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2021.09.15

ご褒美としてのサステナビリティ:「Sonnet 155」が問う、新たな消費のあり方

ドイツ在住のテキスタイルデザイナーLobke Beckfeld(ロブク・ベックフェルド)とJohanna Hehemeyer-Cürten(ヨハンナ・ヘマイヤー・キュルテン)の2人によってデザインされた『Sonnet 155』。『Sonnet 155』で使用されている生地は、果実の皮と短いセルロース系繊維から作られている。研究活動から始まり、この夏修士課程を卒業した2人はデザインスタジオを設立、今後はシリーズの生産に向け目下準備中だという。今回、ロブクにプロジェクトの軌跡と、彼女たちの今後の展望についてインタビューを行った。

オンラインで始まった、2人のコラボレーション

ベルリン・ヴァイセンゼー芸術大学大学院でロブクはテキスタイルとサーフェス・デザインを専攻、ヨハンナはファッションデザインを専攻している。学科の異なる2人は、昨年、オンラインへ移行した大学院のプロジェクトで出会ったという。「約1年前にオンラインで行われた大学院のプロジェクトでヨハンナと出会いました。お互いに同じ考えやビジョンを持っていたことから、一緒にプロジェクトを開始することにしました。出会ってからしばらくは、オンラインで進め、実際に状況が改善した2020年の6月ごろに初めてオフラインで会うという経験はとても新しく感じられました。」
左から:ヨハンナ・ヘマイヤー・キュルテン、ロブク・ベックフェルド
左から:ヨハンナ・ヘマイヤー・キュルテン、ロブク・ベックフェルド
当時ヨハンナは、卒業コレクションに向け、2つのコレクションラインの制作を行っていた。一方はスローファッション、ニュートラルカラをテーマにした、長持ちする衣服のデザインを、他方ではトレンドを意識したアクセサリーやアドオンを構想していたという。そして『Sonnet 155』は、アドオンのプロジェクトの一環として、これまでロブクが行っていた素材開発を応用する形で2人のコラボレーションが始まったそうだ。
「修士課程の3学期目に、ファッションやテキスタイル業界のシステム全体に疑問を持ち始め、持続可能なテキスタイルについてや、それに関連する問題について多くの記事を読みました。そのことから修士過程ではテキスタイルを専攻し、工場から出る副産物を用いた素材開発の研究を行っていました。最初は、繊維産業から出るさまざまな廃棄物を対象に、プロトタイピングを進めました。さらに『Sonnet 155』の先駆けとなる、短い繊維を使ってコンブチャなどの天然の添加物を使った実験も行っていました。」

廃棄素材の活用方法

「コラボレーションを始めた当初は、私が研究していた素材でできることを追求していたように思います。テキスタイルデザイナーとして、ファッションデザイナーとコラボレーションし、一緒にアイデアから製品を作ることを行ってみたいと思っていました。」とロブク。『Sonnet 155』で使用されている生地は、繊維産業から発生するセルロース系の生産廃棄物と、ジュースの副産物である果実の皮から抽出した植物性多糖類であるペクチンの2つの原料を合わせて作られている。実際に写真をみてみると、レザーのようであると同時に、半透明で繊維の質感が感じられる。ロブクの制作したプロトタイプに感銘を受けたヨハンナとのコラボレーションが実現したという。
「『Sonnet 155』で私たちが取り組んだ課題は、既に存在する資源を利活用することでした。地元で調達できることも重要で、たとえば繊維産業で糸を作る際に廃棄される短いセルロース繊維は、タオルなどを製造している地元の工場から調達しました。この会社とは数年前から連絡を取り合っていました。当時彼らは、工業的な規模で生産される場合、整経の際に出る繊維を、回収してくれるリサイクル機関がないことから、焼却処分のための費用を負担していました。しかし彼らは資源循環に興味があり、生産過程で出る廃棄物を活用する方法を模索していたのです。」
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#Sustainability
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