対応させるか、という方向に工夫が必要でした。

解像度の低い画像でも対応できるようにAIに学習させまして、そのおかげで照明を変えたり距離を変えたりして撮影しても安定して結果が出たり、早くレスポンスが返ってくるようになりました。

画像: null
西野

ほうれい線 AI FINDERを通して肌の実態を伝えきれたかというとそうではないと思っているのですが、我々が研究所内で発見した気づきを、お客様にもダイレクトに体験してもらえる世界が1つ作れたかなと考えています。

今回、池田が大量の画像を眺めたときの細かい気づきから、ほうれい線はこういったタイプに分類できるという方法を見出しました。そして現在、お客様にアプリを通して、手元で自身のほうれい線の状態を知っていただけるようになりました。

池田

ほうれい線は引っ張らなくても頬の一点を押すだけで一気に薄くなります。ご自身のほうれい線の溝はもちろん、ふくらみをどうコントロールするかで、実はほうれい線を目立たなくできるというところに、ほうれい線 AI FINDERを通して気づいていただくことができるようになりました。

ドラマティクメモリーを使う前に、ご自身のほうれい線がどのような状態かアプリを使ってよく見ていただいてから、ドラマティクメモリーを使っていただくと、よりその効果を実感できると思っています。

今回のほうれい線の研究に関して、他にも研究や観察を進めていることはありますか。
池田

これまでは女性のほうれい線に関して詳細な研究を進めていましたが、もちろん男性にもほうれい線がありますので、そちらをどう解消するかというのも現在進めている研究テーマになっています。男性の場合はほうれい線に対する意識など、女性と異なるところも多いと思いますので、今後の研究対象として見ていきたいと考えています。

飯田

メイク以外の分野での展開も含めてディスカッションを始めておりまして、今後注力していきたいと考えております。今は商品だけでなくアプリを通した体験としてお客様に提供できる時代だと考えておりますので、業界にインパクトを与えながら、お客様も巻き込みながら、この2つのアプローチで今までにない体験をご提供していきたいと思っております。

LINEでシェアする