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「カシミヤ12%」はなぜ導き出されたか? プラステと東レが演算した、暖かさと強度の黄金比率
冬の装いでは、暖かさとスタイリッシュさは長らくトレードオフの関係にあった。重ね着をすれば着膨れし、シルエットを優先すれば寒さに耐えることになる。特に、インナーとトップスの境界線は曖昧で、機能性インナーが見えることや、ニットのチクチク感は、多くの女性にとって冬の悩みだった。
株式会社プラステが2025年冬に発売した「ウォームリザーブカシミヤブレンド」は、この課題に対する一つの明確な回答だ。吸湿発熱・保温・ストレッチの機能を備え、カシミヤを配合することで、インナーとしての機能を持ちつつ、一枚で着られる「Tシャツ」として、インナーとトップスの境界を再定義した。
本記事では、同社商品開発責任者・齋藤源太郎さんへの取材を通じ、東レ株式会社との開発プロセスと、数値に裏付けられた素材設計のロジックを紐解いていく。
PROFILE
齋藤 源太郎(さいとう げんたろう)
株式会社プラステ
MD部 R&D部 生産部 部長
東レとの「近さ」が生んだ開発スピード
「ウォームリザーブカシミヤブレンド」の開発において要となったのは、戦略的パートナーシップを結ぶ東レとの物理的な距離の近さだ。プラステのほか、ユニクロやジーユーを展開するファーストリテイリンググループのオフィスには、東レ担当者が常駐しており、開発チームは日常的に議論できる環境にある。
齋藤さんは、この環境が開発プロセスに与える影響についてこう語る。
「商品開発において、何か新しいアイディアが浮かんだり、課題にぶつかったりした際には、すぐに東レさんのところへ行って、素材に関して直接対話をしていました。今回のウォームリザーブカシミヤブレンドの開発でも同様です」
目指したのは、オフィスの「きちんと感」と日常の「カジュアルさ」の融合。微細な調整と検証を繰り返す上で、この濃密なコミュニケーション環境こそが、複雑な素材設計を可能にしたのだ。
強度とコストの狭間で決断した「12%」

一般的にカシミヤ混の製品といえば、5%程度で「カシミヤブレンド」を謳うものもあれば、100%の純度を売りにするものもある。
なぜ、あえて12%という数値が選ばれたのか。そこには、物性(強度)、コスト、そして機能(風合い)という3つの要素が複雑に絡み合うトレードオフの関係が存在する。
「カシミヤは多ければ多いほど風合いが柔らかくなり、着心地もアップします。ですが、多すぎると手に取りやすい価格で出せなくなったり、洗濯耐久性が弱くなったりしてしまう。風合いの良さ、日常着としての強度、そしてお客様が手に取りやすい価格。この3つのバランスがもっとも良い地点を探り続け、数多の試作を重ねた結果、落ち着いたのがこの12%という数値でした」
齋藤さんの言葉からは、この数値が感覚的に決められたものではなく、膨大な検証データの末に弾き出された「閾値(しきいち)」であることが窺える。日常的に洗濯機で洗えるイージーケア性を維持しつつ、袖を通した瞬間に「上質さ」を感じさせる肌触りを確保する。さらに、5,000円以下という戦略的な価格設定を維持する。
これら全ての条件が交差する一点が、12%という比率だったのだ。
4種の繊維が織りなす熱と構造
「ウォームリザーブカシミヤブレンド」の素材は、カシミヤ単体で成立しているわけではない。レーヨン、アクリル、カシミヤ、そしてポリウレタンという4種類の繊維が、それぞれ明確な役割を持って機能する「ハイブリッド構造」によって成り立っている。
齋藤さんは、それぞれの繊維が果たす役割について、次のように解説する。
「吸湿発熱、保温、ストレッチという3つの機能を一つの素材で実現するために、それぞれの特性を生かした設計にしています。
まず、レーヨンが身体から出る水分や水蒸気を吸着して発熱します。次に、アクリルがその熱を逃がさないように保温する。そこにカシミヤが加わることで、さらなる保温性と滑らかな風合いが生まれます。そして、ポリウレタンが入ることで伸縮性が生まれ、着心地の好さを支えているのです」
これら4種の繊維が、まるでリレーのように各機能を受け渡すことで、薄手でありながら高い防寒性能を発揮する。齋藤さんが「それぞれの特性を生かした素材のチョイスになっている」と語る通り、これは偶然の産物ではなく、意図的に設計された機能の集合体なのだ。
暖かさと美しさを両立する「空間」の設計

素材の機能性を最大限に引き出し、単体でも使えるファッションアイテムとして成立させるためには、デザインとパターン設計が鍵となる。齋藤さんが特にこだわったのは、インナーウエアとアウターウエアの境界を取り払うことだった。
「あくまでも、肌着として作っているわけではありません。たとえばジャケットを羽織ったときに、肌着感が出ず、脱いでも恥ずかしくないものにしたかった。そのためには、身体へのフィット感が重要です。
ピタピタで作ってしまうと身体のラインを拾いすぎてしまうし、大きすぎると太って見えてしまう。ボディラインはストレートにし、つかず離れずのゆとりあるサイズ設定にしました」
この「つかず離れず」という表現は、機能的な側面から見れば、身体と生地の間に適切な「クリアランス(空間)」を設けることを意味する。この空間には2つの重要なメリットがある。
一つは、断熱効果の向上だ。生地と肌の間に空気の層が生まれることで、素材自体の保温機能に加え、物理的な断熱層が形成される。これにより、外気の影響を受けにくく、衣服内の温度を一定に保つことが可能になる。

もう一つは、体型補正効果だ。生地の肌への張り付き(ボディラインのピックアップ)を防ぐことで、背中や脇のラインを拾わず、着用者を華奢に見せる視覚効果が生まれる。齋藤さんが「一枚で着てもおしゃれに見える」と自信を覗かせる理由は、この空間設計にある。

さらに、袖のデザインにも機能美が宿る。
「袖にはゴムシャーリングを入れて少し長めに作っています。手首までしっかり隠れることで、物理的に暖かい。また、ジャケットやニットの袖口からあえて見せることで、着こなしのアクセントにもなります。インナーなら隠す袖を、逆に見せる仕様にすることで一枚着としての完成度を高めました」


手首は血管が皮膚の近くを通る部位であり、ここを温めることは全身の体感温度を上げるために効率的だ。機能としての防寒と、レイヤードスタイルとしての装飾性。この両者を「シャーリング」というディテールで解決した点は、プラステらしい実用的なアプローチと言えるだろう。
着る人の生活を豊かにする「LifeWear」を目指して
今回のシリーズは専用のギフトボックスに入った状態で販売されている。これには、自分用としてだけでなく、ギフト需要に応える狙いがある。
「プラステの商品をプレゼントとして贈りたいというお声を多くいただいていました。価格帯的にも5,000円以下と手に取りやすく、上質なボックスに入っていることで特別感も演出できます。誰かに贈りたくなるようなパッケージデザインにもこだわりました」
最後に、齋藤さんはこのシリーズが目指す価値について、次のように締めくくった。
「おしゃれと防寒の両方が叶う、毎日着たくなるような上質な一枚です。特別な日のための服ではなく、日常の中で着る人の生活を豊かにする『LifeWear』を目指していく中で、この商品も多くの方に手に取っていただきたいと考えています」
東レとの強固なパートナーシップと、緻密な素材設計によって生まれた「ウォームリザーブカシミヤブレンド」。それは、機能性と美意識を両立させたいと願う現代の女性たちにとって、冬の装いの新たなスタンダードとなる。













