ファッション領域におけるテクノロジーの導入が進むなか、衣服にコンピューティングの機能を導入していくウェアラブルデバイスなど、新たな試みもなされている。
こういった開発やそこに至る研究の展開を考えるうえで、注目すべき分野にHCI(Human-Computer Interaction)という分野がある。Fashion Tech Newsでも、HCI分野に関連の深い東京大学・筧康明研究室の「What’s the Matter?」というイベントシリーズを配信しているが、改めてHCIとはどんな分野であるのか、また、その分野では衣服へのどのようなのアプローチが登場しているのだろうか。今回は、HCI領域を牽引する若手研究者である東京大 学大学院工学系研究科特任講師の鳴海紘也さんにインタビュー取材を行った。
PROFILE|プロフィール

鳴海 紘也
2020年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。博士課程在籍中に日本学術振興会特別研究員、科学技術振興機構 ACT-I「情報と未来」個人研究者などを務め、2020年4月より東京大学大学院情報学環助教。2021年4月より同工学系研究科特任講師。柔らかいアクチュエータや折りたためるファブリケーション手法の研究に加え、ヒューマン・コンピュータインタラクションに関するトップ国際会議CHI2021では「Wearables, Tangibles, and Fabrics」のセッションチェアを担当 するなど、人間と調和する実世界インタフェースの研究に従事。主な受賞歴として2020年度東京大学総長賞など
「人間にとっての嬉しさ」を扱う研究
まず、HCIという領域について教えてください。
HCIはHuman-Computer Interactionの略で、コンピュータサイエンスの分野に属しています。コンピュータサイエンスの分野では、例えば計算の高速化や計算機の小型化というように、計算や計算機の性能を向上させる研究が一般的です。しかしHCIでは、計算「しか」行わない計算機と実世界の人間が意思疎通するための翻訳機(インタフェース)をうまく作るという問題と、人間が計算機のある環境で人・モノ・計算機などとどのようにやりとり(インタラクション)を行うかという問題を扱います。計算機科学の分野ではありますが、その目的は人間の体験を向上させることです。この記事は会員限定です。
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