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ワコールが本気で作った夏のブラトップ「シンクロブラトップ 吸汗速乾」開発の裏側
しめつけの少ないラクな着ごこちを求める声に応えてアンダーゴムをなくした一方で、なぜブラジャーに匹敵する美しいシルエットや、過酷な夏を乗り切るための数々の機能まで詰め込むことが可能なのか。
この記事では、ウイングブランド 商品企画課の松尾麻未氏に、「シンクロブラトップ」シリーズのうち、吸汗速乾タイプの開発の舞台裏について伺い、下着メーカーが挑むインナーウエアの快適性設計の現在地を明らかにする。
PROFILE

松尾 麻未(まつお あさみ)
株式会社ワコール ウイングブランド 商品企画課
パタンナーを経験した後、ウイングブラジャー全般のデザイナーに。2022年からシンクロブラトップの商品開発を担当
「ラクさ」と「美しさ」の相反するニーズに応える
2018年頃、ノンワイヤーブラのニーズの高まりとともに、下着の選択肢が多様化していた。ワコールが行った調査によると、ブラトップユーザーから「夕方になるとアンダーゴムが食い込んで胃の部分が苦しくなる」という不満の声が数多く寄せられていることが判明した。その苦しさから着用をやめてしまったという意見もあり、この課題を解消することが、2019年に誕生した「シンクロブラトップ」開発の出発点となった。苦しく感じにくいブラトップを作ることを徹底的に追及した開発チームだったが、初期の段階で想定外のユーザーの声に直面する。しめつけを減らすために全体を緩く設計したところ、「ズレそうで不安」「フィットしていないと感じる」という不満が上がったのだ。サイズが大きいユーザーほど、その傾向は顕著だった。
「ラクなだけでよかったら、ただ肌着に丸パッドがついているようなものでもいいんです。しかし、バストトップを隠したいからそれを選んでいるわけではないというのが、やっぱり深いところのニーズとしてありました。苦しく感じにくいけれど、しっかりフィットするというところに、応える必要があると思いました」と松尾さんは振り返る。
苦しく感じにくいが安心感はあり、なおかつシルエットも美しい。この相反する要素をいかにして一つのプロダクトに落とし込むかが、その後の開発においてもっとも時間をかける課題となった。

汗をかく季節に向けた「吸汗速乾」の最適解
快適な着用感の探求は、季節や環境に応じた素材選びへとつながっていく。シンクロブラトップのラインアップのうち、「吸汗速乾タイプ」は綿混タイプに次ぐ第2弾として、夏場の汗をかくシーンを想定して設計された。社内で軽運動の試験をクリアし、ヨガやウォーキングなどにも推奨できる機能性を備えている。
裏打ちの生地には、改良前の吸汗速乾タイプで生じていた「汗をかいたときに張り付いてベタベタする」という不満に応えるため、通気性のあるメッシュ素材を採用した。単に通気性を高めるだけでなく、肌に張り付いた際にメッシュの凹凸が肌に引っかからないよう、バランスを考えて6〜8種類もの候補の中から生地を選定している。さらに、着替えの際に一番肌に触れる裏打ち部分に接触冷感機能を付与することで、夏の暑さによる不快感を和らげる工夫が施されている。

一方で、表面の生地は「天竺」と呼ばれる目の細かいフラットな組織を選定した。
「表側はきれいな面感で、肌着っぽくならない見た目に仕上げたいなと思い、目のきれいな天竺を使うことに決めました。生地が透けるのは恥ずかしいと感じるポイントになるので、透けにくいけれども薄いというところにはかなりこだわって開発をしています」

機能性を追求しつつも、シャツの胸元から見えたり、上にTシャツを羽織ったりした際の「服としての見栄え」を損なわない。女性の日常に寄り添い、衣服としての美しさを保つ視点が、素材選定の随所に反映されている。
ミリ単位の調整が生むシルエットとフィット感
素材のこだわりに加えて、ブラトップ特有の構造的な不満に応えるための緻密なパターン設計が行われた。市場にある多くの商品は、左右が分離したカップを採用しているため、胸周りの生地が伸びるとバストが脇方向に離れてしまうという欠点があった。そこでワコールは、左右一体型の成型カップを採用し、下側に厚みを持たせて自然な寄せ上げ感を生み出す構造を導き出した。さらに、着用時に上辺がパカパカと浮いてしまう問題に対しては、バストトップから上辺にかけての傾斜角度を徹底的に見直した。Sサイズから4Lサイズまでの展開において(※)、サイズごとに異なる胸の形に合わせるため、各サイズのフィッティングモニターに協力を仰ぎ、最適な寄せ感とフィット感を検証している。
「バストトップから上辺までの傾斜感というのは、開いてくるとパカパカしてしまいます。各サイズにとって一番いい角度というのを、パターンチームがミリ単位で何度も調整し、設計していきました」
※カラーによってサイズ展開が異なります。

約1年もの歳月をかけてミリ単位の修正を繰り返したカップ設計に加え、胃の圧迫を減らすための工夫も施されている。アンダーゴムのないフリーカッティング仕様で、アンダー部分を直線ではなく緩やかなカーブを描く形状に仕立てた。ブラジャーの構造を知り尽くしたメーカーならではの知見が、カップからアンダーまでの全体のシルエットを、美しく、そして快適に支えている。

こうした設計を実現しているのが、ワコール独自の厳しい品質基準だ。フリーカッティング仕様でありながら洗濯耐久性にもこだわり、素材やカップ構造を厳選。長年培ってきた技術者や素材メーカーとの信頼関係のもと、快適性と機能性の両面で高い品質を両立させている。
下着メーカーの本気が生み出す今後の展望
「ラクさ」と「美しさ」を融合させたシンクロブラトップシリーズは、2019年4月から2025年12月までの累計出荷枚数が200万枚を突破した。現在では綿混タイプや吸汗速乾タイプに加え、リブタイプ、スリムストラップタイプなど着用シーンに応じた多様なラインアップを展開し、2026年には年間110万枚の販売を目標に掲げている。
ブラトップでもサイズを選びやすいように、ブラジャーのサイズ表から選ぶ方法と、トップバスト周囲のサイズから選ぶ方法の双方を用意した。一人ひとりの体型に寄り添う、細やかな工夫が凝らされている。


「『下着メーカーが本気で作ったブラトップ』というキャッチコピーの通り、ワコールが作ったという点をお客様に一番支持いただいていると感じています。これからも、ブラジャーのメーカーとして誇れるバストシルエットやフィット感を届け、その名に恥じないような商品を開発し続けていきたいです」と松尾さんは意気込みを見せる。
長年女性のからだと向き合ってきた膨大なデータと技術力を、ブラトップという新たな領域へと拡張していく。同社は今後も、猛暑に対応する新たな通気性モデルの開発などを通じて、インナーウエア市場に新しい快適の基準を提示し続けていく。












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