DDAAの近年有名な活動のひとつは「Hackability of the Stool」だろう。Artekの名作家具であるStool60をタイトル通り「ハック」して、さまざまな用途やツールとして使えるようにするプロジェクトだ。100種類ものスツール(当然のように座れないものも含む)が生まれ、最初はInstagramで発表されていたが、現在は世界各地で展示されている。
「Hackability of the Stool」のプロジェクトを含め、わたしの元木さんの印象のひとつは、マテリアルの扱い方があまりに柔軟な人というものだ。多くのプロジェクトで「それも素材としてみなすのか」という発見がある。完成品としか見えない道具も素材の一部のように捉え、逆にどうやっても未完成のままになりそうなものでも空間の一部として仕上げてしまう。自主プロジェクトでもクライアントワークでも、都会的で実験的な雰囲気を「そのまま」の素材がつくり出している。それは、Massifの空間でも随所に見られる。
「基本的な考え方として、床、壁、天井はできるだけそのままです。大橋会館はあと5年ほどで取り壊しが決まっているので、内装にはほぼコストはかけずに、家具に注力しました。カーテンはOnder de Linde、ソファの ファブリックはPUBLIC CRAFTSにデザインを依頼。フローリングも大橋会館の前のレストランで使われていたものをラグのような形にトリミングしています。既存の壁を剥がし、RC造の質感に合わせてできるだけ少ない素材で仕上げました。その代わりに、オーガニックな質感の家具を置いています。ここで出す料理の雰囲気にも合うかなと」