Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo

【リレーコラム】汝自身を知れ(亜鶴)

PROFILE|プロフィール
亜鶴
亜鶴

1991年6月13日生まれ 
DOZiNEにて『SUICIDE COMPLEX』を連載中
Instagram

未だに自分のことがよくわからない。確実に世間様と違うとされるところは、顔まで含む全身がタトゥーによって覆われていることくらいだろう。そのことによって常時大量の視線を浴び続けている。
私は異常者なのだろうか。
普段、私は絵を描き、タトゥーを彫り、たまにこうしてテキストを綴り、あるときは教鞭を執り、またある時はホテルなどの内装ならびにインテリアデザインを請け負い暮らしている。
私なりに至極真っ当に社会と接続している自負はある。
しかし、そういった”暮らし”を度外視し、非常に視覚的であるタトゥーをあげつらい、大衆は常にタトゥーを邪悪あるいは異形の存在、要は”私とは関係のない異常なあなた”として扱ってきた。その結果が世に散見される”タトゥーお断り”だ。
銭湯にいけないでしょ? プールにいけないでしょ? ジムは? などと聞かれることも多い。
特段に銭湯もプールも我が人生において何らウェイトを占めていないので別に行けようが行けまいがどうだって良いのだが、10年ほど前、普通車の免許を取るにあたりタトゥーが入っているか否かの問診を教習所から受け、困惑した。タトゥーが入っている場合、免許合宿への参加は難しい旨を告げられたのだ。そのため、教習所に問い合わせると「隠せるならば」との回答を得た。そもそも車とタトゥーに何の関係があるのだろうか。
これが”暗黙のルール”なのだろうか。
もっとも、そうした社会設計の中、”異形である私”を誇り、傲る、タトゥーという身体の所有者も一定数いることにはいるのだが、そのような「オラついた何某か」は、タトゥーに限って存在する話ではない。社会の最小単位が個人であり、民主主義国家を名乗る日本においての一個人である私という社会から見れば、タイトなスーツを着て髪をジェルで撫でつけ声高に仮想通貨の相場の話をしたり、家庭の愚痴をこぼすことでストレスの発散に努めたりなど、ありとあらゆる場面においてもある種オラつきといえるものは散見されるので、”タトゥーだから”と取り沙汰されているのを見るたびに辟易する。というのが本音だ。
また、タトゥーによっての”異形である私”を誇る彼らも、身体にタトゥーを施す以前に本質的に”傲りたい”という性格であった場合も多くあるのかもしれないが、彼らは往々にして”傲ること”しか表現の術を知らない。それはたとえばコンビニで働くことができないこと、牛丼チェーン店で働くことができないこと、そうした社会設計の不備に直面した際に暴かれる。我々のようなタトゥーの身体は、いついかなる瞬間も社会からパージされる可能性に備え、怯えなければならない。
タトゥーを施すことによって社会設計の遅さへ怯えねばならず、”傲り”しか手立てを知らない彼らは対抗術として止むを得ず、なお一層傲らねばならなくなる場合も往々にしてある。
1 / 8 ページ
この記事をシェアする