「ゴムゴムシルク」という聞き慣れない名前にすでに驚いている人もいるかもしれないが、私たち消費者があずかり知らぬところで、繊維加工の技術は発展の一途をたどっている。いまやシルクは洗えるだけでなく、ゴムのように伸び縮みするというのだから、この素材に対するかつての常識は通用しないだろう。
今回新しいシルクを提供・開発したのが、
日本蚕毛染色株式会社だ。繊維の自社開発を得意としており、これまでにいくつもの機能性繊維を生み出しただ けでなく、繊維の加工方法に関する特許も取得している。
そこで同社機能繊維事業 業務3課係長の安部宏正さんに、自社で開発されたシルク加工の技術について語っていただいた。「ゴムゴムシルク」の誕生に至るまでに、どのような開発の流れがあったのだろうか。
PROFILE|プロフィール
安部宏正
日本蚕毛染色株式会社 機能繊維事業 業務3課係長
染色の営業を経て10年前より機能繊維の営業。2022年11月より同事業 業務3課にて洗えるシルク「セレーサカルメンⓇ」の販売に携わっている。
蚕毛と染色
1938年の創業時は、どのような事業をされていましたか。
初代社長の冨部要人が、日本蚕毛工業株式会社という社名で起業したのが始まりです。当時の日本は、シルクはあるがウールが手に入りにくい状況でした。そこで擬毛加工の「セリシン定着」という技術を使い、シルクをウール仕立てにして販売をしていました。社名の「蚕毛」は、それが由来となっています。
戦後にポリエステルやナイロン、アクリルといった合成繊維が登場し、合成繊維の綿(わた)の染色需要が高まったことから1956年に現在の日本蚕毛染色株式会社へと社名を変 更しました。