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和紙がスポーツソックスを変えた! イトイエックスが実現したムレにくい構造
長時間走るランナーにとって、足のムレは避けては通れない問題だ。シューズ内に汗や熱がこもれば、ソックスは肌にまとわりつき、指の間はベタつく。雨や水たまりでぬれれば不快感はさらに増し、マメや臭いの原因にもなっていく。
Itoix(イトイエックス)の「ランニングソックス」は、そんな足元の水分環境に和紙素材で真正面から向き合う一足だ。主原料にマニラ麻由来の和紙繊維を用い、その多孔質構造によって水分を吸収・分散・放出しやすい状態をつくり出す。
ウルトラランナーや長時間ブーツを履く自衛官にも選ばれていることは、このソックスが過酷な足元に応える機能を備えている証拠といえる。なぜ和紙のソックスは、厳しい環境下でも足元の快適性をキープできるのか。株式会社itoix代表の社川拓矢さんに聞いた。
PROFILE
社川 拓矢(しゃがわ たくや)
株式会社itoix代表

「ムレにくさ」を追求したら、和紙に辿り着いた
最初に足を入れて印象的だったのは、一般的なスポーツソックスとは違う肌離れの良さだった。綿のようにフワッと包み込まれる感覚でも、化学繊維のようにツルッとした感覚でもない。足裏にかすかな凹凸を感じる、独特のシャリ感がある。走って汗をかいても、生地が足裏に張り付く感じはほとんどない。ソックスの中に湿気が残りにくく、脱いだあとも足裏がじめっとしない。この乾いた感覚こそ、イトイエックスのソックスを特徴づけるものだろう。

「重要なのは、シューズ内に水分を留めないことです。汗や雨で足元が湿れば、ムレやベタつきだけでなく、マメや臭いの原因にもなります。そこに、和紙素材の特性が真価を発揮するんです」
単なる紙ではなく、マニラ麻由来の機能繊維
和紙と聞くと、どうしても薄くて破れやすい紙を想像してしまう。しかし、イトイエックスが使っているのは、衣料用途に加工された特殊な和紙繊維だ。主原料はマニラ麻とも呼ばれる天然植物繊維のアバカだ。軽量でありながら繊維が強く、耐久性にも優れている。このアバカを原料にした極薄の和紙を約1.5mm幅のテープ状に裁断し、撚りをかけて糸にする。その和紙糸をソックスとして編み上げている。
「肌に触れる内側に和紙糸がくるように設計しています。だからこそ、履いた瞬間に感じるシャリ感やドライな肌触りが生まれるんです」
ただ、和紙は一般的な繊維に比べて伸縮性が少ないため、そのままではソックスに仕立てにくい。そこで和紙をテープ状に裁断して撚りをかけ、柔軟性を持たせることで靴下として編み上げられる糸へと加工している。
とはいえ和紙糸は伸びにくく、編み立てのテンション管理も難しいため、製品化には素材の特性を理解した工場の技術が欠かせない。この和紙糸を使って製品化できる工場は限られるという。

多孔質構造が水分を吸って逃がす
マニラ麻由来の和紙繊維には、「多孔質」という特性がある。多孔質とは、繊維の表面や内部に微細な孔が無数にある構造のこと。この孔が、汗や雨などの水分を一ヶ所に留めず、繊維全体へ分散させる。ランニングや歩行の動きそのものが水分の排出につながる点も興味深い。地面を踏みしめるたびにソックスへ圧力がかかり、足が地面から離れると圧力が抜ける。この繰り返しによって、繊維内に分散した水分が空気とともに外へ移動しやすくなるという。
「吸った水分を抱え込まず、動きの中で逃がしていく。多孔質構造が足元の水分環境を整えることで、ムレにくさやドライな履き心地が生まれます」

マメや臭いの原因にもなる“湿った足元”
足元に水分が残ることは不快感だけの問題ではない。パフォーマンス低下の深刻な原因にもつながる。「ランニング中の足マメは、摩擦と水分が重なることで発生しやすくなります。汗で皮膚が湿ると柔らかくなり、シューズやソックスとのわずかなズレでも負荷がかかりやすい。その状態で着地と蹴り出しを繰り返すことで、水ぶくれができやすくなるんです」
同社が重視するのは、摩擦そのものを強引に抑えることではなく、摩擦を大きくする要因である水分環境を整えることだ。足元をドライに保てれば、皮膚がふやけにくくなり、マメができにくい状態を維持することができる。

「水分は臭いにも関係します。そこで足の臭いの原因のひとつとされるイソ吉草酸ガスに対する消臭性能についても、第三者機関で確認しています」

過酷な環境で求められる機能性
イトイエックスのソックスには、ウルトラランナーや長距離ランナーから「長時間走っても足がさらっとしている」「ムレやベタつきが気になりにくい」といった声が寄せられているという。こうした性能は、自衛隊駐屯地内の売店で取り扱われていることからもうかがえる。自衛官は演習や災害派遣などで長時間ブーツを履き続けることが多く、靴下を頻繁に替えられない環境では、速乾性や耐久性が足元の快適さを左右する。ムレを抑えながら長時間履き続けられる点が、こうした過酷な現場でも評価されている理由のひとつだ。


和紙という一見スポーツとは縁遠いと思われる素材を、スポーツソックスへ応用したイトイエックス。同社のランニングソックスは、足元を快適に保つためのギアとして、ランナーから過酷な現場で働く人々まで着実に支持を広げている。
Text by Ryota Osujo












