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紫外線から腕を守る装備: モンベルの「WIC.UVテクト アームカバー」はいかにして生まれたか?

2026.05.15
アウトドアにおいて、紫外線対策は「肌を覆う」という選択に偏りがちだ。だが、それだけでは快適とは限らない。夏は熱がこもり、動きやすさも損なわれる。
そこでモンベルが導き出したひとつの答えが、「WIC.UVテクト アームカバー」である。紫外線対策を環境に適応するための装備として捉え直す。その発想から生まれたこのプロダクトの設計を、株式会社モンベル 広報部の長井洋高さんとともに読み解く。

PROFILE

長井 洋高(ながい ひろたか)

株式会社モンベル 広報部

カラーバリエーションはライトグレー、ホワイト、ブラックの3色展開。「WIC.UVテクト アームカバー Men’s」 各2,600円(税込)写真提供/モンベル

直射日光にさらされやすい腕をカバーする

モンベルでは、紫外線対策のアームカバーは2009年から展開されてきた。このアイテムを語るうえで重要になるのが、そもそもなぜ腕や手を覆う必要があるのか、という点だ。
人体の中でも腕は、行動中に露出しやすく、かつ直射日光の影響を受けやすい部位である。とりわけ前腕は日差しを直接受け続けることで表面温度が上昇しやすく、体感的な暑さや疲労感の増加にもつながる。さらに体温を下げようと発汗量も増えるため、紫外線と熱、汗という複数の要素が重なり、不快感や疲労感が増幅されやすい。
「現代のアームカバーには、単に前腕部の露出を減らすだけではなく、紫外線を遮りながら熱を逃がし、汗を処理する、という機能が求められます」
山では標高が1,000m高くなるごとに紫外線の強さが約10%増加すると言われている。フィールドを半袖のウエアで行動する際は、アームカバーは必須の装備といえる。写真提供/モンベル
その役割は日焼け防止にとどまらない。直射日光による体温上昇を抑え、発汗時の不快感を軽減するなど、体のコンディションを維持するための装備として機能する。
とりわけ真夏のアウトドアでは、長袖では暑く、半袖では露出が増えるというジレンマが生じる。その点、アームカバーなら必要に応じて着脱できるため、環境や運動量に合わせた温度調整が可能になる。
つまりアームカバーとは、状況に応じて体の露出をコントロールする“可変的なレイヤー”といえる。アウトドアから日常まで使用シーンが広がっている背景には、この機能的な特性がある。
女性の体格に合わせて設計されたウィメンズモデル。「WIC.UVテクト アームカバー Women’s」 各2,600円(税込)写真提供/モンベル

「快適に行動できること」をコンセプトに開発

そうした文脈の中で、モンベルが2026年春夏シーズンに発売したのが「WIC.UVテクト アームカバー」である。
「開発の背景にあるのは、やはり近年の猛暑です。強い紫外線にさらされる時間が長くなる一方で、気温や湿度の上昇によって、従来の“覆うだけ”の対策では快適性を保ちにくくなっています。効果的に紫外線を防ぐだけでなく、運動量の多いアウトドアシーンで快適に行動できるような素材を使用しています」
その設計を支えているのが、新素材「ウイックロンUVテクト」だ。
「モンベルが開発した高い紫外線保護指数と速乾性を備えた素材です。紫外線から肌を守りながら、汗を素早く吸水・拡散し、ドライな状態を保ちます」
ウイックロンUVテクトは、繊維間の細い管状の空間を伝って液体が移動する毛細管現象によって水分を素早く拡散させる。写真提供/モンベル
紫外線保護指数は最高レベルのUPF50+。UPFとは、衣類がどの程度紫外線を防ぐかを示す指標で、50+であれば、未着用時と比べて日焼けするまでの時間を50倍以上遅らせるとされる。
ウイックロンUVテクトは、最高レベルのUVカット性能(UPF50+)と高い吸水速乾性・通気性を備えた高機能素材。モンベルでは今季からこの素材を使ったさまざまなウエアを展開している。写真提供/モンベル
通気性にも優れ、熱を外へ逃がすことで着用時のこもり感を軽減する。さらに制菌防臭機能も備えることで、長時間の着用でも臭いにくい状態を保つといううれしい効果もある。
「紫外線対策と快適性は両立が難しい関係にありますが、この素材はその両立を実現しています」
防臭効果もこの素材の特徴のひとつ。長時間の活動でも気になる臭いが発生しにくい。写真提供/モンベル
なお、ウイックロンUVテクト自体はポリエステル100%でできている。ポリエステルは水分を保持しにくい性質を持つため、汗をかいても素早く乾き、肌面をドライに保ちやすい。コットンのように水分を含んで重くなることがなく、長時間の着用でも快適性を維持しやすい。
また、繊維としての安定性が高く、紫外線遮蔽性能を持続しやすい点も特徴だ。耐久性にも優れることから、繰り返し使用するアウトドア用途にも適している。

シンプルなデザインに秘められた機能的なディテール

実際に装着すると、デザインはいたってシンプルだが、一つひとつのディテールが合理的に設計されているところにモンベルらしさが光る。
上腕部にはゴムアジャスターが配置されている。引くだけでフィット感を調整でき、腕の太さに合わせた装着が可能だ。適度にゆとりが確保されているため、圧迫感は感じにくい。
サムホール仕様も特徴のひとつだ。手首からのズレを防ぎつつ、手の甲までしっかりと覆うことができる。
袖口に採用された「スパイラル スランテックカフ」も見逃せない。モンベルが特許を取得しているこのディテールは、縫い目を斜めに配置することで伸縮性を妨げず、締め付けの少ない着用感を実現している。
袖口の縫い目をスパイラル状にすることで、伸縮性を妨げず、締め付け感のない着心地に。写真提供/モンベル
平均重量は約41g(メンズ用)と軽量で、携行性にも優れる。必要なときに装着し、不要になれば外す、という使い方を前提とした設計だ。
もともとは運動量の多い登山などのアウトドアシーンを想定したアイテムだが、近年は日常使いするユーザーも増えつつある。男性の愛用者が増加している点も、その広がりを示している。
モンベルの「WIC.UVテクト アームカバー」は、アームカバーという既存のカテゴリーを猛暑という環境条件の中で再定義したプロダクトである。
紫外線をどのように防ぎ、快適性とどう両立させるか。その課題をクリアした本作は、単なる日焼け防止の道具から、過酷な環境に適応するための“装備”へと進化したプロダクトといえる。

Text by Ryota Osujo

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