リクルートスーツと聞くと、テレビに映し出された、集団企業説明会に挑む学生の姿などを思い浮かべる人も多いだろう。昨今では企業説明会でも「服装は自由」としている会社も多いが、蓋を開けてみると、皆が揃えたようにリクルートスーツを着用している。
ところで、「なぜリクルートスーツを着用しなければならないのか」と疑問に思った人もいるのではないだろうか。無意識のうちに「就活=リクルートスーツ」と考えてしまう日本人にとって、リクルートスーツは一体どのような存在なのか。
今回、『リクルートスーツの社会史』などの研究を行っている文化学園大学の田中里尚准教授にインタビューを行い、リクルートスーツの歴史と現代社会での受容について伺った。 PROFILE|プロフィール
田中 里尚(たかな のりなお)
文化学園大学服飾学部准教授。早稲田大学文学研究科修士課程を修了後、暮らしの手帖社などで編集の仕事に携わりながら、立教大学文学研究科比較文明学専攻にて博士(比較文明学)号を取得。共著に藤田結子ほか編『ファッションで社会学する』(有斐閣、2017)、高野光平・飯田豊・加島卓編『現代文化への社会学』(北樹出版、2018)など。
ファッション研究に取り組まれた経緯を教えてください。
もともと、文学や小説が好きということもあって、学生時代に文学と歴史の横断分野として「女性雑誌の研究」をしようと思い立ちました。ちょうど女性史のゼミにいたこともあって、戦前の女性雑誌『主婦之友』に目が留まり、1番面白い記事ジャンルは何かと探していたときに、服飾の記事に惹きつけられました。そこで行ったのが服飾の表象分析です。読者欄を読むと、服の作り方や着こなし方とは違う別種のメッセージを服飾から受け取っている読者がいることがわかったので、そこを深堀りしました。