2022.08.24

パートナーブランドは1000社以上!  世界No.1ソールブランドのVibram(ヴィブラム)が愛される理由

登山靴やワークブーツなど様々なシューズのソールに使用されてきたVibram(ヴィブラム)ソール。昨今では、ニューバランスなどスニーカーでもその実力を発揮し、採用されることがトレンドとなりつつある。今回は、ヴィブラムソールの最新モデルはもちろん、高品質のラバーソールメーカーと称される、ブランド独自の哲学とその高品質の理由を、ヴィブラム ジャパンの代表取締役である眞田くみ子さんに伺った。

「どのシューズを履いて、どこにいくのか」が原点

さまざまな靴のソールを作り、世界120か国以上の市場規模で展開するヴィブラム社。その歴史はひとりの登山家であったヴィターレ・ブラマーニ(Vitare Bramani)から始まった。ヴィブラム ジャパンの代表取締役で、イタリア本社でも働いた経験を持つ眞田くみ子さんは語る。

「ヴィブラムソールは完成品ではなく、あくまでパーツなのでわかりづらい部分はありますよね。ただ、おかれた環境によって最大限のパフォーマンスを発揮するソールであることは間違いないです。イタリアのミラノで生まれた創業者のヴィターレ・ブラマーニは15歳ぐらいのころにイタリア山岳会に入会するほど、山登りが大好きでした。

成人するとミラノの高級ブティックが立ち並ぶ、スピーガ通りに『ブラマーニスポーツ』という登山用品店を作って、登山ギアを売りながら暇を見つけては登山に明け暮れたそうです。ショップは登山家たちのたまり場になると同時に、ヴィターレは30代にしてイタリア登山業界の中心人物になっていきました。ヴィターレは、実はのちに試作品の開発協力を得ることになるイタリアのタイヤメーカー、ピレリ(Pirelli)ともこの高級ブティック街で出会ったといいます」。

画像: 創業者のヴィターレ・ブラマーニ(Vitare Bramani)。登山家でもあった彼は、自分が作ったソールを履いて雪山に登るなど、そのパフォーマンスの検証を自ら行っていた。彼の名前から社名でもありブランド名でもある「Vibram」となった
創業者のヴィターレ・ブラマーニ(Vitare Bramani)。登山家でもあった彼は、自分が作ったソールを履いて雪山に登るなど、そのパフォーマンスの検証を自ら行っていた。彼の名前から社名でもありブランド名でもある「Vibram」となった

そして、1935年、ヴィターレが35歳の時に悲劇が起こる。スイスの山であるブンタラシカを登頂中、突然の天候の変化により登山隊の7名中6名が命を落としてしまうのだ。事故は、当時、靴底にクギを打ってスパイクのようにした重たい革張りの靴しかなく、厳しい環境に対応できる靴がなかったことによる要因が大きかった。ヴィターレは、一人だけ奇跡の生還を果たしたことで、雪でも足元が固まらず、滑らないソールという厳しい環境にも耐えうるラバーソールの制作に着手する。

画像: ヴィブラム ジャパンのショールームでは、たくさんのソールのサンプルが展示されている。国内ブランドとのコラボ企画などでもこのサンプルソールを見ながら、打ち合わせが行われるそう
ヴィブラム ジャパンのショールームでは、たくさんのソールのサンプルが展示されている。国内ブランドとのコラボ企画などでもこのサンプルソールを見ながら、打ち合わせが行われるそう

「そこからタイヤメーカーの協力を得て、滑りにくくて軽いゴム製のソールの作成をしました。そして『ブラマーニスポーツ』というお店で培ったコミュニティの協力を得ながら、1954年にカラコルム山脈にあるエベレストに次ぐ、標高世界第2位の山、K2(ケイツー)に、ヴィブラムソールを履いた登山隊が初登頂を成し遂げました。それが、世界的にヴィブラムソールが知られるきっかけになるのです」。

用途ごとでレシピのように配合の比率が変わるコンパウンド

ヴィブラムソールは、ゴムが原材料だが、主にインドネシアやマレーシア原産のナチュラルラバーを採用している。ヴィブラム ジャパン代表の眞田さんはそのこだわりをこう語る。

「原材料のゴムは、まず小さなピースにカットし、さまざまな薬品や材料を配合し、グラインダーで何度も混ぜて練り上げることで空気を抜きます。この空気を抜くという作業が、強度を高めていくポイントになります。そのあと、それをプレート状にして型を取り、焼き上げることでソールが完成します。簡単に説明するとこういった工程になりますが、作るソールによって、材料の配合する比率が変わります。ヴィブラム社では、このレシピのようなゴムの配合を『コンパウンド』と呼んでいます。

ソールは溝の形状といった『デザイン』と用途に適した『コンパウンド』が一緒になることではじめてパフォーマンスを発揮してくれます。歩行時に体重がどのように移行するか、雪や泥地など着地する地面の状況で、どう着地するべきかを、そしてどこに力を逃がすと効率的に歩けるのかを、徹底して検証します。最終的に部位ごとに異なる機能を持たせたソールが、ヴィブラムソールとして世界に展開されるのです」。

画像: イタリアの工場では、原料からソールの完成に至るまで、自社研究での厳格な品質管理に基づき、検品が行われている
イタリアの工場では、原料からソールの完成に至るまで、自社研究での厳格な品質管理に基づき、検品が行われている

ヴィブラムソールは“グリップ力”、“トラクション”、“快適性”の3つを軸にして、ハイパフォーマンスなラバーソールを開発している。その数は年間約300にものぼるという。そのパフォーマンスはソールに応じ、上記でも説明したコンパウンドとデザインによってもたらされる。もちろんクオリティを高めるために10項目以上の測定が行われ、実際に使用する環境下でのフィールドテストも行われる。取材に訪れた時、ヴィブラム ジャパン社でも、実際にヴィブラムソールを履いて、氷の上で滑らないか確認できるなど、そのパフォーマンスを体感できる機器があるのには驚きだった。

画像: ヴィブラム社がこだわる、ソールの原材料を配合するレシピともいえる「コンパウンドマップ」。用途によって配合を変え、年間300という数のラバーソールが生み出されている
ヴィブラム社がこだわる、ソールの原材料を配合するレシピともいえる「コンパウンドマップ」。用途によって配合を変え、年間300という数のラバーソールが生み出されている

革新的なラバーソールを生み出しながらも常に進化し続ける

日本ではタンクソールと呼ばれているヴィブラム社初のソール「カラルマート(CARRARMATO)」が生まれ、早80余年。2022年では、ソールの生産量は年間4000万足を超え、年間では約300種というソールが新たに生まれている。パートナーブランドはニューバランスやメレルなど1000社をゆうに超えている。

現在は、トレイルランニングシューズなどに採用する「トラクションラグ」が人気を集めている。このソールはラグの側面に細かな凹凸状の制止鋲をつけることによってグリップ力を最大25%も向上させた逸品だ。また、「ライトベース」では、通常では最低でも2.5mmは必要なラバーのベース部分を50%以上削ぎ落とし、0.7~0.9mmにすることで約30%の軽量化に成功している。

画像: ソールの凹凸の側面に細かい制止鋲が配置されている。これが「トラクションラグ」だ。このソールには「ライトベース」そして「メガグリップ」という3つのテクノロジーが搭載されている
ソールの凹凸の側面に細かい制止鋲が配置されている。これが「トラクションラグ」だ。このソールには「ライトベース」そして「メガグリップ」という3つのテクノロジーが搭載されている
画像: ヴィブラム社が開発している「メタフレックス」というミッドソール。スーパーライトEVAを採用し、軽量化と柔軟性を高めている。こちらはアウトソールと一体型になっているもの
ヴィブラム社が開発している「メタフレックス」というミッドソール。スーパーライトEVAを採用し、軽量化と柔軟性を高めている。こちらはアウトソールと一体型になっているもの

ヴィブラム社はアウトソールだけでなくミッドソールの開発にも着手。「メタフレックス」といわれるミッドソールはスーパーライトEVAを採用し、軽量かつ柔らかいので、ウルトラマラソンのランナーなど長距離を走るシーンで重宝するという。

常に進化を続けるヴィブラムソールだが、最後に眞田さんはこう語ってくれた。

「ヴィブラム社は創業者のヴィターレが『カラルマート』を開発してから、現在もトラクションラグといった革新的なソールを開発するなど、日進月歩の進化を遂げてきました。これまで培ってきた技術や製品へのこだわり、そしてコンパウンドを活かしつつ、これからもどんな場面でも快適に履きこなせる、アッパーから下のミッドソールやアウトソールを提供し続けていきたいですね」。

ヴィブラムソールはこれからもユーザーがアッと驚くラバーソールを開発していくだろう。ただ、そのラバーソールには、今も探求を続けてきた創業者ヴィターレ・ブラマーニの魂が宿り続けているのだ。

PROFILE|プロフィール
眞田 くみ子(さなだ くみこ)
眞田 くみ子(さなだ くみこ)

ヴィブラム ジャパン代表取締役。1996年にイタリアのヴィブラム社に入社。イタリアでは、デザインやマーケティングを担当。2012年9月19日にヴィブラム ジャパンを立ち上げ、本社があるイタリアを中心に各国を飛び回る。

Text by Yasuyuki Ushijima

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