あるファッションを身にまとうとは、単に「身体」=「肉体」の上に外皮をまとわせることではない。鷲田清一が述べる通り、「第二の皮膚」をまとうことである(鷲田 2012: 25-34, 212)。これは単なる比喩ではなく、我々は自己(の身体)の諸イメージを断片的にしか獲得できず、それらを「縫い 上げて」はじめて「身体」が作り上げられるのである。それを経ていない「本当の無垢な身体」は存在しない。ファッションはそのようにして我々と関係を取り結んで来た。
もっと言えばファッションとは身体の表面を変更させるだけでなく、「生存と感受性のスタイル」なのであり、それはわれわれの抱く細やかな欲望さえも垣間見えさせるものである(鷲田 2012: 252-256)。またそれは同時に、私自身の限界を超えたいという自己破壊的欲望を示すものなのである。しかも、身体や性への意識が社会において劇的に変容する中でファッションも変貌を被ってきたのであり、その最初の大変革がまさに本稿の扱うヒッピーファッションないしサイケデリクス・ファッションだったのである。
私は普段いわゆるヒッピーファッションを身にまとっている。ヒッピーファッションとは具体的に言うと長髪、ヒゲ、タイダイ染めのシャツ、ヘアバンド、ジーンズ、ピースシンボルなどを身にまとうものである。適当にインターネットで検索すれば大体わかっていただけると思う。
この記事は会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。 会員登録でできること
- 会員限定記事の閲覧、
音声読み上げ機能が利用可能 - お気に入り保存、
閲覧履歴表示が無制限 - 会員限定のイベント参加
- メールマガジン配信で
最新情報をGET