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【日本未上陸】売るより共感でつながりたい──スペイン発のブランド「Zubi(ズビ)」と育む、自分だけのスタイル

2025.08.15
建築、旅、音楽、そして姉妹の対話——。スペイン・マドリードで生まれた「Zubi(ズビ)」は、“日常を豊かにする服”を軸に、静かで芯のある世界観を築いてきた。
大量消費でも、派手なトレンドでもない。手に取るたびに自分らしさを思い出させてくれるような、誠実なアイテムたち。その背景には、異なる領域でキャリアを積んだ姉妹の美意識と、感性を共有するコミュニティとの対話がある。
ただ売るのではない、共鳴から生まれるものづくりの哲学を、「Zubi」の共同設立者、姉エレナ・スビサレッタに話を聞いた。

PROFILE

エレナ・スビサレッタ(Elena Zubizarreta)

Zubi 共同設立者

姉妹の原点、小さなバッグから始まった物語

マドリードを拠点とする「Zubi」は、エレナと妹のメルセデス・スビサレッタ姉妹による共作から始まった。姉のエレナはビジネスを学び、外資系企業でマーケティングや営業職を経験。一方、妹のメルセデスは建築を専攻し、自身のインテリアスタジオを主宰していた時期もある。
「お互いまったく異なる領域で働いていましたが、どこかで『いつか一緒に何かを作ろう』というのは感じていたんです」とエレナは語る。
ブランド名の「Zubi」は、彼女たちの姓“Zubizarreta”に由来する。肩肘を張らず、けれど確かな美意識を感じさせるその名には、家族と自分たちのルーツを忘れないという静かな意志が込められている。
「最初に作ったのは、小さなクラッチバッグでした。まるで遊びの延長のようでしたね。もともとファッションが好きで、姉妹で古着のマーケットを開いたこともあります。当時はまだサステナブルという言葉が今ほど一般的ではありませんでしたが、自分たちなりの循環につながる方法を探していたのかもしれません」
そうして始まった「Zubi」は、少しずつ、しかし着実に世界を広げていった。
当初は旅先で撮った写真をプリントしたバッグを自宅のプライベートセールで販売していたが、やがてオンラインストアを開設。旅の思い出をバッグへ昇華させる独創的なアイディアと、誠実なものづくりに向き合う姿勢がブランドの深い魅力へとつながっていった。
「旅先には、豊かな歴史や異文化のミックス感など、探究してもし尽くせないような魅力を持った国に惹かれます。そういう場所に行くと、自然風景から都市景観まで、思わずシャッターを切ってしまうんです」と語るエレナは、日本に旅するのが夢だという。
「私の視点で捉えた日本の写真をプリントしたバッグが誕生する日も、そう遠くはないと思います」
バッグのタグには撮影場所の経緯が記載されている

日常に寄り添う、美意識と感性のかたち

「『Zubi』の美しさは“日常”に宿るものだと考えています。一日を通して自信を持って過ごしたいと願う女性たちの日常に寄り添う、シンプルで機能的ながらも、特別なひねりを加えたプロダクト。私たちは力強いシルエット、美しい素材、そしてスペイン製の高品質なクラフトマンシップにこだわっています」
その美意識の背景には、メルセデスの建築的な感性がある。キャンペーンビジュアルの舞台に選ばれるのは、ミッドセンチュリーの邸宅や、物語を感じさせる空間だ。フォルムや空気感に対する鋭い直感が、「Zubi」の世界観を豊かにしている。
「建築、音楽、食、旅……私たちが愛するものすべてが『Zubi』の中に溶け込んでいます。そして、それらをお客様と分かち合うことが、私たちのブランドの在り方なんです」
実際、彼女たちはスペインのファッションブランドとして、国内で初めてポッドキャストを始めた一組でもある。商品だけでなく、思想やインスピレーションの源までを届ける姿勢。それが、「Zubi」を“ただのファッションブランド”以上の存在にしているのだ。
設立から13年、その道のりは順風満帆ではなかった。パンデミックの影響、卸から直販へのビジネスモデル転換、新たなカテゴリーへの挑戦もあった。
「ここ数年でレディ・トゥ・ウエアのラインを立ち上げたことは、最大の学びの一つでした。今では売り上げの半分以上を占めるまでに成長しましたが、その開発とそれをどう伝えていくかは本当に大きな挑戦でした。
この経験から、努力、柔軟性、そしてレジリエンス(回復力)が成功の鍵だと学びました。常に進化し、本当に大切なことに立ち返るよう意識しています」

拡大より共鳴を。「Zubi」が見つめるこれから

マドリードの店舗は、彼女たちの拠点であり、インスピレーションの泉である。カプセルコレクションとして発表される服は、コンセプトに沿って静かに語りかけてくる。
「私たちは、すべてをやりたいわけではありません。意味のあることだけを丁寧に続けていきたい。日々を過ごすための服、感性と実用性をつなぐ服を、『Zubi』らしい視点で届けていく。それが、これからも変わらない私たちの展望です」
「ファッションとは“伝える”手段」と定義する2人は、ブランドを通して「対話の場」をつくることも目指している。モノとしての服にとどまらず、着る人の暮らしや思考、感情に寄り添いたいという思いは、商品ページに添えられる丁寧なテキストや、SNSで交わされる日々の会話にも表れている。
「『Zubi』は、ニッチなブランドでありたい。すべての人に受け入れられなくてもいい。ただ、私たちの世界観に共鳴してくださる女性たちと、深くつながっていたいんです」
そう話すエレナの表情に、迷いはなかった。
感覚に正直であること。世界との関係を見つめ直すこと。そして、自分自身を大切にすること。「Zubi」の作品は、そのすべてを軽やかに体現している。自分のスタイルを静かに育む日々にそっと寄り添ってくれる存在——それが「Zubi」なのである。その確かな美意識が、多くの女性たちの共感を呼んでいる。

Text by ELIE INOUE

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