Fashion Tech News Symbol
お気に入り閲覧履歴
/
NEW マイページ機能追加
お気に入りと閲覧履歴の機能が追加されました!
会員登録すると、さらに便利に利用できます。
2024.07.19

読者から厚い支持を得る「LDK the Beauty」が行う、「LAB.360」での“検証”とは

リンクをコピーしました
1995年に創業した「株式会社晋遊舎」。さまざまな雑誌・書籍を刊行しているが、広告を入れずにテストした商品情報を載せている雑誌は、特に人気が高い。
主力である『家電批評』『MONOQLO(モノクロ)』『LDK(エルディーケー)』『LDK the Beauty(エルディーケー ザ ビューティー)』を、読んだことがある人も多いのではないだろうか。
同社では、社内に検証施設「LAB.360(ラボドットサンロクマル/以下、ラボ)」も備えている。ここでは、家電や洗剤、コスメなど、あらゆる商品の検証が行われているそうだ。
今回は『LDK the Beauty』に焦点を当て、企画や検証でのこだわり、ラボの設備などについてお話を伺った。
PROFILE|プロフィール
松下 和矢(まつした かずや)

LAB.360 室長

PROFILE|プロフィール
井上 生智(いのうえ みのり)

LDK the Beauty編集部 副編集長 兼 LDK the Beautyクロスメディア編集部

PROFILE|プロフィール
島田 瞳(しまだ ひとみ)

LAB.360 主任研究員

忖度しない検証で、読者の信頼を得る

テスト結果を載せる雑誌は、いつ発刊し始めたのでしょうか。
松下テストする雑誌がスタートしたのは、2007年です。現在は『家電批評』『MONOQLO』に分かれていますが、もともとは一つの雑誌でした。
“徹底的なリサーチ・検証を通して、忖度なしで本当にいいものを読者に伝える”というスタイルは、この雑誌が発刊したときに始まりました。
井上今回注目してくださった『LDK the Beauty』は、主婦層に向けた生活にまつわる情報を掲載している『LDK』という雑誌から誕生したものです。
美容はもともと『LDK』の中で特集として取り上げていたのですが、反響がとてもよくて。2017年に『LDK the Beauty』として独立させたときは隔月発行でスタートしましたが、2018年に月刊誌になりました。
Webサイト「360LiFE(サンロクマルライフ)」やInstagramでも、情報を発信されていますね。雑誌との違いはありますか?
井上基本的には雑誌が先に出ていて、それをWebのほうで記事化する流れになっています。ただ、雑誌を買ってくださる層は限られてしまうので、最近は自社のWebサイト「360LiFE」やInstagramのコンテンツにも力を入れています。
『360LiFE』やInstagramだけで読めるオリジナル記事の配信や、誌面を掘り下げたインスタライブなど、新たな取り組みも増やしているところです。
情報発信するうえでの、御社の強みを教えてください。
井上一番の強みは、広告が入っていないことです。どの媒体でも広告が入っていることが多いと思うのですが、弊社では広告がないからこそ忖度なく情報をお伝えすることができているので、読者のみなさんからも信用を得られているのだと思います。
松下情報の信頼性を何よりも重視しているので、弊社の媒体ではきちんと検証したものしか載せていません。
最近は読者のみなさんが“本当かな?”と思うような発信がSNS上で多いこともあり、弊社が研究員などの名前を出して検証結果を発信しているところも、信頼につながっているのではないかなと思っています。
検証する商品は御社で購入されているのでしょうか?
井上基本的に編集部員が買ってきます。費用がかさんでしまう分をカバーできているのは、電子書籍や『360LiFE』内のアフィリエイト、メーカーさんへの認証コンテンツの事業などで生じる売り上げがあるからです。
松下検証で最も高評価となった製品には“ベストバイ”などの認証マークをつけています。購入する方が店頭で一目で「いいもの」だと認識できるように、パッケージや店頭POPにご活用いただいています。
こちらは、検証結果が出た後にメーカーさんに受賞のご案内を差し上げていまして、その認証ロゴやランキング記事のコンテンツを使用してくださるメーカーさんから、使用料をいただいているかたちです。
広告に頼らない運営をしているので、そういったところでもマネタイズしています。
井上ありがたいことに、弊社の認知度が上がるにつれて“うちの製品をテストしてほしい”とメーカーさんから商品をご提供いただくこともあるんです。
ただ、たとえ商品をご提供いただいたとしても、忖度なく検証することはお伝えして、ご理解いただいています。
結果を操作することはないので、高評価であっても、ランキングの最下位になっても、ありのままの結果を載せています。

生活者の“これが知りたかった”を重視した企画

情報の信頼度の他にも、『LDK the Beauty』のコンテンツを作るうえで、大切にしていることがあれば教えてください。
井上読者目線を大切にしています。一般的にはコンテンツの読み手をイメージされると思いますが、弊社では“読者目線=生活者のリアルな本音”だと捉えています。
“あれが欲しい”と思っても、実際に商品を選んで購入するまでに必要な情報が、Web上にある情報だけでは足りないなと思っていて。
たとえば、メーカーさんやインフルエンサーさん、代理店さんなどは、立場によって話す内容や目指すべき方向が違うので、生活者のリアルな本音が抜け落ちているなと。
ビジュアル的に美しく紹介されている商品は、購買意欲を高めてはくれますが、実際に自分で使ってみると「シミや毛穴が隠れると謳っていたのに、効果がわからなかった」といったこともありますよね。
そのため、弊社ではリアルに生活している人たちの本音を意識して検証するようにしています。
お話の通り、雑誌を拝見していると「蓋がベタつく」「力を入れて押さないといけないので使いにくい」などのリアルな評価がとても印象的でした。
井上やはり巷に広がっている情報は、いいことばかり書いてありますよね。メーカー側からすれば、“いかにして買ってもらうか”はもちろん大事なことなんですが、生活者が本当に気になるのは使いやすさやコスパなども含めた製品の実力なので、“これ知りたかったんだよね”という情報を深掘りしていく作業をしています。
 生活者の本音は、どのように探っているのでしょうか。
井上自分自身が感じた違和感も取り入れますし、InstagramやXで情報収集することもあります。また、編集部員が必ず市場調査を行っていて、検証する商品を購入する前にいろいろなお店を見て回るんです。
今どんな商品が売られているのかをチェックしたり、買い物に来ている人の行動や会話からヒントを得たりして、そこから企画が生まれることもあります。
お店ごとに客層や置かれている商品の傾向が異なるので、そういったところも見ながら、生活者の本音を考えています。
マイクロスコープで毛穴の状態を確認
マイクロスコープで毛穴の状態を確認
検証するアイテムを選ぶにあたって、意識していることはありますか?
井上トレンドに左右されすぎないようにしています。とはいえ、トレンド情報は読者のみなさんが知りたい情報なので、SNSでバズっているものや新作のものも、企画の切り口に合う商品であれば取り入れています。
たとえば、昨年末に“美容液ファンデ”が流行ったときは、どこも“みずみずしい”“素肌感”というワードで打ち出されていました。
ただ、弊社でアンケート調査をしてみたところ、“素肌感はうれしいけどカバー力が大事”と考えている方が多いことが分かったんです。そこで、弊社では素肌感とカバー力のバランスがとれたものを良しとする“ちょうどいい美容液ファンデ”を切り口に検証をして取り上げました。
トレンドの商品を扱うとしても、そのトレンドは本当に一般ユーザーが求めているものかを細かく精査して企画に落とし込んでいます。
商品の価格帯は、意識されますか?
井上企画の切り口に価格が取り入れられていれば、それに合うように探します。たとえば、“5,000円以下で買えるコスパのいい美容液”であれば5,000円以内の商品を選びますし、“今知りたいバズっているもの”であれば価格を問わず選びます。
もう一つ意識しているのは、大手ブランドに偏りすぎないことです。私自身、入社してから、今まで知らなかったブランドに出会うことがよくあります。
中小企業のメーカーさんは、広告をたくさん打てないという背景もあるので、知られざるいい商品にお店で出会うこともあって。たまたま見つけた商品が、検証の結果1位になったこともあります。
その結果をメーカーさんにお知らせしたときに、売り上げが悪く撤退を考えていたところ急遽、販売の継続を決めたということもありました。
みなさんが取りに行けないような情報を載せることにも意味があると思っているので、実際に足を運んでいろいろ見て決めるようにしています。
検証結果の見せ方で、工夫していることがあれば教えてください。
井上撮影の際に、ライティング(照明)で仕上がりがきれいに見えすぎないように気をつけています。コスメの広告撮影であれば、商品の仕上がりをよりよく見せることが多いと思いますが、弊社ではラメが出ない、発色が弱いといったマイナス面も赤裸々にお伝えします。
発色をよくするために重ね塗りをしたり、きれいに見せるためにレタッチしたりもしません。印刷の関係でやや色みが変わって見えてしまうことはあるのですが、誠実にリアルに近い色みをお見せするようにしています。
また、『LDK the Beauty』はアカデミックな雑誌ではないので、分かりやすくイラストを取り入れながら、見て、読んで楽しいと思っていただけるように工夫をしています。
1 / 2 ページ
この記事をシェアする
リンクをコピーしました
CONTACTお問い合わせフォーム
ご質問やご要望がございましたら、以下のフォームに詳細をご記入ください。
お問い合わせ項目必須