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“コンビニでいい服が買える”はなぜ実現した? ファミマ「コンビニエンスウェア」5周年の戦略
創立45周年となる株式会社ファミリーマートが展開する「コンビニエンスウェア」が、2026年にブランド設立5周年を迎えた。デザイナー落合宏理さんとの共同開発のもと「コンビニで洋服を買う文化」を創出するという前例のない挑戦は、コンビニ・アパレル業界の常識を覆す快進撃を続けている。
今回、同社ライフスタイル本部のCW・雑貨部でコンビニエンスウェアを担当する須貝健彦さんに、ブランドの軌跡とその成長の裏側、そして2026年春夏コレクションの注目ポイントについて話を聞いた。
PROFILE

須貝 健彦(すがい たけひこ)
株式会社ファミリーマート ライフスタイル本部 CW・雑貨部
コンビニで服を買うという経験
かつてコンビニエンスストアにおける衣料品といえば、急な出張や雨天時の着替えなど、緊急時に仕方なく購入するものが大半だった。デザイン性や着心地は二の次で、あくまで間に合わせに過ぎなかった。しかし、2021年3月に全国展開を開始したファミリーマートのコンビニエンスウェアは、その概念を根底から覆した。須貝さんは「コンビニで洋服を買う文化を作ることで、新しい需要が創出できるのではないか」という明確なビジョンが当初からあったという。
初めはタオルやソックス、ハンカチといった既存カテゴリーのブラッシュアップから始まったが、素材、デザイン、技術のすべてにおいて妥協のないクオリティを追求した結果、購入者層や需要は確実に拡大していった。

現在、コンビニエンスウェアの売上は、毎年130%以上という驚異的な成長率を記録し、2025年度は売上200億円を突破した。この数字は、コンビニエンスストアの衣料品カテゴリーとしては異例の数値である。「コンビニでただ服が買えるということではなく、“いい服”が買えるということをしっかりと伝えたかった」と須貝さんは語る。
この5年間で、ラインナップは全身のトータルコーディネートが可能なまでに拡充された。もはや緊急時の代用品ではなく、ファミリーマートで服を買うことを目的に来店する指名買いの対象へと進化した。
5周年を機に展開された大規模なプロモーションやテレビCMは、老若男女、人種も関係なく、だれにでも着用できる服を展開するという、ファミリーマートの強い思いが表れている。
45周年を彩る元気なカラーの正体
2026年春夏コレクションは、ファミリーマート創立45周年というメモリアルイヤーとも重なっている。今回のコレクションで特に目を引くのが、鮮やかで力強いカラー展開だ。須貝さんは、今シーズンのカラー選定について「会社全体、お客様も含めて、元気になるような色」を意識したと話す。具体的には、緑やオレンジといったエネルギッシュな色彩が中心となっている。

コンビニエンスウェアの特徴のひとつに、シーズンごとのテーマカラー設定がある。売り場に無秩序に色を並べるのではなく、シーズンカラーを軸にソックス、Tシャツ、タオルなどを展開することで、統一感のあるコーディネートを提案している。
このカラー選定においても、落合さんのクリエイティビティが遺憾なく発揮されている。「今シーズンはピンクが流行りそうだから」といった市場の後追いではなく、落合さんの感性に全幅の信頼を置いていると須貝さんは強調する。
また、定番アイテムであるソックスにも、細やかなアップデートが施された。人気のラインソックスの履き心地をそのままに、白と黒の「パイルソックス2足組」が登場した。

リピーターが口を揃えて絶賛する足底のクッション性を高めた仕様を引き継いでいることで、ビジネスなど活躍の場が一層広がることだろう。多様な顧客ニーズに応えつつ、お客様の満足度を向上させるための戦略的な判断だといえよう。
完売続出「サングラス」に見るヒットの法則

コンビニエンスウェアの進化を象徴するアイテムのひとつが、昨年発売され大きな話題を呼んだサングラスだ。当初の想定をはるかに超え、計画の約3倍もの売れ行きを記録したこの商品は、コンビニエンスストアにおける雑貨販売の可能性を大きく広げた。
須貝さんはサングラスのヒット要因について、「二極化する市場の隙間」を突いた点にあると分析する。市場にはハイブランドの高価なものか、安価でクオリティは求めないものかという状況だった。そこに、デザイン性が高く、かつコストパフォーマンスに優れた選択肢を提示したことで、消費者の潜在的なニーズを呼び起こしたのだ。

注目したいのは、その機能性とデザインのバランスだ。コンビニエンスストアという限られた売り場では、サイズ展開を増やすことが難しい。そこで採用されたのが「バネ蝶番」という技術である。
テンプル部分が外側に広がる構造にすることで、顔の大小に関わらずワンサイズで多くの人にフィットする設計を実現した。また、レンズの色も完全に真っ黒ではなく、日常使いしやすいトーンに調整されている。目を守るという実用的な需要と、ファッションアイテムとしての魅力を両立させた点が、性別や年齢を問わず支持された理由だ。

2026SSでは、このサングラスに新色として「クリアブラウン」と「ブラウンミックス」が登場した。黒一色だった展開からバリエーションが増えることで、よりファッションに合わせた選択が可能になる。店舗では、主力のアウターTシャツの上段にサングラスを陳列するなど、ファッションイメージを提示して、さらなる認知拡大を図っていく計画だ。
落合宏理さんとの共創が生むクオリティ
コンビニエンスウェアの成功を語る上で欠かせないのが、クリエイティブディレクターである落合宏理さんとの強固なパートナーシップだ。「いい素材、いい技術、いいデザイン。」というコンセプトは、単なるスローガンではなく、ものづくりの現場で絶対に譲ることのできない考えとなっている。昨今の原材料費や人件費の高騰は、低価格帯の商品にとって大きな逆風となる。しかし須貝さんは、「クオリティを下げた瞬間にブランドの価値は失われる」と断言する。
安易なコストダウンに走らず、親会社である伊藤忠商事の繊維ネットワークを最大限に活用しつつ、必要に応じて外部のルートも開拓することで、品質と価格のバランスを維持している。
そのこだわりは、ブランドの柱へと成長した「アウターTシャツ」にも表れている。かつてコンビニで売られているTシャツといえば、ワイシャツの下に着るような肌着が常識だった。

しかし、コンビニエンスウェアは「1枚で着られるTシャツ」を開発し、新たな市場を切り開いた。素材の選定からシルエットの調整まで、落合さんと共に徹底的に作り込んだ結果、今ではブランドを代表するアイコン的商品となっている。
また、店舗展開においても、ブランドの世界観を表現するための工夫が凝らされている。2026年度からは売り場を什器3.5台規模へと拡大し、什器の細部に至るまで陳列デザインを統一する。商品の欠品時でもブランドイメージを損なわないよう、棚の背面にシルバーの板を設置するなど、緻密な計算がなされている。これらはすべて、コンビニエンスストアという日常の空間に、アパレルブランドとしての特別感を埋め込むための試みといえよう。
ファミリーマートの新たな定番に
5周年を迎えたコンビニエンスウェアが見据える未来は、アパレルの枠を超えて広がり続けている。須貝さんが注目してほしいと語るのは、4月末に予定されている「時計」のデビューである。コンビニエンスストアで時計を販売するという試みは、これまでの常識では考えられなかったことだが、すでに大きな注目を集めている。
さらに、気候変動に対応した機能性商品の発売も進んでいるようだ。猛暑やゲリラ豪雨といった過酷な環境下でも快適に過ごせるアイテムを投入することで、生活者のリアルな課題解決を図る。
グローバル展開が加速している点も見逃せない。すでに台湾での販売がスタートしており、現地でも高い評価を得ているという。海外からの観光客が土産としてラインソックスを大量購入する姿も珍しくなく、日本発のコンビニエンスウェアが世界的なブランドへと成長しつつある。
「ファミチキやカウンターコーヒーと並ぶ、ファミリーマートを選ぶ理由のひとつになりたい」
須貝さんが語るこの目標は、決して夢物語ではない。日常の風景を変え、新しい文化を創り出してきた「コンビニエンスウェア」は、次の5年で私たちの生活をさらに豊かに彩ってくれるに違いない。











