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渡辺直美のヘアを手掛けるNEROが語る、ヘアスタイリストの仕事の流儀

2024.12.06
グローバル化が進み、海外で活躍する日本人が増えてきた。今回注目したのは、ニューヨークでショーやブランド広告のモデルのヘアスタイルを担当しているNEROこと根路銘祐平。単身渡米後、自身のアトリエを持ち海外雑誌の表紙のスタイリングを担当するなど、自ら進む道を切り拓き躍進を遂げている人物だ。国内では、渡辺直美さんのヘアスタイリストとしてその名を知っている人も多いはず。
今回のインタビューでは、彼がどのようにしてヘアスタイリストを志し、海外でのキャリアを築いてきたのかを伺った。好きなものやことへのスタンスについて繰り返し話してくれたNEROさんからは、夢を追う人への熱いメッセージがひしひしと伝わってきた。

PROFILE

NERO/根路銘 祐平(ネロ/ねろめ ゆうへい)

1986年、東京都生まれ。日本美容専門学校卒業後、日本で4年間ヘアサロンに勤務したのち、2014年に渡米。世界的なヘアスタイリストBob Recineなどのアシスタントを経て2019年に独立後、NYを拠点にヘアスタイリストとしてVogue USやAnother magazineなどのエディトリアル、Supreme, adidas, Nike,Y3, Helmut Langなどのコマーシャルワークを手がける。その傍らアンディ・ウォーホルのポラロイドシリーズをインスピレーション源に、自作のヘアウィッグを用いたセルフポートレートをスタート。また自身のスタジオにヘアカットに訪れる友人たちをウォーホルが使っていたポラロイド社のビッグショットや、60年代の大判カメラDeardorff8x10で記録するポートレートシリーズが話題を呼び、自身が撮影、ヘア、キャスティングを手がけたエディトリアル「Nero’s World」は、2023年のOffice Magazineの表紙を飾るなど写真家としての活動も精力的に行う。その後、2024年5月には千駄ヶ谷のロンハーマン新コンセプトストア「Under R」でキャリア初となる個展を開催し、1,000人以上を動員。さらに、12月にはアメリカ・カリフォルニアの「authorized gallery」で個展を予定している。
Instagram / 公式サイト

転機は突然に

現在のご活動を教えてください。
ニューヨークでヘアスタイリストをしています。日本だとヘアメイクアップアーティストという言葉があると思いますが、僕の場合はメイクはせず、ヘアを専門としています。
 MA+Groupという事務所に所属していて、雑誌の撮影やブランド広告でヘアスタイルを提案させてもらっています。
 
撮影がない日は、スタジオやアトリエで友人の髪を切ったり、個人的な撮影をしたりして過ごしています。
どういったきっかけで美容業界に入られたのですか。
高校2年生のときに、高野孝喜さんという有名なヘアメイクアップアーティストの美容室が地元にオープンしました。芸能人の名前がずらりと並んだ開業祝いの花に圧倒されたのを覚えています。
 
そこに髪を切りに行った帰りには、美容師になろうと決心しました。こんなに素晴らしい仕事があるのかと、驚きでいっぱいでしたね。
その後、専門学校を出られてからは、どういった道を歩まれたのでしょうか。
卒業後はRITZという美容室に入社し、3年ほど働きました。
 
その後、メイクを勉強するために、パリへ1年ほど留学しました。ところが、雑誌やファッションの歴史を勉強していくなかで、結局目に付くのはすべてヘアスタイルだったんです。それならヘアスタイリストになろうと、思い切って方向転換しました。
もともと80年代から90年代のニューヨークの文化が好きだったこともあり、帰国後お金を貯めて、すぐにニューヨークに移住しました。
NEROさんがニューヨークに構えるスタジオ

ヘアスタイリストとフォトグラファーの側面

ヘアスタイルの着想はどこから得ますか。
強いて言えば、映画だと思います。音楽、映像、衣装、ヘアメイクがうまく組み合わさることで、近未来的な作品にもできるし、中世的な作品にも仕上げることができるわけですから、ある種の総合芸術だと思います。
 
僕の場合、映画を見ながら自分が担当だったらと考えて、スタジオでウィッグを触ってみたりします。
これまでの作品の中で、思い入れのあるものを教えてください。
去年、『オフィスマガジン』の表紙を担当させてもらいましたが、あの現場は楽しかったですね。自分でモデルやスタイリスト、衣装や構成などトータルで作品づくりをすることができました。
 
表紙は渡辺直美さんで、バンダイのフィギュアをカチューシャに付けるというひねったアイディアも、今となってはよく考案できたと思います。
NEROさんが表紙を担当した『オフィスマガジン』©️NERO
どのようなきっかけで『オフィスマガジン』の仕事は舞い込んできたのですか。
僕は基本的に撮影の企画の段階から、パーソナルプロジェクトでスタジオでカットや撮影をしています。
そこで撮った自分の作品をインスタグラムに継続的に投稿していたところ、編集者の目に留まりました。NEROに任せたら面白い表紙になるんじゃないかと期待してくれて、声をかけてくださったという流れです。
渡辺直美さんと仕事でのお付き合いは長いのですか。
直美さんがニューヨークに移住してきたときに、ヘアメイクさんを探していたみたいなんですね。それを相談した相手が、偶然にも僕の知人のネイリストだったんです。それで「NEROが良いよ」と伝えてくれたみたいで、それから一緒に仕事をしています。
 
実は僕がアシスタント時代に、一度直美さんの「PUNYUS(プニュズ)」というブランドの撮影でお会いしていました。だからニューヨークで顔を合わせるのは2度目でしたが、当然僕のことなんて覚えていないと思っていたら、直美さんが、前に会ったことありますよね?みたいな感じで言ってくれて。そこで経緯をお伝えしたところ、すっかり意気投合したんですよね。
渡辺直美さんに限らず、現場ではモデルさんの好みなどを事前に調べたりするのですか。
事前にモデルさんの好みを調べることはありません。僕が担当するのは、ファッションショーやブランドの撮影になるので、そのブランドの洋服であったり、全体のテイストに合わせてモデルさんに合う髪型を探していきます。
常に意識しているのは「瞬発力」です。その場その場の一瞬のひらめきやセンスが大事だと思っています。時間をかければ誰でも作りたい作品は作れますから。撮影の現場では常に不測の事態が起こるので、それにいかに対応できるかが重要なスキルになってくると思います。
その瞬発力のためには、相当の引き出しが必要になってきますよね。
1日24時間ありますが、考え事ができるのは起きている間だけです。休みの日だからといって、何も考えないことはありません。
僕の場合、ヘアスタイリストは仕事ではなく、好きなことをしている感覚です。なので、一日中ヘアのことや写真のことを考えていても、全然疲れないです。
思いついたアイディアをメモすることもありません。メモしなければならないようなアイディアは大したものではないと思っているので。世の中にはたくさんの情報が溢れていますが、ほとんど覚えていないのは、自分にとって大事じゃないからです。
だから、自分の頭の中に残っているアイディアで、常に勝負しています。
自作のヘアウィッグを用いたセルフポートレート。アンディ・ウォーホルのポラロイドシリーズからインスピレーションを得たという。
ヘアスタイリストとしてのやりがいは、どこにあると感じますか。
撮影をしているときに感じるのは、写真を見たときにこの服を買いたいとか、おしゃれしたい、こういう髪型にしたいという感情を読者の方に与えられることですね。これって、すごい素敵なことですよ。
また美容師としての立場から言えば、髪を切ることって、その人の人生を大きく変える力があるなと思います。
一昔前だったら、女性が髪を短く切ったら、失恋したのなんて言われた時期がありましたよね。これは案外理にかなっていると思います。髪型によって印象が大きく変わるので、それに合わせて自分の内面だったりエネルギーが向く方向が大きく変わります。これをサポートできる仕事は美容師だけです。

好きなことをとことん突き詰める

これまでのキャリアを振り返って、転機になった仕事はありますか。
特別この作品が、というのはありません。継続して仕事をして、自分の名前を広めていくことが大事だと思っています。この業界で、一夜にして有名になることはありませんから。
たとえば渡辺直美さんのヘアをやりたいと思ったとしても、ヘアスタイリストになって1年目の人が担当できるかと言われたら、誰でも無理だって考えると思います。それを目標に10年突き進めば、一度くらいチャンスは来るはずです。その一回のチャンスを僕は掴めたのだと考えています。
他の仕事も同じです。クライアントが見も知らぬ人を発掘してきて、仕事を与えたりはしないと思います。継続することで、初めて見える世界があると考えています。
時には大きな壁にぶつかることもあると思います。そのような状況でも、継続して仕事をしていく秘訣はありますか。
僕の信条として、「情熱を持ち続ければ、なんでもできる」というのがあります。好きなことを、とことん突き詰める。興味を絶やさないこと。これに限りますね。
常にいろいろなものに興味を持ったり、見に行ったり、人と話したりして、自分からアクションを起こしていくことが大事です。そうしないと何も起こりません。
仕事柄、学生さんの悩みを聞く機会があるのですが、中には韓国で美容をやりたいという子がいるんですよ。そういう子には、週末に韓国に行って、どういった化粧品が流行っているのか、どういうファッションが流行っているのかといったことを体験しに行くように伝えています。
厳しいようですが、それくらいの情熱や行動が伴わなければ、違う道を進むべきだと思います。
2024年5月には、東京・千駄ヶ谷にあるロンハーマンの新コンセプトストア「Under R」にて、キャリア初となる個展を開催。
今後の展望を教えてください。
直美さんをきっかけに、僕を知ってくれる人が増えたことはうれしいです。ですが、僕自身は昔から何も変わりません。今後もただただ、自分のやりたいことを続けていきたいと思っています 。
僕がニューヨークに来たときに、思い描いていた将来像があって、まだ2割くらいしか実現できていません。8割はやりたいことが残っている状態なんです。
あの雑誌で仕事をしてみたい、こういう写真を撮ってみたい、あそこに行ってみたいとか。やりたいことが多すぎて、時間が足りないと感じています。
ファッションショーが好きということもあって、そのヘアにもチャレンジしたいと思っているのですが、いつかは巡り合わせで取り組む日が来ると信じています。
これから美容業界で仕事をしたいと考える方に向けて、メッセージをお願いします。
僕自身、特別な才能を持っていると感じたことはありません。自分の好きなことに一生懸命向き合ってきた結果が、今に結びついていると感じます。
ヘアスタイリストやメイクアップアーティスト、美容師などの美容業界は、自分が直接人に携わって、その人に幸せを与えられる仕事だと思っていて、こういう職業ってなかなかありません。
ですから、皆さんも情熱を持ち続けて、夢に向かって進んでほしいと思います。苦しい時期があっても、自分は本当にこれが好きなんだという熱い思いさえあれば、いつか必ず形になります。
もし僕の姿を見てヘアスタイリストになってみたいと思う子がいたら、本当に好きなら絶対になれるよと伝えたいですね。

ヘッダーキャプション:©️NERO

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