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ハンティングワールド×デサントが挑む、“伝統と革新”の融合

2025.12.17
2023年秋冬に始動した、ハンティングワールドとデサントの協業プロジェクト「ハンティングワールド クラフテッド バイ デサント.ラボ」。アウトドアをルーツに持つプレミアムラグジュアリーブランドと、ハイエンドスポーツブランド、一見異なる領域にある両者がなぜ共創に至ったのか。その背景と、両社の知見が結実したプロダクトについて、デサントジャパン株式会社の山田満さんに話を聞いた。

PROFILE

山田 満(やまだ みつる)

デサントジャパン株式会社

クリエイティブ・ディレクター/デザイナー

1965年、冒険家のロバート・M・リーによって創設されたハンティングワールド。アウトドア対応の強度を備えた革新的な素材「バチュークロス」を用いたバッグは、アウトドアシーンの機能性を背景にしながらも、洗練されたデザインで世界中のファッショニスタから支持を集め、ファッションブランドとして確固たる地位を築いた。
「ハンティングワールドは歴史あるブランドですが、ブランドのシグネチャーであるバッグやガーメントの印象が非常に強かった。そこでアパレルの領域をより強化するために、弊社にお声がけをいただきました」
一方、1935年創業のデサントは、高機能素材を駆使して、アスリートを支えるスポーツブランドとして進化を重ねてきた。
「アパレルといえども得意領域が異なるため、どういう協業ができるかと最初は悩みました。そこで我々らしいコンセプトとして、“AUTHENTICITY MEETS TECHNICAL INNOVATION(オーセンティックとテクニカルによる革新の出会い)”を掲げました。
ハンティングワールドが持つオーセンティックな世界観と、デサントのテクノロジーを融合させる。そんな実験的な側面もある取り組みとしてスタートしました」

伝統と革新が融合したプロダクトができるまで

ハンティングワールドはそれまでも外部デザイナーを迎え、過去の名作を現代の感性と技術で再解釈するアプローチにより、ブランドの歴史と世界観を継承したアパレルコレクションを発表していた。
「ただ、ハンティングワールドのアイコンである『バチューコレクション』の50周年という節目を迎え、ブランドとして新たな方向性を模索していた時期でした。そこで、ここからブランドをさらに発展させるべく、私たちの強みを掛け合わせたまったく新しいラインを立ち上げることになりました」
しかしオーセンティックとハイテクノロジーという、異なるブランド文化を持つ両社の融合は容易ではなかった。
「新しいものをやりたいという思いはお持ちでしたが、“これはハンティングワールドらしいのか、らしくないのか”という議論になる。たとえばステッチひとつとっても、彼らはステッチの見せ方に“らしさ”を求める。一方我々は機能性を最優先に考えているためステッチひとつであっても極力排除したい。真逆の発想になるわけです」
このギャップを埋めるため、山田さんは創業者の資料を徹底的に読み込み、ハンティングワールドというブランドの本質を探っていった。
「バチュークロスは、今でこそオーセンティックなイメージがありますが、発売当時としては非常に革新的な素材でした。資料を読み進めるうちに、彼が本質的にやりたかったのは“最先端のものづくり”だったのではないかと感じたのです。これはデサントとも共通するフィロソフィーだと気づきました」
そこで山田さんは“見た目のらしさ”にこだわるのではなく、ものづくりの“フィロソフィー面でのらしさ”を形にしようと提案した。
「当時はできなかったことでも、今の技術であれば叶えることができる。彼がもし今の時代に生きていたら、こういうテクニカルな素材に興味があったのではないか。そう考えてハンティングワールドの世界観を哲学的な意味で維持しながら、デサントらしいテクノロジーを加えることになりました」

ブランドの“らしさ”を素材開発におけるテクノロジーで表現

その着地点となったのは、素材開発だった。ハンティングワールドが採用してきたオーセンティックな素材を、合繊繊維で再現するというアプローチを取ることにしたのだ。
「初年度はスエード調の『シンセティックスエード』から始まりました。続いてレザー、ツイード、リネン、そして今季はベロアに挑戦しています。『シンセティックベロア』の裏には防水フィルムを貼り、2層構造にしていますが、ベロアの起毛が潰れたり、不自然な光沢が出たりしないよう、微妙な圧着バランスを追求しました」
滑らかで上品な光沢感を持つ「シンセティック・ベロアツイル」
開発に時間をかけてまで、天然素材を合繊繊維で表現するのには理由がある。
「最大の利点はイージーケアです。たとえば天然素材のスエードは洗濯できませんが、我々の合繊繊維であれば、洗濯機にも乾燥機にもかけられます。コットンライクでありながらシワになりにくいシャツを作ることも可能です。これはユーザーにとって大きな価値だと考えています」

ハンティングワールドのポテンシャルを引き出すベロアダウン

「シンセティック・ベロアツイル ウォータープルーフ ダウンジャケット」209,000円(税込)
デサントの技術力は、素材だけでなく構造にも表れている。
「私たちには“Form Follows Function”というデザインフィロソフィーがあります。一言で言い表すなら、『形状は機能に従う』。つまり機能こそが形を作り出すという思想です。
例えば、シンセティックベロアを使ったダウンジャケットは、内側のダウンパックの隔壁に、ステッチではなく通気性を持たせたテープを使用しています。これにより空気だけが移動できる構造となり、着用時の圧迫感や動きづらさを軽減することができます」
羽毛は押し潰されても自然に戻る特性を保つため、空気が流動しても保温性が損なわれることはない。だからこそ、車移動や室内外を行き来する都市生活者にとって、快適さを保ちながら動きやすいことも重要だと考え、設計されている。
フードは取り外し可能なディタッチャブル仕様
「またダウンは水にぬれると保温性が低下するため、シンセティックベロアと防水フィルムの2重構造に加え、裏面には高耐水、高透湿ラミネート加工を施しました。縫い目の裏側には防水のシームテープ加工を施すことでジャケット内部への水分の浸入を防いでいます」
取り外し可能なフードやマチ付きポケット、ワンタッチでアジャストできる袖のバックルなど、細部にもデサントの技術が生かされている。
袖口はテープを引くことで容易にサイズ調整が行える独自のアジャスターを装備
この取り組みはハンティングワールドだけでなく、デサント自身にも大きな刺激となっている。
「デサントのプロダクトは合繊繊維がメインで、天然素材にはあまり踏み込んできませんでした。ただ合繊繊維のテクノロジーは驚くほど進化しています。その最新技術でいかに天然素材を再現できるのか。
この挑戦は合繊繊維の可能性を拡張するものであり、今後の自社の商品開発においても、必ず生きてくると思っています。私たちはハンティングワールドのポテンシャルを高めるお手伝いが少しでもできればと考えていますが、それが結果的にデサントの価値向上にもつながります。
私たちがこだわる機能性至上主義とは、機能を極限まで追求することで新たな価値を生み出し、使う方の心を動かしたいという思いから生まれています。その機能を駆使して、ハンティングワールドの新たな魅力を開拓していきたいと考えています」
テクノロジーによって“らしさ”を再構築することがブランドの進化につながる。「ハンティングワールド クラフテッド バイ デサント.ラボ」が示したのは、クラシックの再定義──オーセンティックとテクニカルが融合したその先に、未来のクラフトマンシップの姿が見えてくる。

Text by Junko Hayashida

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